魔女が帰って来た日のこと | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

ジョン ブリアン


魔女がいない間、家族①は一生懸命に僕らと遊んでくれた

家族②は毎日ぐったりしていた


何回か寝た前

家族①が 「もうすぐ魔女が帰って来るよ」 と言った

僕が 「もうすぐ、っていつ?」 って聞いたら 

「もうすぐだよ」 とまた言った

僕はもうすぐは一回寝たらなのかな・・

と思って期待した

でも一回寝た後も魔女は帰って来なかった

それで僕の心は少し怒っていた


2回寝た前

魔女は嵐のように、ジタバタと帰って来た


その時《ジンジン》と《涼子》以外の僕らはお部屋にいて

《ユリぼうず》はテリャスでぼんやり空を見ていた


突然ドアが開いて

くっさい生きものが荷物と一緒に部屋に入って来た時

僕らは一瞬動きを止め

その後一斉にベランダに向って走り出した

この部屋から逃げ出す道はテリャスしかなかったから


だけど

テリャスに逃げる唯一開かれた隙間の狭い窓を押し合いながらなだれ込む僕らを突き飛ばし、ひとり逆走する《ユリぼうず》がいた・・

「《ユリぼうず》! どこに行くの、逃げるんだよ!!」

僕がそう声をかけても、《ユリぼうず》は、必死顔で部屋に飛び込んで行った


それからその怪しいものに向ってまっしぐらに走って行き

それはまるで犬のように走って行き

ぐわっしっと・・ ほんとうに、ぐわっしっと・・

くっさい生きものに抱きついたんだ


《水玉》は大きな目をしてテリャスをオロオロし

《バブー》と《ボンネット》はテリャスに立てかけてあるビャビェキュー用の板の裏に隠れ

《アゾ》は手摺の端っこで震えている

僕はガラスの向こうから、そっとお部屋をのぞいた


《ユリぼうず》がくっさい生きものの胸に張り付いて、くっさい(しつこいよ・・)生きものの顔を見詰め、幸せそうにしている・・


ちゃんと見ると・・ 

あ・・ あれは魔女?!


今度はリャビングのドアを廊下の方からガリガリと引っかるく音が聞こえて来た

魔女が立ち上がって、胸に《ユリぼうず》をぶら下げたままドアを開けると、《ジンジン》が飛び込んで来た

《ジンジン》はそのまま大声で鳴きながら魔女の足にすがりついた


僕はすごく・・

何だかすごくイヤな気持ちになっていた

僕は・・ 魔女が帰って来たというのに逃げちゃった・・


魔女が座ると、《ジンジン》が立ち上がって魔女の肩に両手を置いた

《ユリぼうず》が魔女の顔をなめている

《水玉》は急いでテリャスからお部屋に戻り、魔女に寄りかかった


僕は・・ 僕は

魔女が帰って来たら

一番最初に魔女のところに走って行って

僕がお薬をちゃんと飲んだ事や

約束を守ってお薬を隠したりしなかった事

なるべくお外に行かないようにした事

毎日《バブー》に言葉を教えたこと

それから、それから・・

いろんな事をいっぱい言おうと思っていたんだ


やっと魔女が帰って来たのに、どうしてだかこんなに悲しい気持ちになちゃった僕は

お部屋に入らず、ずっとテリャスにいた

寒かったけど、ずっとテリャスにいた


魔女が僕の名前を呼んだ

だけどどうしてか、僕は聞こえないふりをした


《アゾ》も、《ボンネット》も・・

お部屋に入ってしまった

《バブー》だけがまだ板の裏にいる


魔女がテリャスにやって来た

僕は魔女と入れ替わるようにお部屋に飛び込んだ

魔女は《バブー》を抱いてお部屋に戻って来た


そして魔女が僕に話しかけようとした時

僕は急いでコタツの中に潜っちゃったんだ・・


コタツの中からだって、みんなが魔女のまわりにいるのがわかる

僕は、コタツの中でうずくまって、ひとりでシンとした


しばらくすると、魔女はくっさいまま仕事に行ってしまった


それでも僕はずっとコタツの中にいた

僕はそこで、どうしてだか泣いちゃった


魔女のいなくなったら、《バブー》と《ボンネット》がコタツに入って来た

僕は2人に背中を向けて顔を隠し、寝たふりをしながらまだ泣いてた


遅い夜に魔女が帰って来た

それから台所でなにかをしているみたいだった


僕はそっとコタツから出て、台所をのぞいた

突然魔女が振り返って、僕は思わず壁の影に顔を隠した


それから少しして、僕はもう一度台所をのぞいた

魔女が・・ 今度は僕の方を見ないまま

「《ジョン ブリアン》、タッチごっこしようか!」 と言った

僕はまた壁の影に隠れて黙ったままでいた


すると突然魔女が 

「タア~ッチ!!」 と言って僕に向って走って来た

僕は思わず 「キャ~!」 と言って猫ハウスのてっぺんによじ登った


それから僕と魔女は部屋中を走り回ってタッチごっこを繰り返した

他のみんなも仲間に加わって、「キャ~キャ~」 言いながら僕の後に続いた


僕は魔女に追いかけられながら

みんなも楽しそうに走り回るのを見ながら

いつものお部屋に戻った事を

ここがいつものお部屋に戻ったんだって事をすごく感じて

心が飛び出しそうになっていた


まじょねこ日記-jyonbri-4 07419