ネパール日記  ~ さよなら、またね ~ | まじょねこ日記

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魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

魔女


夕べは寝る前に、買っておいた葡萄をひとりでたらふく食べ

数匹の蛾たちとルームシェアをして眠った


早めの朝、ホテルから友人の家に向かう

例のジョニー デップは相変わらず泥顔だった

彼と挨拶を交わして路地に入る


短い滞在だった

美しい自然と共に過ごした2日間だった


あぁ、またあの空気の汚いカトマンズに戻るのかぁ・・


友人の奥さんに、次に来る時、お土産は何がいい? と訊ねたら

ちょっと恥ずかしそうにしながら


「色が白くなるクリームが欲しい・・」 


魔女 「・・」


友人 「・・」


奥さん 「魔女のように白くなりたい」

(私はとりだてて色白ではありませんけど・・)


魔女 「えっと・・ あの・・ もしそれがなかったら、 日焼け止めクリームでもいい?」


奥さん 「・・」


友人 「それでいいでしょ!」


奥さん 「・・いいです」


可愛らしい奥さんだ・・


朝食をいただいた後

家の前で手を振る奥さんに見送られ、友人とバスターミナルに向かう


まじょねこ日記-Bus park

バスを待っている間、友人と話をしながらぼんやりと町並みを眺めていた

左手のビルの3階は銀行だ

オープン前のひとときを、銀行の職員がテラスでまったりお茶を飲んでいる

優雅だな・・


と思いつつ目を落とし、また友人と話し始めた

すると恰幅のよいひとりの男性がやって来て、握手を求めた

思わず握手をしたものの・・ 誰ですか?


聞けばそこの銀行の頭取(経営者)だということで


昔、カトマンズの大学に通っていた頃日本語を勉強したそうな

この町に日本人が来ていると知り


ややっ! あの人がそうなのか! そうだ、日本語を喋ろう!


本人的にはそんな展開だったようだが


果たして彼は日本語など殆ど忘れていて

まったく会話にならず

ちょっと元気のない後姿を見せながら手を振り・・

銀行業務に戻って行った


バスがやって来た

友人は車内まで魔女を送り、そこで帰って行った


発車まではまだ時間があり

私はぼんやりと車外を見ていた


その時

ひとりの少年が窓枠に手を掛けた

彼は息を切らしていた


ミラン・・


彼はウペンドラ、ディペンドラの同級生で、魔女のリクエストに応えて丘の上で歌を歌ってくれ、日本語会話ごっこでは盛り上げ役だった・・

どこで出発を知ったのか


ところが一昨日の元気でひょうきんな彼とは打って変わって

私が 


「ミラン、元気でね」

「歌を歌ってくれてありがとうね」

「あなたのおかげで本当に楽しい時間が持てたよ」


などと話しかけても、こちらを見上げる彼は眉間にしわを寄せ、ただ首を傾げる(頷く)だけで何もしゃべってくれない


何を話していいかわからなくなって

「ミラン、メールアドレス持ってる?」 と聞いた


彼は目の前の車体に目を落とし、首を振った


バスの運転手が乗り込んで来てエンジンをかけた

「じゃあ最後に写真を撮るね、笑って!」


そう言ってシャッターを押した・・


    まじょねこ日記-Milan
            笑顔で、って言ったでしょ・・


エンジンがかかったまま、まだバスは出発する様子はない


ミランが初めて口を開いた

「みんなを呼んで来る・・」


彼がみんなを呼ぶために急ぎ足で歩き出した所でバスが少し動いた

それでミランがその場に止まってしまった

ミランは、どうしよう・・どうしよう・・という顔をしてその場に佇んでいる


バスが動き出した

もうみんなを呼びに行く余裕はない

「ミラン、見送り、ありがとうね」

そう言ってバスの横に佇んでいた彼の手を握った


その時・・

ディペンドラの声が聞こえ、5人ほどの少年が走って来るのが後ろに見えた

魔女は窓から精一杯身を乗り出して

走りながら差し伸べる少年たちの手を握ろうとしたが

バスはスピードを増していた


手を振る少年たちの姿が土埃の向こうに霞んでいた

彼らの姿がどんどん小さくなっていく・・