ネパール日記 ~ 帰国当日 Ⅰ~ | まじょねこ日記

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魔女


最後のネパール日記は 『帰国前日』 の様子だった

今回は《バブー》との涙の別れの翌日、帰国当日のお話


朝起きると、いつものようにゲストハウスのボーイが熱いお茶を運んでくれる


カトマンズ最後の朝、ベランダで外を眺めながらゆっくりとお茶を飲む

顔なじみのスズメたちが足元を歩き回り

友だちであるカラスのカクさんが手すりで首をかしげ、話しかける

みんな今日でお別れだよ

元気でね


荷造りを始める

ラクスマンに必要最低限のものだけを持って、残りは置いていくように言われていた


それなのでいただいた土産と身の回りの必要なものだけをスーツケースに詰めるが、土産だけでほぼ一杯になってしまった


服やサンダル、日用品等は二つに分けてママとラクスマンに預けた

荷造りをしながら、昨日泣きながら別れて来た《バブー》のことをずっと考えていた

今日もマチンドラのゲートの前で佇む《バブー》を思うとまた涙がこぼれてしまう


   まじょねこ日記-Babu


本日帰国ということで、午前中は殆ど電話の対応に追われた

みな、私が無事に日本に着くことを祈っている・・ そう言ってくれる


いつもの時間、コックがダルバートを運んできた

チキンのおかずのダルバートだった


食事を終え、家族への土産の指輪を取りに宝石屋に出かけた

アクアマリンと、とんでもなく変わった色のアメジストを使った指輪をオーダーしていたのだ

リングの部分は自分でデザインした

それでも日本で買うのと比べれば20分の1の値段だ


宝石屋はゲストハウスから徒歩で3分程

だが・・ 途中は知り合いばかりで

「マジョ ディディ!」 と呼び止められる

八百屋の奥さん、魚屋のお兄ちゃん、薬屋の女主人、楽器屋のおじいちゃん、雑貨屋の老夫婦・・ 

みんな良い人たちばかりだ


その先のティロチャンの店では店内に引きずり込まれた

そして、荷造りが終わったというのにまたたくさんの土産をもらった

けど、最も重宝したのが、足の傷を考慮して作ってくれた暖かいフェルト製特大のルームシューズだ

この冬、これは手放せないで愛用している


   まじょねこ日記-Tilochan
        下の棚のあるのがフェルトのルームシューズ


ティロチャンの店を出て、角を曲がると宝石屋は直ぐそこなのだが

それが遠い・・


角を曲がったところで友人の『ホーリーマン』が立っていた

ホーリーマンというのは魔女がつけたあだ名で

ホーリー祭の度に彼を頭とする『ホーリーメン』たちに私はこの辺りで追い掛け回され、色粉を顔につけられ、水を掛けられ

ついには魔女がキレて彼らを追い掛け回し、この通りが大騒ぎとなるのが恒例、という・・


※ ホーリー祭 ・ ヒンドゥ教の祭りで、春の訪れを喜び、豊作を祝い、ついでに悪魔祓いだったりもする

様々な色粉を顔や頭に擦り付け合い、水もぶっかけ合う、という壮絶で悲惨な祭り

この日は外国人は外出を控えるように、各大使館からお達しが出ちゃう

 
まじょねこ日記-holi-2 0849
   ホーリー祭の時の画像 ・ ママと魔女の壮絶な戦いの場面

           

その『ホーリーマン』と石段に座って話をした

いつも陽気なこの男は、魔女の足に目を落とし

「絶対すぐに治るから」

「僕が神様に毎日祈るから」

と、らしくない顔つきで一生懸命に私を励ました


ありがとう! また春に来るからホーリー祭で戦いましょう!


石段の向かい側、よく服を買う店だ

そこの主人が私たちの話が終わるのを、店の前に立って待っている


目的の宝石屋を隣に見ながら

服屋に招き入れられ、主人に勧められて椅子に座る


どんなに心配したか・・ ということを彼はやはりガラにも無く深刻な顔で言った

それから彼は店を出て行った

お茶を注文しに行くのだ

お茶ならここに来るまでにお散々飲んでるからいらない、と言おうと主人の後を追ったが

この時の魔女の足ではまったく追いつけず・・

結局、店主はお茶を注文し、ケーキを買って帰ってきた


店の奥で、彼は自分の靴を脱ぎ、靴下も脱いだ

左足の指が3本なかった


彼はその足を魔女に見せながら

事故で3本の指を落とし、その指を縫合したが結局上手く付かず

その後、24時間に渡る手術で結局指を切除したこと

その事でどんなに大変な思いをしたかということを私に話して聞かせた


だから魔女はこんなもので済んでラッキーなんだよ

直ぐに治る、 絶対治るから、神様がそう言ってる、と真剣な顔で励ましてくれた

私はケーキをほおばりながら彼の心遣いに感謝していた


まじょねこ日記

服屋の主人にお礼を言って外に出ると

そこには元締めが立っていた

元締めは言葉少なに私の足の具合を聞いた


「経過は順調だよ、今日、日本に帰るの」

そう答えると

元締めは魔女の手をしっかりと握り

何かを言おうとしたが言葉にならなかった

それでそのままの形で顔を横に向けた


それから元締めは自分のシャツをめくり

そこに残ったバカでかい傷痕を見せた


そして魔女の目をしっかりと見て

強く頷いて見せた


魔女は (なんか・・ 高倉 健みたいだな) と思いながら元締めの目を見返してしっかりと頷いた



やっと宝石屋のドアをくぐり、出来上がった指輪を受け取ってゲストハウスの戻ると、既に4時前になっていた


これからカクレル教授の最後の診察を受けるため、病院に赴く