水玉
僕は破れた(ガラスが割れた)窓から部屋の中に飛び降り
《涼子》の様子を見るため奥の部屋に進んだ
《涼子》は、やっと・・ って感じで目を開けて僕を見た
そんな元気のない細い目でも、相変わらず目つきは悪かった
僕 「《涼子》、どうしたんだ・・」
涼子 「うるさい・・」
僕 「『うるさい』 じゃなくて、何でこんな所にいるんだって聞いてるんだよ」
涼子 「だって、ここは私の部屋じゃん・・」
僕 「そうじゃなくて、何でご飯を食べに帰らないんだって聞いてるの!」
涼子 「・・」
僕 「すっかり痩せちゃってるじゃないか・・」
涼子 「・・」
僕 「もういい加減に家に帰って来ないと・・」
涼子 「お腹が痛くなったの・・」
僕 「それで動けなかったの?」
魔女 「《水玉》! 《涼子》はどんな様子なのよ!!」
涼子 「うるさい・・」
僕 「痩せちゃってるよ~!」
魔女 「とにかく外に連れ出して!」
僕 「《涼子》、家に帰ってご飯を食べなきゃ」
涼子 「・・」
僕 「動けないの?」
涼子 「・・」
僕 「魔女~! 《涼子》、動けないらしいよぉ」
魔女 「動けよっ!」
涼子 「うるさい」
魔女 「《涼子》っ、出て来ないならこのドアを壊して、もう二度と住めなくなる位お前の部屋をメチャクチャにしてやるからね!」
涼子 「う、うるさい・・」
《涼子》はそう言いながらも体を起こし始めた
魔女の恐喝が効いたようだ
それでやっと立ち上がったけれど、またヨタヨタと倒れてしまった
魔女はその様子をドアの穴から(郵便受けだって!)覗いていて
「さっさとしなければここを蹴破るぞ!」
と、《涼子》を脅し続けた
あれは優しさのかけらもない人でなしだ
その脅しに追い立てられるように
《涼子》がようやく立ち上がった
僕は《涼子》の横にぴったりくっついて
ゆっくりとドアの横の窓に向かった
だけど、こんな状態では、いくらなんでもあの高い窓には飛び乗れないよ
どうしよう・・
案の定、《涼子》は小さな高い窓を見上げるばかりで
飛び乗る仕草さえ出来ないでいる
僕が窓に飛び乗って、上から何回も鳴いて励ましたけど
《涼子》がただ僕を見上げて、声にならない口を微かに開くばかりだ
僕 「そんな事を言ったって、入った時と今とでは状況が違うじゃない」
魔女 「そうか・・ やっぱ蹴破るか!」
ジョン ブリアン 「おいしいご飯を持って来て、窓からあげたら?」
インジゴ 「それで元気になったら出るんじゃない?」
魔女 「君たち・・ 頭良いね・・」
それで魔女は家にもどって、高級缶詰をトレイに入れて来た
そして、それを破けた窓から家の中の床に上手に落とした
魔女 「《涼子》、取り合えずご飯を食べなさい」
涼子 「うるさい」
魔女 「何なのよ、その態度はっ! しかも高級缶詰を無駄にする気か! ゆ、許さんっ!!」
僕 「仕方ないから僕が食べる事にするよ・・」
ジンジン 「《水玉》、するい!」
ジョン ブリアン 「するい!ずるい!」
アゾ 「じゅ、じゅっるい!じゅっるい!」
魔女 「あれ・・ ここになかなか良いものが・・ いるじゃないか?」
魔女はそうつぶやくと
いきなり《アゾ》を抱え上げ・・
破けた窓から《涼子》の部屋に投げ込んだ
つづく