ユリぼうずの憂鬱 | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

ジンジン


まじょねこ日記-Jinjin

魔女が帰って来て

みんなが喜んで魔女にしがみついた


《ユリぼうず》も早速魔女の膝に乗っかってほっぺを膨らませ、魔女の顔をざりざり舐めていた

そんな中、魔女が 「部屋が臭い」 と言い出した


僕らは黙っていたけど、魔女がテレビ台に振りまかれたおしっこを発見した

そしてその後、猫砂に掛けられたのも、洗面台の下のおしっこも発見してしまった


それらはみんな《ユリぼうず》の仕業だ

魔女がいない毎日にご機嫌を悪くしていた《ユリぼうず》が、ところ構わずおしっこを撒き散らしていて、留守番の家族たちは帰ってくるとそれを拭くのが日課のようになっていた


そしてその日も相変わらず引っ掛けていたわけで

それを魔女に発見されて・・


《ユリぼうず》はぶたれた


     まじょねこ日記-Yuribouzu

              「出る・・」


その後《ユリぼうず》は部屋を出て行った

それきりうんと遅い夜になっても帰って来なかった


世の中のみんなが眠っている時間になって・・ (深夜2時)

魔女は小さな電気を持って《ユリぼうず》を探しに出た

僕は魔女について行った


どんなに探しても《ユリぼうず》は見つからなかった

猫探し名猫の《ユリぼうず》が行方不明では、誰も猫を探せない


魔女は一旦家に戻り、《ジョン ブリアン》を連れ出した

それは《ジョン ブリアン》が猫探しが得意だと言う訳ではなく

《ユリぼうず》が苦手だ、という事に由来しており

《ユリぼうず》の存在に対して思わず唸る習性を利用しようと考えたもので・・


とにかく魔女と散歩が出来ると勘違いした上機嫌の《ジョン ブリアン》と僕と魔女とで、ひたすら夜道を歩き回った

そこへいきなりどこからともなく《アゾ》が参加して来て

僕らと一緒に歩き出し

「さ、さぶい夜は歩くとええ・・ そでが楽しいんだが どーでしょー?」

とか、聞いてきた


《ジョン ブリアン》と《アゾ》は、お互いに隠れたり見つけたりしながら楽しそうに走り回っている

魔女が何度も 「《ユリぼうず~》! 《ユリぼうず~》!」

と呼んでいるのさえも気付かないようだ


丘の上までやって来た

ここはさっきも僕と魔女とでやって来て、《ユリぼうず》を呼んでいたんだ


そこで《ジョン ブリアン》と《アゾ》はそこの草むらでかくれんぼをして遊び始めた


どちらかが草むらに隠れては

一方が 「見~つけた!!」 と飛び掛り

見つかった方は大袈裟に飛び上がって驚く、という単純な遊びを繰り返す


《ジョン ブリアン》が何回目かに 「《アゾ》、見~つけた!」

と言って、草むらに飛び掛ろうとして・・

いきなり

「ショワ~!!」 っと叫んだ


魔女が走った

《ジョン ブリアン》が飛び掛ろうとして跳ね退いたところには

《ユリぼうず》がうずくまっていた


夜露に濡れて・・ うずくまっていた

ただじっと、石のようにうずくまっていた


魔女が《ユリぼうず》を抱き上げた

《ユリぼうず》はうずくまったままの姿勢を崩さず抱かれた


《ユリぼうず》は魔女が話しかけてもうずくまった形のままで顔も動かさず、目も動かさない

魔女は、まるで形の決まったお人形を抱いているようだっ


魔女が《ユリぼうず》の顔を覗き込んで名前を呼んでも・・

《ユリぼうず》は目を開けているものの、固まった形のまま、魔女を見ようともしなかった


これにはさすがの《ジョン ブリアン》も心配そうに覗き込んだ

《アゾ》はその三角の目が益々尖って、困った顔つきがいっそうひどくなってしまった


この時魔女はとても似合わない猫柄のパジャマの上に

もうひとつボロい服を着ていた(毛糸のカーディガン! ボロだけど・・)


魔女はそのボロい上着で、うずくまったままの形の《ユリぼうず》を膝に乗せ、濡れた毛を拭いた

それから魔女は《ユリぼうず》を胸のところで抱いて体をボロい上着で包み

「寒かったでしょう・・」 といってその体をこすった


後ろ向きの魔女の肩から《ユリぼうず》の顔が見えてる

僕は心配しながらそんな《ユリぼうず》を見ていた


ぼんやりした《ユリぼうず》の目から・・

涙がこぼれだした


デンチューの途中につけられた灯りがそれをきらきらさせた

《ユリぼうず》は片方の手で片方の目を拭き

その手で魔女の肩にぎゅっと力を込め、そこに顔を隠した


《ユリぼうず》は魔女に抱かさって

僕らは歩いて

坂道を家に向かった


途中で《ユリぼうず》も僕らと一緒に歩き出した

僕らはみんなでかくれんぼをしながら、賑やかに坂道を走り出した