《涼子》探しの日々 | まじょねこ日記

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魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

水玉


《ジンジン》は一日に何回も食事を要求し

その度に食べる量は徐々に増してゆき

今朝にはもう一猫前分近くを食べるようになっていた


それは実に喜ぶべき事なのだが

今の状況では手放し、というわけにいない・・


僕らは何日も《涼子》を探し続けている (今日で9日目)


          《 MISSING CAT 》

   
      まじょねこ日記-ryouko07711


《涼子》は用心深いから車の走る通りには絶対に出ないし、人間にも懐かない

だとしたら、いったいどこに行ってしまったんだろう・・

せっかく俺が一緒に朝ご飯を食べたり

寝てやったりしてたっていうのにさぁ

 

そもそも家に入らないのがいけないんだろ

前に魔女が、無理矢理部屋に入れた事があった

その時は、それは大変な騒ぎになって

《涼子》はパニックを起こして気が狂ったように闇雲に部屋中を走り回った

それを見た猫たちは恐怖の余り部屋の隅で固まってしまい

終いに《涼子》は台所の棚の裏の、猫の体一匹分くらいの隙間に挟まって出て来なくなった

それで一晩中恐ろしい鳴き声を発し

俺らはげっそりとした朝を迎えなければならなかった


《涼子》にとって家の中はそれほどストレスなんだ

このままだとお腹(胃)に穴が開いちゃうよ・・

やはり自分から家に入る気にならなければダメだ、と魔女は言って

翌日には外生活に戻した


とにかく・・

他に心当たりがないから、魔女と俺らは主にお化け屋敷を探すんだけど


そのお化け屋敷のアパートの

《涼子》が住んでいる・・ 

傍目には無人だと思われている部屋に向って

ガラスの割れたトイレの窓から、毎日大声で《涼子》の名を呼ぶ魔女の姿が・・

近所ではたぶん 『ますます怪しい人』 になっていると思われ


その上、お化け屋敷の庭をうろついたり

蜘蛛の巣だらけになってぶっ倒れている物置の下を覗き込んだり

そこにある一番大きな木に登ってあちこちにを眺め回したり


また、以前に近所の家の物置に閉じ込められた猫の声を聞きつけて救出した経験から

近隣の家々の物置に向って《涼子》の名を呼んでいる姿は

傍から見ると・・完全に頭のおかしい女にしか見えないわけで

それは、呼んでいるのが《タマ》とか《ミケ》とかいった猫らしい名前でなく

《涼子》という人間的な名前のせいでもあり・・


そんな魔女は

心配の余り、悪い妄想を重ねる日々を過ごすうち・・

これ以上物事を悪く考えると心が自滅する、と感づいたのか

さすがにここまで来るとは自衛本能が働き始めたようで・・


それは俺らが痛い思いをしたり、失敗したりした時に

その事を忘れてしまうか、またはなかった事にしようとして

必要もないのに体を舐めてみたり、首を掻いてみたりするような行為の人間バージョンだと思われ・・


昨日あたりから

きっと《涼子》は綺麗な服を着て、高級缶詰を食べているんだと言い出した


魔女はその根拠を、無理矢理トミニャガさんちに結びつけ

《涼子》は、次々と仔猫がやってくるこの家に嫌気を差し

しかもアパートにいても夜はひどく冷え込んでたまらず

《べス》のところに行って、そんな愚痴を・・ あーだこーだと並べ立てているうち

それならここで暮らしたらいいじゃない、って話になり

《べス》がトミニャガさんに偉そうな態度で頼み込んで

ついに《涼子》はトミニャガ家の子になった


という筋書きで・・


《涼子》は女の子らしい服を着せられ

異常に暖房の効いた部屋で

ノラ上がりだものだから、暑くて暑くて仕様がないものの

高級缶詰をふんだんに食べられるという食い意地が優先し

取り敢えず暑さに慣れるまでの我慢だ

そうやって居ついているらしい


ジョン ブリアン 「魔女、トミニャガさんちに行ってみようよ」


魔女 「バカ言ってるんじゃないわよ!」


妄想と現実の狭間で、魔女の心が揺れてる