ユリぼうず
僕 「魔女、僕、熱が出ちゃったみたい・・ 体が暑い・・」
魔女 「いったい何時間コタツに潜り込んでいたのよっ!」
魔女の熱が下がった、って
それは、僕が胸にしがみついていたおかげだ
(違わい!)
だけど、耳の怪我はだいぶ良くなっているっていうのに
《ジンジン》の様子が大変におかしい
ご飯を食べないし、ダルそうに寝てばかりいるし
その上、昨日も今日も吐いた
熱は何とか下がったものの
昨日魔女は一日中仕事だったので
今朝になって、《ジンジン》を病院に連れて行った
当然僕もお供したのね
僕は完全に膀胱炎を克服したから堂々と病院に行ける
魔女が恐れているのは《今日ちゃん》や《インジゴ》と同じ病気(腎不全)だ
元気も食欲も失くし、たまに吐いたりしながら
ただじっとうずくまって過ごす姿が頭から離れないんだ
そんな辛そうな姿を見ている間は、誰もが幸せじゃなかった
治らない病気にかかってニャバーランドに行く日を待つだけなんて、誰だって耐えられない・・
もうイヤなんだ、あんな悲しいことは・・
《ジンジン》をバスケットに入れるのは一筋縄ではいかなかった
だって《ジンジン》はその昔、オカマになる手術をした時以来バスケットにも入っていないし、車に乗って病院に行った事などないんだ
だから車の中では鳴きっ放しだった
大きな不安声を張り上げて・・
僕が 『賢い診察の受け方』 を教えてあげようとしているのに
まったく聞かずにただ鳴くばかりで・・
魔女は空に向って祈るようにしながら
相変わらず猛スピードで車を走らせた
ちゃんと前を見て運転して欲しかった
病院に到着して、すぐに呼ばれた
第一診察室だ (病院にはやたら詳しいよね・・)
僕はドアの外で、中の様子を伺っていた
魔女や、先生の声、それに若いお姉さんの声がところどころに聞こえてくる
魔女が《ジンジン》の様子を説明している・・
先生 「体重・・」
ジンジン 「うぉぉぉぉぉぉ~ん・・」
先生 「こら、じっとして!」
ジンジン 「うぉぉぉぉぉぉぉぉ~~ん!」
先生 「まだ何もしないからじっとして・・」
ジンジン 「うぉぉぉぉ~~ん! 魔女ぉぉぉぉ~!!」
魔女 「静かにしろって言ってるだろうがあ~!!」
ジンジン 「・・」
先生 「8.5キロ・・ 次・・ 耳・・」
魔女 「先生、こっち側の耳・・」
先生 「こっちだってちょっと怪我して・・」
魔女 「でもひどいのは右の方・・ 勝手に薬草塗った・・」
先生 「それは効いたね、ずいぶん良くなってる」
魔女 「じゃあ、元気がないのは・・」
先生 「・・けちえき検査をしてみようか」
魔女 「あぁ・・ ・・」
先生
ジンジン 「ぐわぉ~~~~ん!!」
先生 「押さえて!」
魔女 「上半身OKです!」
看護士さん 「私は、下半身を・・」
先生 「・・ どうしてだ ・・血が採れない・・ダメだ」
魔女 「・・」
先生 「うん、もう一回・・・ 反対の足・・」
ジンジン 「ひゃお~~~~ん!!」
先生 「なぜだ・・ これ以上入って来ない・・」
ジンジン 「ぎゃん!ぎゃお~~~!!」
看護士さん 「蹴られましたっ!」
先生 「手を離さないでっ!」
看護士さん 「・・離しちゃった すみません・・」
先生 「・・1回目にサイケツしたのと合わせて何とか検査してみましょう・・か」
看護士さん 「臭い・・」
先生 「うんち・・」
魔女 「・・ごめんなさい」
ジンジン 「ひゃお~~ん・・」
僕 (大変な事になってるな・・)
先生 「あとは ☆×▲++
=
だからね」
看護士さん 「はい・・」
ジンジン 「びゃあああ~~!!」
それから暫く経っても魔女は出てこなくて
診察室からは怯えたような《ジンジン》の泣き声がひっきりなしに聞こえるだけだった
僕はドアの外から独特の声を出して魔女を呼んでみた
魔女がドアを開けて言った
「けちえき検査の結果を聞くからもう少し待ってて」
隣の診察室に、おじいさんとおばあさんに抱えられて2匹の猫が入っていった
おばあさん 「この仔猫、正月に拾ったんですよ、小さな体で震えてましたよ、正月早々猫を捨てるなんて人間のやる事じゃないわ!」
憤慨している
当たり前だ
どうやら捨てられた仔猫はひどい風邪をひいて、鼻から水がジャージャー出てるらしい
目からもダラダラと水が出ているようだ
大変な事態になっている
大丈夫かな・・ 心配だな・・
先生 「それで食欲は・・」
おばあさん 「うちが破産するほど食べてます!」
なんだよ・・ 大丈夫なんじゃないか
診察室から出て来たおばあさんは
僕の顔に、悲惨顔の仔猫を近づけて
「どう? この子可愛いでしょう」
と自慢して帰って行った
僕は《涼子》がやって来た日の事を思い出していた
それから2週間後の《涼子》
魔女と《ジンジン》はまだ出て来ない・・
魔女が疲れちゃったみたいだから
この後はつづきにします