ネパール日記                         ~ バクダプルのマイケル Ⅱ ~ | まじょねこ日記

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魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

魔女


クリシュナは9才か10才くらいで、顔はもろチベット系

髪型はチンギス・ハンの子供時代風

剃りあげた頭のてっぺんに近い後頭部に少しばかり長めの髪が糸で束ねられている

そしてヒンズー教の神クリシュナの名を持つ男の子だ


麻袋ソリ遊びが終わった後

クリシュナは悪童そのままの顔つきで私らの隣に座り込み

やたら悪戯を繰り返していたが


そのうち、兄貴のポケットから1本拝借して来たと言って

イキがってぷかぷかとタバコまで吸い出した

どーしようもない悪ガキだ・・


そんな現場をタバコをすられた年長の兄貴と父親に見つかり

クリシュナは私たちの目の前で彼らによってボカスカ殴られ

それで殴られた頭を抱え、真っ赤な顔でうつむき、一生懸命に泣くのを我慢していた


こちらとしても、この子を怒っていいのやら・・

はたまた慰めていいのやら・・


兄貴と父親が立ち去り

その剣幕に子供たちは波を打ったように静かになっていた


そんな気まずい場面を取り繕うように

ぺプシ コーラがダンスの話を持ち出したのだ


みんなの前で殴られてしまった事もあり・・

クリシュナはちょっと意固地になっていた


それで、そのダンスとやらを見たいと魔女が言った

この時は、今にも泣き出しそうなクリシュナの気を紛らわせようと、そう言った


魔女に強く言われて

うつむきながら前に進み出たクリシュナだったが・・


次の瞬間にはもう変身していた


クリシュナのパフォーマンスはスリラーのボイス パーカッションから始まった

彼の口からマイケル ジャクソンのスリラーがボイパでシュパッ、シュッパッと流れ出し・・


あの独特のダンスが始まった

手や足の動きといい、腰の動きといい・・

まさにマイケル ジャクソンそのままっだった


     まじょねこ日記-Krisna-1
        チベット系顔だちに、モンゴル風髪型

      ゴムぞうり履きのちびっこマイケル ジャクソン       


さっきまで泣き出しそうだったクリシュナが

目の前でマイケル ジャクソンになりきってスリラーを踊っている


あのマイケルが踊るスリラーを

そのまま子供時代のジンギス ハーンが踊っているような・・

摩訶不思議な面白さ

こりゃあ、たまらないぞ!


そのハンパないダンスの上手さと

ギャグのような見かけ上のギャップに

私たちはあんぐりと口を開けたまま

閉じるのをすっかり忘れてしまっていた


ターンも、ムーンウォークも素晴らしく、マイケルそのままだ

何が凄いって、サンダル履きで完璧なムーンウォークをやる

これはマイケル以上の技だと思われ・・


私たちは思わず立ち上がって歓声をあげていた

魔女もカズリさんも子供たちも、み~んな大喝采だ


一曲が終わると私たちはスタンディグ オーベーションでヤンヤ、ヤンヤと次をねだった

クリシュナは私たちの喜びように気を良くし、また踊り出した


この子は相当なエンターティナーだ


こりゃあ最高だ!

こんなパフォーマンスが見られるなんて

バクダプルに来た甲斐があったというものだ!


(祭りはどうした! ビスケート ジャトラはどうなったんだ!)


(それどころじゃないよ、この面白さはビスケート祭をはるかに超えるぞ!!)


そうやって乗りに乗って騒いでいた私たちだったが

気がつくと、いつの間にかまわりには、大勢の観客が・・


近所の人々、通りがかりの人々、外国人観光客たち・・

横を見ても、後ろを見ても人だかりの山だ

ざっと見ても二百人以上はいると思われる


私や子供たちがそれに気づくと同時くらいに

クリシュナも大勢の見物人に気づき・・

とたんに踊りをやめ、不機嫌な顔をして戻って来てしまった


まわりの人々が口々に歓声をあげる 


「もっとやってよ! 踊って!!」


しかしクリシュナは、なぜが頑なになってしまって・・

周囲の人々の期待が高まるほどに意固地になってゆき

魔女の隣に座り込んだまま眉を寄せてすっかり不機嫌になってしまった
 
     
まじょねこ日記-bhaktapur-2
             クリシュナを説得中

       この周囲は大変な人だかりになっている

     

魔女 「もう一度あそこに行って踊っておいでよ」


クリシュナ 「・・やだ」


魔女 「こんなに大勢の人たちが見たがっているんだよ」


クリシュナ 「やだ・・」


そんなに嫌ならいいや・・

魔女は見たんだし、すっかり楽しんだもんね


魔女 「わかったよクリシュナ、気が進まないなら無理に踊って見せなくてもいいよ」


クリシュナ 「うん」


それでも、その場から立ち去ろうとする観客は誰もおらず

人々はクリシュナに向って期待の視線を浴びせ続けていた


だがクリシュナは不機嫌な顔を見せるだけで

決して立ち上がろうとはしない


そこへ・・

クリシュナの兄貴がやって来た


そしてこの兄貴、とんでもない事を言い出す


つづく