ネパール日記 ~ 塩が欲しくて・・ ~ | まじょねこ日記

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魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

魔女


何年も前のお話

明日は帰国という日に急に塩が欲しくなった

ネパールの岩塩だ


しかしもうお金は残っていなかった

財布には5ルピー(7円)しか入っていない

それでも、どうしても塩が欲しい


魔女は食物の市場であるアサンチョークに向かった

店先の麻袋から落っこちた岩塩のカケラでもいいから拾えないかな・・ と思った


       ・・・・・・・


あぁ・・ カケラも落ちてないや・・


アサンチョークからインドラチョーク方面に曲がったところの道筋に何軒かのナッツ屋さんが並んでいる

私は躊躇なくその中の一軒の店先に立った

そこには眼鏡をかけて難しそうな本を読んでいる30を少し過ぎたくらいの男性が店番をしていた


ナッツ屋さん 「・・何でしょうか」


魔女 「塩が欲しい・・」


ナッツ屋さん 「・・・」


魔女 「・・」


ナッツ屋さん 「塩ならそこの角の店に売ってますよ・・」


魔女 「塩が欲しい・・けど・・ お金がない・・」


ナッツ屋さん 「え・・」


魔女 「5ルピーしかない・・」


ナッツ屋さん 「僕にどうしろと・・」 


魔女 「塩が欲しい」


ナッツ屋さん 「・・どんな塩が欲しいの?」


魔女 「黒い塩・・」


ナッツ屋さんは店から出て、塩を売る店に向かった

そして黒い塩の2.3個を魔女に見せて


ナッツ屋さん 「このくらいでいい?」 


魔女 「もっと大きいのがいい・・」


それで、ナッツ屋さんは黒くて大きいのを2塊と、小さめのを3個、そしてピンクの塩も2個買ってくれた

良くは見ていなかったけど、100ルピー札を何枚か払っていたようだった


ナッツ屋さん 「はい、これ」


魔女 「どうもありがとうございます。 せめて5ルピー払います」


ナッツ屋さん 「・・いらないよ」


魔女 「・・今度来た時、お金返します」


ナッツ屋さん 「気にしなくていいですよ」


最初は驚いていたナッツ屋さんも、最後には笑って見送ってくれた


     まじょねこ日記-Nepali Solts

     《塩》  黒いのは硫黄の味 ピンクのは苦い



翌年、このナッツ屋さんを訪ねた

その人は相変わらず難しそうな本を読んでいた

そのまま時が止まっていたと錯覚するくらい、あの日と同じ店先だった


魔女はナッツ屋さんに声を掛けた

本から顔を上げたお兄さんは、驚いた顔を見せた


買って貰った塩のお礼を言い、気持ちばかりの土産を渡した

お兄さんは笑顔で恐縮した


魔女 「あの時の塩代を払います」


ナッツ屋さん 「とんでもない、いらないですよ!」


魔女 「そういう訳にはいきません」


ナッツ屋さん 「本当にいりませんから」


ナッツ屋さんはどうしてもお金を受け取ってくれなかった


この時同行したちよちゃんも一緒に、店先で暫く話をして過ごした


去りがけに、お兄さんは売り物のッビスタチオナッツの大きな袋を持たせてくれた

袋には450ルピーと書かれたの黄色いシールが貼ってある

「これ、買いますから (うっ・・ 高いけど・・) と言ったが

やはりお金を受け取ってはくれない


マチンドラナートのママのところに行く途中にあるこの店には、その後も通る都度に気持ちばかりの土産を持って寄った

その度に高価ななナッツをくれるから・・

申し訳なくて黙って通り過ぎようとしたこともあった


それでもこそこそした様子が返って怪しさを醸し出すのか・・

人ゴミに紛れていても呼び止められた


3年ほど前から

年配のおじさんがこの店の番をするようになった


難しい本を読んでいたお兄さんはもういない

結局ご恩返しもしないまま・・

今日に至っている