ネパール日記 ~ 新たな夢に向って ~ | まじょねこ日記

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魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

魔女


子供は、スリッパを大切に使った

歩きやすい道では、それを脱いで懐に仕舞って物を運んだ


それでも山道を履き続けたスリッパは

見る見るうちにぼろぼろになってしまう


母は薄くなった底につぎをあてたり

破れてしまった指の先を布で覆ったりしてくれた


それで多少は長持ちしたが

しかしスリッパは、踵の部分から次第になくなってゆき

終いにはつぎもあてられないくらいになって分解してしまった


6~7才の頃からは小学校に通う傍ら

登校前の数時間を家畜の世話に費やし

下校後は相変わらず草を刈り、方々で薪も集め運ぶ日々だ


年に1度、ダサイン祭の時に新しい衣服を買ってもらう

それ以外は兄たちのお下がりだ


仕事をこなしているうちに、衣服のあちこちが破けてくる

ほつれてしまう事もあれば、木の枝に引っ掛けて破れてしまう時も、擦り切れてしまう時もある


母が、取っておいた古いシャツの使える部分の生地を切って

破けた部分につぎをあてる


暫くすると、彼のシャツやパンツは様々な色で埋まったパッチワークのようになるのだった


17才になった時

母親が突然家畜を売った


そのまとまったお金を彼に握らせ、こう言った


「このお金で勉強をしなさい・・」 


公立の学校では十分な教育はなされない

教員のほとんどは怠慢で、子供たちは十分な知識を得られないのだ


彼は、母の作ってくれたお金を握り締め

ツギハギのバッグに、大きな希望と新しい夢を詰め込んでカトマンズに向う


カトマンズでは伯父の家に身を寄せ

そこから働きながら大学に通うことになる


しかし、学費、教材、参考書などの費用は思いの外で

母から貰ったお金もじきに尽きてしまう


伯父も出来る限りの援助をしてくれたが

それにも限界があった


お母さん、どうしよう・・ 学校に支払うお金がない 

僕はもう学校には通えない・・


彼がそう伝えると、 母は決まってこう言った


明日にはお金ができるから

明日にはお金を都合するから

だから学校に通っていなさい

決して辞めてはならない


相談する度に、母は同じ言葉だけを繰り返した


学費を滞納し続け

大学からも督促を受け

彼は、もうこれ以上は無理だというところまで追い詰められていた



つづく



《ジョン ブリアン》のこと


今日は一日中仕事で、《ジョン ブリアン》の面会には行けなかった

たった今、主治医から手術を終えたとの電話を貰った

やっと手術室が空いたらしい


経過は今の所良い、との事

肺の中身を病理検査にまわし、原因の特定にあたる


早く家に連れて帰ってあげたいが・・

《ジョン ブリアン》、もう少し我慢してね


明日は面会に行きます

その時は・・ どうか、暴れないで下さい