ちょっと山登り Ⅵ ~ スコールと空腹 ~ | まじょねこ日記

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魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

魔女


私たちはますます険しくなる山道を登る

道は次第に狭くなり

人が一人歩けるくらいに縮小した谷を歩いているような感じになっていた


頂上まであと1時間強、という所まで来て

突然、激しいスコールが私たちを襲った


Local severe shower 08831

リュックを前に掛け直し

前傾になってビデオカメラを守る


足元のえぐられたような道は、見る間に川へと変わってゆく

道が谷のようにえぐられているから

私たちに向って上手から水が押し寄せる


足元の水に押し流されそうになりながら

こりゃヤバいな・・ と感じていた 

しかし、どうしようもなく、スコールの中を歩き続けるしかない


先頭を歩いていた魔女の目が、左手前方にかすかに1軒の民家らしきものを捉えた

後ろのラクシミにその事を告げ

左に逸れる細い道を民家に向った


もう構っちゃいられない

スコールを避けて勝手に軒先に入り込む


様子を察したのか、家の裏手から一人の女性が現れた

な、なんと美しい人なのか

こんな山奥に、こんな美しい人が・・


私はその人に向って、

「勝手に入り込んでごめんなさい、すみませんが雨宿りをさせてください」

と言った


初め、驚いた顔をしていたその女性は

にこやかな笑顔になり

「どうぞ、どうぞ」 と椅子まで勧めてくれた


道の下方に他のみんなの姿がかすかに見えてきたので

こっちだよ! と手を振って促す

Rest-1 08831
後ろの女性、美しかったわ・・


Rest 08831


軒先に全員が揃った

後にようこさんから聞いて知ったのだが

ここはマンガールの知り合いの家だったようだ


何で後なんだ・・ というと


この時魔女は寒かったんだ

その事で一杯一杯だった


魔女 「うう・・ ぷるぷる・・」


マノツ 「寒いの?」


魔女 「寒い・・ ぷるぷる・・」


マノツ 「ジャケット持たせてあげたじゃないか」


魔女 「そう言えば・・ 私に暖かそうなジャケット持たせてくれたんだった! でも、あれ・・マノツが持ってるんだ・・」


マノツ 「何を言っているのか分からない」


魔女 「持つのが嫌で、またマノツのリュックに戻しといた」


マノツ 「・・」


魔女 「あの黒いジャケット、出しておくれ!」


カマラ 「それなら、私がマノツのリュックから出した」


魔女 「出した?」


カマラ 「それでとっくに私が着てる・・」


魔女 「わっ、着てる!! うう・・ またおまえか・・」


カマラ 「だって、寒かったんだもん」


魔女 「ああ、 もうっ! 寒い、寒い、寒い~っ!!」


マノツ 「バカ・・」


マンガール 「わかったから・・ 俺のを着てな」


魔女 「あらそお? ありがと」


この家のおばあさんが熱いジンジャー ティーを煎れてくれた

美しい女性の笑顔と、心づくしのジンジャー ティー

ああ・・ 幸せ至極でございます


そこで暫く賑やかに過ごした

いつの間にか雨はやんでいた


暗くなるといけないので先に進まなきゃ

この家の人たちにお礼を言って、再び出発する

歩く度に、靴の中がぐじゅぐじゅして気持ち悪い・・


小さな集落に辿り着いて、やっと先が見えてきた

この集落に一軒だけある店屋で

持って来たチャウチャウヌードルを調理してもらって食べる


今夜泊まるのはマンガールの親戚の家で

そこの主が私たちのための買い物に来ていた


マンガール 「今夜は俺が美味いチキンスープを作るからさ」


それは楽しみ

その時魔女は短絡的にそう思っていた


辺りは既に暗くなってきていた

最終地点に向って急がなきゃ

マンガールとマノツ、家の主人は買い物をするから

