魔女
今日も軍団はご機嫌が非常に悪い
《ジンジン》は本当に家出してしまった
《水玉》は全く覇気がなく、丸くなって寝てばかり
《涼子》は物置で意味もない叫び声をあげ
《ユリぼうず》は腹が痛いと言ってうずくまったままだし
瘡蓋の取れた《ジョン ブリアン》なんて、目が合うとわざとらしくキッと顔を背ける
逆に《ボンネット》は魔女の顔を見詰め続け
《アゾ》はそれでなくとも三角っぽい目をちゃんと先の尖った三角にして歩き回り
《バブー》は蝙蝠のような声を出して鳴いている
そして《凛》は・・ やたら噛み付いてくる
それで今日も誰一匹として日記を言おうとしない
だからこうして・・
魔女が一人でちまちま日記を書いているわけで・・
今日の午前中は英会話の個人レッスンだった
習いに来ているのはよく海外旅行をなさる初老のご婦人で
いつも魔女にお土産と言って色々な物を持って来て下さる
それは旅行先で見繕ってくださったものや
家庭菜園で作った野菜など様々だ
それが今日は・・
「魔女さんのネパールのお友達にあげてください」
と、取り出されたのは様々なアクセサリーだった
受け取って良く見ると、無造作に入れられたビニールパックの中
ファッションリングやペンダント類に混じって明らかに金の指輪や本物の宝石がある
魔女 「ちょっと待ってください、本物が混ざっていますよ！」
ご婦人 「はい、中にはね」
魔女 「本物はお持ち帰りくださらないと」
ご婦人 「良いんです、指輪はもう小さくなってしまったから私にはつけられないんです」
魔女 「いや、しかしそういう訳には・・」
ご婦人 「魔女さん、お土産どうしよう・・って、困ってらしたじゃない。 ですからネパールのお友達に差し上げて」
魔女 「・・ ・・ ありがとうございます」
英会話の後も、忙しく時間が過ぎ、出先から戻るや否や、即刻子供たちのアトリエになった
アトリエの最中、子供たちにその話をしたら
みんながそれらのアクセサリーを見たい、ということで
魔女もまだちゃんと見ていなかったし、みんなの前で袋を開いて中身をずらりと取り出した
すると子供たちの目はギラギラになってしまい
お絵かきどころの騒ぎではなくなった
魔女がみんなの絵の点検をしている間
大騒ぎしている子供たちに魔女に言って、アクセサリーを仕分けてもらった
すると、金の指輪が３個に上質のアメジスト、大きなシリトントパーズ、いくつかの小さなダイヤをあしらったもの、いくつかのサファイアに小粒ダイヤ、これらはいずれも金台の指輪
その上プラチナ台にいくつかのダイヤ、小さめのルビーとダイヤ、挙句には大粒黒真珠の指輪まで現れた
他にもプラチナ、そして金とヒスイのペンダントヘッド、大きなシルバーの花柄ペンダントなどが・・
いいのか・・
子供たちには、ここだけの秘密にするから
それらを売って魔女んちの家計の足しにすることを進められたが
そうはいかないだろう・・
仕事を終えて
これは、ネパールのママに
これはルナに
これはアンビカで
これはサムジャナ
そんでもって・・ これは・・
友人たちへのプレゼントに
宝石持ってネパールに行くんだよ
こわいよぉ～