ジンジン
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《水玉》いわく・・ 『枯葉軍団』
高い順に 《ジンジン》 《ジョン ブリアン》 《アゾ》
今日はずいぶん振りにお天気になった
僕らは一刻も早く朝ご飯を貰って外に出たかった
だのに魔女はなかなか起きて来ず
唯一ベランダから外に脱出できる僕が
みんなにギャンギャン急かされて
魔女を起こしに行く事になった
こんな時、僕はベランダからの脱出方法を研究し、成功した自分を呪う
《ボンネット》がまだ外に出してもらえないため
部屋のドアが閉められているから魔女に部屋には行けない
だから僕は一回外に出て、猫用出入り口からまた家に入り
階段を降りて魔女の部屋の前まで行き
ドアの前でうにゃうにゃ鳴くだけじゃ到底起きてはくれない事を知っているから
ガリガリと壁を引っかく
それから・・ 僕が代表でうんと叱られるわけで
魔女は相変わらず縮れ毛を逆立てて
猫が壁を引っかく音に慌てながらも
よたよたと倒れそうに斜めって、ドアをガンと開け・・
魔女 「こ、この・・」
僕 「ウヒッ・・」
魔女 「また《ジンジン》か・・」
僕 「ご、ごめんなさい!」
魔女 「ありがと・・」
僕 「え・・?」
魔女 「今日は午前中に仕事があったんだ、起こしてくれてありがとね」
僕 「はい・・」
それで魔女はリャビングに上がって来て
僕らにご飯をくれて、僕らのトイレを掃除して
まだ時間があるな・・ と言ってテレビをつけ
円盤(CD)を機械に突っ込んだ
案の定、シオエスアエ(CSI )だった
魔女 「最新シーズンだぞ!」
ユリぼうず 「また朝から死体か・・」
ジョン ブリアン 「好きだよね・・」
水玉 「死体を見ないと一日が始まらないんだろう」
ボンネット 「シタイッ! シタイッ!」
水玉 「こいつ・・ろくでもない猫になるぞ・・」
僕 「仔猫の教育にひどく良くない環境だよね」
魔女 「・・死体が 良く見えない」
水玉 「何言ってるんだ・・」
魔女 「死体がちゃんと見えないっ!」
僕 「あれ・・? 確かに、見え辛いね」
ユリぼうず 「ちゃんと死体が見えないと苛々するね・・」
水玉 「おまえも見たいのかよ!」
魔女 「死体が霞んで見えるし、その上右側にはでっかいヤモリも張り付いてる・・」
ユリぼうず 「おお!《もりやさん》だ ・・それにしても、たった一日でずいぶんでかくなったものだねぇ」
魔女 「何が起こったんだ!」
アゾ 「ま、まじょ、テデビの まえに・・ い、い、糸が いっぱい はえって おる」
魔女 「糸が生えておる?」
水玉 「・・なんだ、こりゃ!」
僕らと魔女はアゾと水玉のいるテレビの前にジタバタと駆け寄った
全員 「・・」
テレビの・・
横の上のカーテンを吊るす棒の・・先から
テレビの前に置いてある家族②が針金で作ったへんてこな工作のいたる所まで
長~い、長~い・・ 蜘蛛の糸がね
何本も何本もキラキラ光りながら繋がっていて
そしてテレビの画面
その画面が暗くなる度にそこに現れるでっかい《もりやさん》
それは・・ まさに何かによって《もりやさん》型に埃がこすられた形跡であり・・
魔女 「これをこすったのって・・きっと私だよね、 だったら凄くないか!」
ボンネット 「ボ、ボンニャット!」
僕 「え・・? 《ボンネット》なの?!」
魔女 「私じゃないの?」
ボンネット 「ボンニャット! ブンブン ブン キタ バンバン シタ ハシッタ イッタ テデビ バンバン!!」
水玉 「こいつ、何言ってんだ・・」
アゾ 「あ、あじょが つ、つうやく しまっすのでぇ」
水玉 「できるのか!」
アゾ 「は、はい! 『ぶんぶんがきった ばんばん しった はっしりましたから はっしって行って ばんばん しまして デデビが デデビで・・』 」
水玉 「余計わかんねえよ・・」
ジョン ブリアン 「そう言えば・・夜中に天窓からカナブンが入って来て、《ボンネット》が追いかけていたよ」
僕 「そうか! それでカナブンを追い駆けてテレビに飛び掛って・・」
魔女 「そこがたまたま《もりやさん》型に残ったんだ!」
アゾ 「そでは、そでは す、すっごいでしょう ふふん」
水玉 「何でおまえが自慢してんだよ」
僕 「てか、どれだけ埃だらけのテレビなんだ・・」
魔女 「どうしよう・・」
水玉 「どうしようって?」
魔女 「糸は蜘蛛さんが苦労して張ったんだろうからどかせないし、《ボンネット》の芸術作品は消せないし・・」
僕ら 「・・」
魔女 「ねえ、どうしよう」
水玉 「なら、一生ぼやけた死体を見てればいいだろう!」
魔女 「・・」
これが今朝のささやかな出来事で・・
いまだにテレビ前には沢山の蜘蛛糸
そして画面には相変わらず《もりやさん》が張り付いてる
この感動的な有様をカメラに収めようと試みたが上手く撮れなかった。 皆様にもお見せしたかったのに・・ 魔女