ネパール日記 ~ 幼い日の夢 ~ | まじょねこ日記

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魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

魔女


友人の子供時代のお話


彼はカトマンズからは遠い、遠い・・

ランタンのある村で生まれた


幼い頃から家の手伝いをして親を助けた

それは取りだてることでもなく

この国の大方の家庭では当然の事だ


幼い頃の彼の役目は

川に行って水を運ぶ日課の他に

家畜のための草を刈り、それを家に運んだり

時には塩や、何かに使う石なども運ぶ事だった


草や塩などを運ぶ時は

長い布の帯を籠につけ、その布を額にあてて背負う


彼は一日中、何かしらんを背負って山に道を行き来する生活を送っていた


「うん・・ うん・・  うん・・ うん・・」


重たい籠を背負って山道を歩く様子を

彼は、ただこんな風に表現した


重い荷物を背負った子供は

裸足の足の一歩一歩を踏み出す度に

「うん・・ うん・・」 とくぐもった声を出した


裸足の足には何かの棘が刺さったり・・

重い荷に小石がくい込んだり・・

それがとても辛かった


スリッパがほしい・・ (彼は履物をスリッパと表現した)

小さな子供は、毎日そればかりを考えて山道を行き来した


いつしか・・

彼にはスリッパを履く事が唯一の夢になっていた

僅か5ルピー(8円)のスリッパがこの子の夢の全てだった


5才になったある日

彼は思い切って母親に頼んだ


「おかあさん、スリッパをかってちょうだい!」


子供は泣きながら頼んだ

何回も頼んだが、それは叶わなかった


彼は相変わらず裸足で水や草を運んだ


6才を過ぎた頃

母親から包みを渡された

開いてみると、スリッパだった


夢が叶った・・

ついに僕の夢が叶ったんだ!


この夜、彼は5ルピーのスリッパを抱いて眠った


この時の喜びは

今も鮮明に胸に甦る、と彼は語る


つづく



《ジョン ブリアン》のこと


《ジョン ブリアン》の手術が1~2日延びた

緊急手術の動物たちが続々と運び込まれたからだ


それは、《ジョン ブリアン》が彼らに比べれば緊急を要していない、という事であり

個々の檻には、確かに緊急である事を認識せざるを得ない・・

傷ついたり、重病だったり・・

そんな手術待ちの動物たちが所狭しと並べられている


相変わらず、《ジョン ブリアン》は「帰りたい」と訴え

扉の開け口の所を中から引っかいた


「まだダメなんだよ」 と言うと

目を大きく開き、そして利き手でもって

わざとご飯の茶碗や水入れを逆さにひっくり返して反抗した


高濃度酸素室の中は、残したご飯が飛び散り

その上、大量の水でびしょ濡れになってしまった

終いには、シーツまで引っかいて隅っこに丸めてしまった


鳴きながら反抗を続ける《ジョン ブリアン》を見て

魔女は少し安堵していた


ガラスに」張り付いて、大声で泣く《ジョン ブリアン》を背に病室を後にした


《ジョン ブリアン》、高級缶詰を預けてきたから

今夜はそれを食べてね