ネパール日記 ~ 旅人たち Ⅳ ~ | まじょねこ日記

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魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

魔女


トリヴァン空港(カトマンズ)からバンコクに到着すると

乗り合わせた旅人達はここからそれぞれの国や、次回訪問国へと散り散りになる


ある国連関係者のイギリス人とドイツ人、共に30代男性

この2人、ネパールで仕事をするうちに意気投合し

休日はいつも一緒に過ごし、自転車でチベット国境まで行く仲だ


そしてこの日、二人ともネパールでの任務を終え、ここからヨーロッパに向うのだが


飛行機を降りるや、イギリス人は喫煙ルームにまっしぐら

一方ドイツ人の方はタバコが大嫌い

禁断症状を顕にし、足早に急ぐイギリス人を前に見ながら呆れ顔で首を振る


やっと喫煙ルームを見つけたイギリス人

たかが3時間ちょっとのフライトだというのに・・

倒れ込むように喫煙室のドアを押した


押した・・ 押した・・ が、開かない


彼は焦った

ガラス張りの喫煙ルームの中の人々は一斉にこの異常に焦ったこのイギリス人に注目

イギリス人は押す・・ ガッタガタ!!と音を立ててドアを押す


誰か言ってやれよ・・


後からやって来たドイツ人は腹を抱えて大笑いするばかり・・


彼はなおもドアを開けようと躍起になった

終いにはドアに体当たりをカマし始めたものだから

喫煙ルーム全体がグラグラ揺れだした

中の人々は目を丸くしてこのイギリス人を凝視するばかりで・・


ほんとうに誰か言ってやれよ・・


魔女 「ねえ、このままじゃ あの部屋、もうすぐぶっ壊れるよ・・」


ドイツ人・クルツ 「ほっとけ、喫煙室なんて壊れちゃえばいいんだ」


魔女 「彼、必死だよ・・」


クルツ 「おんもしれぇ~!! 見てみなよ、あの格好!」


魔女 「・・」


イギリス人・ジェームズ 「開かない! 開かない! どうして開かないんだあ~!!」


魔女 「・・引くんだよ」


ジェームズ 「え・・」


魔女 「PULL って書いてあるでしょう・・」


ジェームズ 「うわっ! 引くのか!!」


魔女 「イギリス人のくせに英語も読めないのか」


ジェームズ 「焦ってたら字なんて読まないよ! ああ、やっとタバコが吸える!」


ジェームズは荷物と一緒に喫煙室に転がり込んだ

本当に形的に転がり込んだんだよ・・ 

荷物と人間がひと塊になってになだれ込んだカンジ

ついでに魔女も、彼と荷物と一緒になだれ込んでしまった


ドアの向こうでは、クルツが、自分の体をひどく大げさにそり返させたり、前かがみにしたりしながら、ジェームズに対して嫌がらせを始めた


クルツ 「ゴオ~ホ、ゴホゴホ!! ゴオ~ホ、ゴホゴホ!! ウェヘエ~~!!」


ジェームズ 「・・」


クルツ  おまえは早死にだ!


クルツは突き出した親指を下に向けて、声を出さずに口だけをパクパクさせてドア越しにそう言った


ジェームズ 「なんて憎たらしいやつなんだ・・」


魔女 「いいコンビだね」


ジェームズ 「まあね・・  うわあ!」


魔女 「どうしたのさ」


ジェームズ 「ライターがない! トリヴァン空港で取り上げられたんだった! 冗談じゃないよ、あいつらライター欲しさに厳しくしてんるだろ!」


魔女 「ですよねぇ~」


ジェームズ 「誰かライター! ライターを貸してくれ!」


誰か 「僕らもカトマンズからだからライター取り上げられちゃってないんだ、だからさっき出て行った人に借りたんだよ・・」


ジェームズ 「あせる


魔女 「しようがないなぁ・・ ほら」


ジェームズ 「・・あれ? 一緒にカトマンズから来たのに なんで持ってるの?」


魔女 「金儲けのため・・ 1回1ドルね」


ジェームズ 「・・」


私たちはそこで暫く、ネパールでの面白話に花を咲かせていた

ジェームズの話は主にクルツがどんなヤツなのか

そしてヤツはネパールでどんなアホなことをしたかということで・・

私たちはかなり盛り上がっていた


そんな私たちの目の前の窓の向こう、すりガラスの上を

逆Vサインの手が行ったり来たりしている


魔女 「ジェームズ、クルツが・・」


ジェームス 「あぁ・・ 行くよ・・」


私たちはお互いに 「良い旅を!」 と言い合って手を振り

それぞれの目的地に向って歩き出した