魔女
この日は朝から良く晴れていた
私たちはパイシュヌパティ、通称バッファローロードにあるママの姉の家を訪ねる事になっていた
昼前にマチンドラで待ち合わせをし、ルナと彼女の友人のアンビカと共にそこに向かうことにした
ママは既に早朝からそこに出かけて魔女たちを迎える用意をするとのことだった
パシュヌパティに向かう前に《バブー》と遊びたくて
ギリンチェで朝食を取ってすぐ
時間より早めにマチンドラに向かった
日が昇り始めると、日差しは徐々に強くなる
《バブー》は、夜の間に冷えた体を、陽だまりの中で暖めていた
赤ん坊を背負ったカマラが境内の掃除にやって来た
赤ん坊は背中からおろされ、私の腕の中で機嫌よく笑った
カマラが境内の掃除を終えるまで、私がこの子のナニーだ
赤ん坊を膝に乗せ、私は《バブー》とこの界隈の人々と共にのんびりとした時間を過ごす
神を讃えるバジャンの音楽が私たちの間を縫うように流れる
カマラの掃除が終わり、彼女は私から赤ん坊を受け取り、そこらの椅子に座って我が子に乳をやる
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ダッドが《バブー》を押さえ、ルナと共にラトナ パークに向かう
アンビカとはそこで待ち合わせてバスに乗ることになっていた
ラトナ パーク ここは多くのバス発着所となっている
土埃の舞う町外れの通りでバスを降りる
道沿いには、今にも倒れそうな埃だらけの小さな雑貨店が一軒だけあって
痩せた老人が道端に座り込んでいる
それが見慣れた風景だ
そのすぐ脇には高くてがっしりした、この通りを見る限りまったく不釣合いな鉄の扉が現れる
そこには守衛がいて、その扉は彼によってゆっくりと開けられる
そこには別世界が広がっている
ここは 『Dreams Homes』
駐車スペースには日本車が並び
大型犬が番犬として飼われている
川沿いには延々とテント小屋が立ち並び
悪臭が立ち込める不衛生なゴミの山の中で暮らす人々がいる一方で
それとは正反対の世界がここにある
それらはこの国を象徴する光景だ
この不釣合いこそがネパールの現実だ
貧富の差は・・ 縮まらない