ジンジン
水玉 「あいつおかしいぞ・・」 (魔女のこと・・)
僕 「知ってるよ」
水玉 「・・てか、今日のおまえ なんか態度デカくないか?」
僕 「そう?」
水玉 「なんか偉そうなんだよな・・ その態度」
僕 「とにかくさ、魔女ってば、今日だってそうじゃない、 朝仕事に行って来るから夕方までは戻らない、って言ってさ、それでも外に出たい猫は手を上げて! とか言うから、僕は手を上げた」(朝・・といっても、魔女の朝は普通の人の朝よりかなり遅い)
水玉 「知ってるよ・・」
僕 「問題はその後さ」
水玉 「何だよ、おまえが短い手を上げたつもりが、お化けみたいな感じの手つきになちゃったってことか?」
僕 「そうじゃないよ! それで僕は外に出た。 その後、魔女は部屋をしっかり点検してたでしょ」
水玉 「おお、雨が降りそうだからって天窓を閉めて、俺らの水を多めに用意し、意味のないような火の用心とかして、《凜》防止に蛇口を縛って、《バブー》が勝手テレビをつけないようにリャモコンを隠し、コンセントは全部抜いてったな」
ジョン ブリアン 「滅多にお外に出ないから、しっかりと完璧にしてたよ」
バブー 「うん、何回も点検してた」
僕 「そして魔女が2階のドアから出て車の音がした」
(この住宅地は雛壇になっているので2階かららも1階からも出られる・)
水玉 「したな・・」
僕 「ところが・・」
水玉 「どした?」
僕 「聞いて驚いてちょうだい! なんとっ、玄関がど~んと開け放しだったんだよお!」
水玉 「にゃあにぃ~!!」
僕 「僕、 うそ・・ って思ったもん」
ジョン ブリアン 「それは ひどい有様だね」
僕 「大変だったのは《パパ・ジョン ブリアン》さ! だって魔女は出て行くわ、玄関は開けっ放しだわ、そりゃもう焦ってちゃってさ」
水玉 「どうしてた!」
僕 「入り口に座って、郵便屋さんや回覧屋さんや、黒猫屋さんが来る度に 『入っちゃいけません! 入っちゃいけません!!』 ってオイオイ泣くんだ。 しかも郵便屋さんなんて、大切なお渡し物があったみたいで何度もピャンピョンしちゃって・・」
ジョン ブリアン 「チャンピョン鳴ってた! そりゃあ玄関が開いてんだもん、誰かいると思うよ」
僕 「そう、それでついに郵便屋さんは《パパ・ジョン ブリアン》に向かって聞いたんだ。 『玄関開け放して留守ってことないですよね、誰かいますよねぇ』 って、 だけど《パパ・ジョン》は泣き叫ぶばかりで・・ 結局郵便屋さんは何かの紙を箱に突っ込んで帰っちゃったけどね」
水玉 「それでおまえはずっとそれを観察してたのか」
僕 「僕だって気が気じゃなかったよ、だからずっと階段の途中にいたんだもん」
それから僕らは、僕らの知ってる限りの魔女の生態を言い合った
例えば・・
車のカギが冷蔵庫に入っていたとか
財布が靴箱に入っていたとか
昔今日ちゃんを魔女用アトリエに入れっ放しにして飢え死にさせかけたとか
顔を洗ってる最中に長い爪の指を鼻に突っ込んで大量の鼻血を出したとか
顔洗いで歯を磨いてカニになっちゃったお話とか
生徒の絵を乾かすつもりが燃やしちゃったとか、それから・・
アゾ 「あ、あの・・」
水玉 「なんだ、混ぜっ返すなよ」
アゾ 「《あ、あじょ》が 見たこと言いたい」
水玉 「幻覚じゃないんだろうな」
アゾ 「げっ、げんじつじゃ!!」
水玉 「言ってみろよ・・」
アゾ 「こっ、こっの前、まじょが お出かけした時、げんかんに・・」
僕 「また開けっ放しだったの?!」
アゾ 「ち、違う!!」
水玉 「なんだ」
アゾ 「かぎが さきっぱなしだった!」
水玉 「鍵は咲かねえよ!!」
僕 「それはまたひどい話だな・・」
ジョン ブリアン 「魔女、病院に行った方がいいんじゃない?」
水玉 「病院になんて行ったって、どうせ医者が唸って終わりだろうよ」
僕 「だけど、あのままじゃマズいよ・・」
アゾ 「う、生まれたときから そうなんじゃろ?」
水玉 「そうだろうな・・」
アゾ 「そでで ここまで 来たのなら 見守っとけばええんじゃろ?」
水玉 「俺に聞くな!」
ジョン ブリアン 「つまり・・」
アゾ 「つまり・・ あきらめが かんじんなんじゃ! あきらめるいがいに なんもできんもん」
僕 「確かに・・」
水玉 「《アゾ》、おまえが病院に行け」
アゾ 「な、なんで・・」
水玉 「気づかないのか! おまえ、まともなこと言ってるぞ、大丈夫か?!」
アゾ 「・・」
さっき魔女が帰って来て・・
「玄関を開けてくるね~」 とかアホなこと言って下に降りて行った
それからシンとした感じで部屋にまた入って来た
そして自分のしでかしたろくでもないことには一切触れず
鼻歌を歌いながらそれをごまかすようにパャソキョンを開いた
魔女のお友だちのデイブさんからお手紙(E-メール)が来ていて
僕たちはデイブさんにずいぶんと可愛がってもらったから
みんなでピャソキョンにそばに集まって聞いた
バブー 「魔女、なんて書いてあるの」
ユリぼうず 「僕のこと書いてある?」
魔女がデイブさんのお手紙を読んでくれた
僕たちは一生懸命にそれを聞いた
そしてお手紙の最後の方に・・
「あなたは脳みそが無くても特別な人です」
そして一番最後には・・
「ネパールから 壊れた脳みそのデイブより」
水玉 「ひどい手紙だな・・」
やってらんねんよ・・