ネパール日記                          ~ バクダプルのマイケル ~ | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

魔女


マイケル ジャクソンの訃報から思い出したお話


カトマンズから東に12km程の所に、バクダプルという古い町がある


それはたまたまビスケート ジャトラ、新年の4月で

ビスケート ジャトラ (ビグラム暦でネパールの新年を祝う大祭) 

町はネパールの正月を祝う人々で溢れ

とんでもなく高い柱の山車が引かれていた


      まじょねこ日記-Thimi
     ティミでのビスケート祭で、山車が練り歩く様子

      ティミはバクダプルの少し手前にある村


家々の前には水牛だの山羊だのの切り落さられた頭部が置かれており、そのせいで石畳は血だらけだった

その頃はまだ外国人観光客の姿も多く見られ

彼らはそこかしこに置かれ、血を流す動物の首に出くわす度にキャーキャーと悲鳴をあげていた


この旅行、魔女はネパールが正月だという事を忘れていた

カトマンズに着いて初めて正月だった事を思い出した


この時はカトマンズのセレブリティー・・ カズリさんと一緒で

(その言葉通り有名人なだけで、決して金持ちではない)

私たちはそんな町の様子を眺めながら石畳の路地をぶらぶらと歩いていた・・


正月なので父親から子ウサギを買ってもらった子供がいて

私たちに向って 「見て!見て!」 と騒いでいる

父親も出て来て 「食事をしていきなさいよ」

と声を掛けてくれる


      まじょねこ日記-Bhaktapur-1
        新年にウサギを飼って貰った子供たち


歩き疲れて、途中の橋の上で欄干にもたれてぼんやりしていると、12,3才位の身なりの良い少年がじっと見ている

手に枝つきのグリンピースの束を抱えて

立ち止まったまま、こちらをじぃ~っと見ている


      まじょねこ日記-Bhaktapur-3

ここは見料を戴かなくてはね


魔女は少年に向って言った

「そのグリンピースを一枝おくれ」


少年はちょっと驚いてから

はにかんだような笑顔でグリンピースの一束をよこした


この生のグリンピース・・ 正月には皆食べている

魔女はこの生のものなら食べられる

茹でたグリンピースは食べられない


グリンピースを食べながら再び町をうろつく

左手に石畳の広場が現れた


子供たちが集まっている

正月で学校は休み・・ 皆暇を持て余している


数人の子供たちの視線を感じた

まずいな・・

取り合えず目を合わせないようにしよう

 

だが・・

瞬く間に囲まれた

「遊ぼう」 と言われた


私たちはよく子供たちに 「遊ぼう」 と言われる

身なりが彼らと変わらないから近親間が沸くのか・・

どこに行っても遊ばされる

街中だろうが、山奥だろうが子供たちの遊び相手にされる



結局ここでもカズリさんが遊び始めてしまった

麻袋ソリをやった(雑穀が入っていた大きな麻袋に乗っかった子供たちを引っ張って走る遊び)

カズリさんが麻袋を引っ張り、乗っている子供たちは変則的に引っ張られる度に落っこちたり、麻袋に縋ったり・・

そりゃあ大変な騒ぎだ


ネパールの子供たちは遊びにかけては天才だ

そこらにあるものは何でも遊び道具に変えてしまう

それは私たちだって引けをとらない


庶民の子供の遊び道具なんて、ヨタったボールぐらいしか見たことがない

他はみんなそこらの物に工夫を施して遊び道具にする

それで今回は捨ててあった大きな麻袋が道具になった


子供たちは争うように麻袋ソリに乗りたがった


一体いつまで麻袋ソリに時間を費やしているんだ

カズリさんの顔や体には後悔の汗が滴っているぞ


魔女はそれじゃなくても暑いのに体を動かしたくないから

大きなお堂のような休息所で、女の子とたちと話していた

女の子は大人しくて良いわ


カズリさんがへとへとの汗まみれになってお堂にやって来た


「もっと遊んで! もっと遊ぼうよ~!!」


駄々をこねる何人もの男の子たちがカズリさんの腕や腰にぶら下がっている

もうヘロヘロカズリさんの代わりに子供たちに宣告する


魔女 「もう終わりだよ!」


子供たち 「ええ~! ヤダ!!」


魔女 「これだけ遊べばもう十分じゃないか」


子供たち 「じゃあ今度は僕らがカズリを乗せて引くよ!」


どこまでも遊ぶ気だ

子供たちは麻袋にカズリさんを乗せて引いていたが、それはなかなか上手くはいかなかった


「はいはい、カズリと遊ぶのはお終い!」


こちらが本気でお終いだ!と言っていると感じ取ると

なぜか急に聞き分けが良くなるこの国の子供たち

みんな一斉に諦める


お堂休息所の中は子供たちで溢れていた


魔女 「みんな広場で遊んでおいでよ・・」


子供たち 「やだ!」


魔女 「くっ付くな!」


子供たち 「やだ!」


魔女 「暑いっ!」


子供たち  べたべたべた・・


魔女 「しつこい!」


子供たち キャーキャー ワーワー


魔女 「うるさいっ!」


そうこうする中
ぺプシ コーラというあだ名の男の子が魔女を突っつき・・


ぺプシ コーラ 「まじょ、この子ダンスが上手いんだよ」


魔女 「へえ、 クリシュナ、ダンスが上手いの?!」


クリシュナ 「・・まあね」


ぺプシ コーラ 「ほら、踊って見せなよ」


クリシュナ 「・・」


魔女 「踊って見せてよ」


クリシュナ 「・・」


魔女 「君の踊りが見たいんだけどな・・」


クリシュナ 「・・」


魔女 「いいから、さっさと踊りなさいっ!」


クリシュナは恥ずかしそうに立ち上がった


私たちを正面に据えて

突然クリシュナの様子が変わった

それまでのクリシュナではなくなった


そして私たちは・・

驚きのあまり、開いた口が塞がらなかった


つづく