思い出の丘 | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

ジョン ブリアン


僕らの家族の猫たちの他に、お家のない動物さんたちでお部屋はいっぱいみたい・・

《インジゴ》は早速仔猫たちの世話をするんでしょう


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            《伐》(左)と《インジゴ》


このところ《凛》の目から目ヤニが出ていて

片一方の目なんてすごくまぶしそうに開けていた

魔女が、何度も目ヤニを拭き、いっしょけんめに目薬をしているのに一向に治らない


それが不思議なことに・・

今朝見たら殆ど目ヤニがなくなって、目がぱっちり開いてるんだ

僕らがみんなでそのことを魔女に言ったら

「《インジゴ》が舐めてくれたんだぁ~」 って


《インジゴ》は喧嘩が大嫌いな優しい猫だから

僕らは決めたんだ、

せめて《インジゴ》がお家に帰っている間は絶対に喧嘩なんてしない、って

だから、《ユリぼうず》もすごくおとなしいし

兄弟の癖に気の合わない《水玉》と《ジンジン》も、昨日からは和気藹々なんだよ


夕べ、僕は魔女に外に出たい、って言った


魔女 「こんな遅い時間に?!」


僕 「僕、《伐》と一緒にお散歩行くの」


魔女 「どこまで行く気なの・・」


僕 「いつも行く丘まで・・」


魔女 「夜は人間はいないけど、途中に知らない猫がいるかも知れないよ」


僕 「《伐》と一緒だから大丈夫だもん!」


魔女は暫く考えて・・ 「じゃあ行ってらっしゃい」 って言った


僕は外に飛び出した

僕と一緒に《水玉》と《ユリぼうず》も外に出た


お庭の階段から下の道に降りようとして何気に振り返ると

《ユリぼうず》がお庭の真ん中で跳ねているよ・・

僕は階段の途中に停まって《ユリぼうず》の様子を見てた


《ユリぼうず》は・・

「《もりやさ~ん》! 《もりやさ~ん》!!」

って言いながら

え~っと、どう言ったらいいのかな・・

草むらを急に短く走ったり、そうしたかと思うと、急に停まって草むらに顔を突っ込んだりしてふざけていた

あれはきっと・・ 《もりやさん》お鬼ごっこをしているんだ


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昨年5月にニャバーランドに旅立った《もりやさん》は《ユリぼうず》の大親友で、ほぼ毎日リビングルームに遊びに来ていた