私たち女組は一足先に丘のてっぺんの宿泊先に向う

無防備な服装の魔女の足に這い上がるズカ(蛭)どもを投げ捨てながら・・


途中で家の主が追いついて来た

先に行ってるよ、 仕草で語り、追い越した彼の腕に・・

茶色のニワトリが・・

コッコ・・コッコ・・ と小さく鳴いている茶色のニワトリが 

抱えられており・・


私たちが家について間もなく、マンガールとマノツも到着した

私たちは、着替えをし、みんなして部屋のそこかしこに濡れた服などを吊るした

部屋の端にある、逆さに置かれた大き目の竹篭の中で

ヒヨコたちがピヨピヨと賑やかしく鳴いている

今夜はこの部屋でネパール軍団が

はしごを上った上の部屋で、ようこさんと魔女が寝る


ここのお母さんが釜戸でご飯を炊き、料理を作っている


Wife&husband 08831
この家のご主人と奥さん

それより、笑顔の奥さんの手前の・・ 肉がね汗悲しくて・・


In the room-2 08831
実際この台所のある部屋の明るさはこのくらいのもので

入り口を入って右手に2匹のヤギ、左手にはベッド

そして左奥が釜戸になっていて、上にはこのようにとうもろこしが干してある


研究熱心なようこさんは台所で料理の様子を眺めていた

魔女はその隣の部屋で、冷えた体を暖めようと

ラジオから流れてくるインドの音楽に合わせて・・

踊っていた


マンガール 「鳥のスープが出来たよ!」


チキンのスープを見た私たちの心は複雑だった


ネパール軍団は台所で食事をするので

私たちの分は部屋に運んでくれた

ようこさんはさっきチャウチャウを食べたからスープだけで十分よ、と言ったが

魔女の空腹感は、鶏の境遇を悲しむ心にさえ勝ってしまい

マンガールにダルバートが食べたいと言っていた

そう言ったのに・・


ようこさんがスープを飲み終わり

凄く美味しいからお代わりをする、という頃になっても

魔女のダルバート用の豆スープとご飯が来ない

私のチキンスープが冷めてゆく・・


空腹が魔女を恐ろしく苛々させていた

ようこさんがスープのお代わりに行く時


魔女 「ようこさん、ついでに私のダルバートがどうなっているか見て来てよぉ」


ようこさん 「わかった!」


すると・・ 台所の方からようこさんの声


ようこさん 「ちょっと、マジョがバート(ご飯)待ってるよ」


ようこさんが戻って来た


魔女 「みんな何してた?」


ようこさん 「もうみんなしてダルバートを食べていたよ」


魔女 「・・」


さて、棒でも携えて台所に乱入するか

と思っていたところへ

焦り気味の顔つきで現れたのが・


マノツ 「マジョ・・ ご飯だよ」


魔女 「なんでマノツが持って来る・・ マンガールはどうしたのかな?」


マノツ 「・・」


彼らは、ようこの言った 『マジョ』 と 『バート』 の語句から全てを悟った

誰もが知るように、食事は魔女にとって、この世の全てだからね


しかし、ここで・・

魔女は心を抑えた  

大人だから・・


マンガールは子供時代以来会ってなかった親戚に会い、山盛りの話をしながら一緒に食事を取って、それで嬉しくて魔女のダルバートが頭から飛んじゃったんだよね


今夜はそっとしておいてあげる

その代わり・・

明日からどうなっても知らないからね

覚悟をしておきなさい


単純な人間ほど空腹に弱い

食べる事、それが魔女にとってどんな意味があるのか・・

ガンダルバ村でチャウチャウヌードルの食いっぷりを見たなら分かるよねぇ



in the room-1 08831

後ろのベッドはようこさんに使ってもらう事にして

魔女用の土間に敷かれた薄い布団の上で歯磨きをする

マンガールへの復讐を胸に誓いながら・・


てか!ひざ掛け1枚じゃあまりに寒いだろう

取り敢えず復讐前夜祭として・・


魔女 「マンガール! 寒いぞ!!」


マノツ 「・・マジョ はい、僕の毛布」


魔女 「この・・ マンガールの毛布をよこせや!! マンガールのを!」



写真は1枚目、スコールの画像以外は、全てようこさん撮影