ジョン ブリアン
今日、魔女が珍しく早起きをした
僕たちに朝食をくれて、トイレの掃除をするとすぐに何かの用意を始めた
小さいバスケットが出された
僕じゃない・・
僕 「《薀蓄斎子》、病院なの?」
ユリぼうず 「仕方ないな・・ 行って差し上げる」
魔女 「今日はいいよ・・」
ユリぼうず 「保護者として、是非行かねばならないのよね」
魔女 「今日は誰でもないの」
僕 「じゃあどうして小さなバスケットを用意してるの?」
魔女 「ノラの仔猫に新しい家族が出来るんだ」
僕 「今度はどんな子!」
ユリぼうず 「また僕がお母ちゃんかぁ~」
ボンネット 「僕またお兄ちゃんになるんだね」
バブー 「《ばぶ》 また おもちゃに なる?」
魔女 「ここに連れてくるんじゃないのよ」
ユリぼうず 「ええ~!」
魔女 「茶子ママんちで家族になるんだ」
僕 「ここじゃないのお~」
魔女 「うちじゃあもう無理だから・・」
ジンジン 「僕たち、みんなで面倒見るよ」
ユリぼうず 「そうだ! そうだ!! 連れて来いやあ~」
魔女 「《ユリぼうず》が団長になって猫のサーカス団でも作ってくれるのか?」
ユリぼうず 「なんで?」
魔女 「食ブチ稼ぎだよっ!」
ユリぼうず 「・・」
魔女 「もうこれ以上無理なんだよ、食べ物や病院代でお金が底を尽きた・・」
僕 「ぶうこさんに貰ったお金のたくさん当たる券は?」
魔女 「・・」
水玉 「ダメだったんだ・・」
僕 「その子猫、一回見せて」
魔女 「あなたたちに見せたらお終い・・」
僕 「どうして?」
魔女 「一気に世話を焼くからね」
水玉 「どこでだっていいじゃないか、幸せになれるんなら」
僕 「そうだね、茶子ママんちだったら幸せになるね」
ジンジン 「そうだよね」
ユリぼうず 「よしっ! サーカス団を作ろう! で、先ず何をすればいい?」
魔女 「話を聞いてなさいよ!」
それで魔女はバスケットを抱えて出かけた
魔女
動物病院の先生のところでは、6匹の兄弟のノラの仔猫たちが保護されていた
親もろくに面倒を見なかった可哀想な仔猫たちらしい
それでも4匹が貰われて行って、2匹残っていた
そのうちの女の子を茶子ママさんが貰ってくれるというので引き取りに行った
茶子ママさんちは、その前に臍の緒がついたまま捨てられていた赤ちゃん猫を引き取って育てている
病院では、残ったもう1匹の茶トラの雄の兄弟が看護士さんに抱かれて見送ってくれた
いつも一緒に檻の中で遊んでいた兄弟だ
もう会えなくなる兄弟を、最後に残ったその子はじっと見詰めていた
車の中でも見送る兄弟の顔が何度も瞼を過ぎり、キリキリと胸が痛くなる
今でもそうだ・・ あの目を思い出す
きっと近いうちにこの子にも暖かい手が届きますように・・
茶子ママさんは楽しみに待っていてくれた
その子の顔も知らないで待っていてくれた
部屋に入れると連れて来た子猫は、狭い隙間に隠れた
ところが、臍の緒つきで捨てられ、人間に育てられた《ももちゃん》は、恐い者を知らないから・・
大いに喜んだ!
それまで格闘していた小さめのぬいぐるみとは違って
格段に楽しい生きた仲間が来たのだからそりゃあたまらない
隙間に入った子猫のところに行って、くっ付く、くっ付く・・
終いにはそこで一緒に眠ってしまった
そこにいたおよそ5時間の間に、連れて来た子猫は《ももちゃん》のおかげですっかり慣れた
《ももちゃん》を追い掛けたり、追いかけられたり、ひとりで部屋を走り回ったり、おもちゃで遊んでもらったり、椅子に飛び乗ったりするようにもなった
まだ名前がないからここでも今のところ呼び名は《ニャンニャン》だ
これで安心して帰れる
家に帰って軍団にその様子を話した
みんなは魔女の手についた《ニャンニャン》の臭いを交代で嗅ぎながら話を聞いていた
《ニャンニャン》どうか、うんと幸せになってください
ここは《ニャンニャン》の幸せを保証してくれる家なんです