僕は階段を降りて細い道に出た


お化け屋敷の方から賑やかな声が聞こえる

《涼子》と《アゾ》は誰と遊んでいるのかな


僕はお化け屋敷とは反対の道を歩いて

いつもみんなでお散歩に行く丘に向った

家から細い道を通って丘のてっぺんまで行き、帰りは大きな道を下ってぐる~っと一周するんだ


僕は《伐》と一緒だから嬉しくて、ずっとしゃべってた


ねえ《伐》、《伐》はさぁ、散歩の途中で寄り道しちゃって、魔女の姿が見えなくなると・・ いっつも、なっさけない声を出して鳴いてたよね


それからさぁ、やっぱり寄り道して、僕たちに遅れをとると、どたどたと足音を立ててすごい勢いで走って来たよね


見て!ここだよね! あそこの崖の途中で《伐》はいっつも昼寝をしていたんだ


「・・そう、それで散歩をしているお前たちと、ここから合流するんだよな」


僕 「うん、 そうだったね、僕たちがこの場所を通りかかると、《伐》は 『俺はここにいるぞお~』 って崖の途中から言うんだ」 


伐 「『みんなちょっと待てよ、俺も一緒に散歩するから』、ってな」


僕 「そうそう! そうやって家族全員が揃うんだ」


伐 「あの頃は俺ら、大行列で散歩してたな」


僕 「《伐》、もうすぐ丘のてっぺんだよ!」


伐 「てっぺんに着いたら一休みするべ」


僕 「うん!」


僕らは丘のてっぺんに着いた

てっぺんと言っても・・ 

前にはあった広場はもうとっくになくなって

僕らが毎日遊んだ広場(おんぼろのテニスコート)は、今ではたくさんの家に変わっている

だから僕と《伐》は、そこのはじっこの階段の上でお話をした


伐 「テニスコートも小さな森も・・ 何もかもなくなったな・・」


僕 「うん・・ 《伐》は僕らが広場で走り回って遊ぶ時、いつも高い所にある椅子に乗っていたよね」

(高い所の椅子とは、テニスの試合の時に審判が座る椅子)


伐 「おお、そこからみんなの遊ぶ様子を見るのが俺の趣味だったからな」


僕 「それで、『おい《ジンジン》、へたるな!』 とか 『《ジョン ブリアン》、そっちには犬のウンチがあるから気をつけろ!』 とか言うんだよね!」


伐 「楽しかったな・・」


僕 「楽しかったね・・」


伐 「梅林もなくなったしな・・」


僕 「 あそこもいっぱいのお家に変わっちゃったね・・」


伐 「俺、ちっちゃい頃、母ちゃんと兄弟全員で梅ノ木に登ったぞ」


僕 「すごいね!」


伐 「魔女と母ちゃんと、うんとちっちゃい俺ら仔猫5匹でさ、家からよっちよっち歩いて梅林まで行くんだ。 大きくなってからはじきに行けた梅林も、あの頃は相当遠かったぞ」


僕 「へえ! よちよち歩きで行ったの?!」


伐 「あれも魔女と《エダ母ちゃん》の教育の一環だったんだろうな、まるで梅ノ木に猫の実がなっているようだって、魔女が大笑いしてたな」


僕 「楽しそうだね!」


伐 「何もかもなくなったな・・」


僕 「あの時、梅林のカエルさんのおうちもメチャクチャに掘り返されたんだ」


伐 「まだ冬眠中の大きなカエルさんたちの中にはやっと道路まで逃げてのもいてさ・・ 背中に梅の花びらをいっぱいくっつけて、あちこちで動けなくなってたな・・」


僕 「それを魔女が抱えて、《伐》と一緒に丘の斜面まで行ってそおっと土に埋めたんだよね」


伐 「そうだったっけな・・」


僕 「もう・・ 僕たちの遊び場なんてなくなっちゃった」


伐 「俺らだけじゃなくてさ、たくさんの生きものが暮らす場所はどんどんなくなるんだ」


僕 「僕たちは生きているだけ幸せなんだね・・」


伐 「おまえ、病気はどうなんだ? もうすっかり大丈夫なんだよな」


僕 「うん、《伐》と《今日ちゃん》と《もりやさん》、それに優しい人たちがいっぱい応援してくれたから、僕、甦ったんだ!」


伐 「良かったな、いつまでも元気にしてろよ」


僕 「僕・・ 《伐》にもそうしてて欲しかったよ・・」


伐 「またそれか・・」


僕 「僕、ずっとみんなと一緒に暮らしていたかった・・」


伐 「運命だったんだって言ったろ・・ それにさ、俺のおかげでみんなが車に気をつけるようになったじゃないか」


僕 「・・ごめんね また言っちゃって」


伐 「そろそろ帰ろうか」


僕 「うん」


僕たちは立ち上がった

僕が立ち上がりながら登って来た階段を振り向くと

階段の下に《水玉》がいた・・


僕は《水玉》に、

(登っておいでよ、僕らと一緒に行こうよ!)

って声を掛けようとしたんたけど

どうしてだか、《水玉》は横を向いて知らん振りをした


僕と《伐》はだあれもいない道をお話しながら下った

途中で振り向くと・・


僕たちのずっと後ろを歩いて来る《水玉》の姿が、所々にある灯りに見え隠れしていた