ユリぼうず
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魔女がトミニャガさんに向かって
「それを動かしちゃダメ~!!」
って叫んだ時は、もう手遅れだった
車の屋根が、後ろで外を眺めていた僕に向かって・・
シャバシャバ バッタン!
トミニャガさん 「ひぇ~い!!」
僕 「びょえ~い!!」
魔女 「・・・」
僕は反射的に魔女のおひざに飛び移った
でなきゃ挟まれるところだったんだ
トミニャガさん 「な、何が起こった?」
魔女 「・・オープンカーになった」
トミニャガさん 「寒いのに?」
魔女 「冬なのに・・」
トミニャガさん 「即刻閉めて下さいまし」
魔女 「手動ですので簡単には閉められません。 《ユリぼうず》は振り落とされないようにしっかりつかまってなさい」
僕 「ぐあっし!!」
トミニャガさん 「・・あの、私がやったのかしらねぇ」
魔女 「あなたがやったんですよ」
トミニャガさん 「・・」
信号は度々あったけど、すぐに進めに変わったり、魔女が頑張っても上手く行かなかったりで、車の屋根は当分元に戻りそうもなかった
僕 「ま、魔女・・ 寒い」
トミニャガさん 「さ、寒い・・」
魔女 「ご心配なく、みんな寒いですから、特にまだらハゲの《べス》なんて、うんと寒いと思いますけど・・」
トミニャガさん 「ひぇ~! 大変だ、どうしよう!」
魔女 「ご自分のコートでもかけてあげたら?」
トミニャガさん 「そ、そんな・・ 私が寒い」
魔女 「コートを脱いだらまだらハゲって訳でもないんでしょう・・」
僕 「ぷっ!」
トミニャガさん 「分かりましたわよ! 脱ぎますわよっ」
トミニャガさん [ 四苦八苦 ]
魔女 「何なさってるんです?」
トミニャガさん 「ぬ、脱げませんの・・」
魔女 「お城が邪魔で?」
トミニャガさん 「うるさいっ!!」
それで次の信号が止まれの時に、僕が魔女の後ろにまわって、魔女がお城を持ち、トミニャガさんはやっとの思いでコートを脱いで《べス》のお城にかぶせた
トミニャガさん 「わあ~~! 寒い!
寒いよおー!」
僕 「魔女、ここは風があまり来なくてなかなか暖かい、
ずっとここにいていい?」
魔女 「いいよ」
僕が背中の後ろに挟まっているから、魔女は前かがみのすごくおかしな格好で運転した
僕が魔女の肩から顔を出して覗いているからか、または寒いのに薄着のトミニャガさんのせいか、冬なのにオーピュンカーのせいか・・
すれ違う車の運転手さんがみんな、笑いながら、または驚きながら通り過ぎて行く
トミニャガさん 「寒い・・ 寒い・・ もうダメ、助けて・・」
魔女 「もう暫く行って信号を曲がると大きな道に出ますから、そこで車を止めて幌をかぶせます」
トミニャガさん 「し~ばゎゎゎゎらうぁ~くぅぅ~って・・」
魔女 「15分位」
トミニャガさん 「どぅああああーー!!」
僕 「ねえ魔女、トミニャガさんの髪の毛、前よりずっと凄い事になってるよ」
魔女 「放っときなさい・・」
それから暫く行って、広い道の端にやっと車が停まった
(これでやっと屋根が元通りになる・・)
そう思っていたのに・・
後ろにたたまれた屋根に何かが挟まって
魔女が必死になっても
どうにもならないじゃないかあ~!!
僕 「ダメなの・・ ぶるぶる・・」
トミニャガさん 「は、早く・・ 早くっ、 ぶるぶるぶる・・ ぶるぶる」
魔女 「ダメだ・・ ティッシュの箱が変に挟まってしまって・・」
僕 「どうするの・・ ぶるぶる・・」
魔女 「病院の午前の部が閉まっちゃう・・ 仕方ない、このまま行く」
トミニャガさん 「勘弁してくだすゎ~~い 」
魔女 「行くしかない!」
トミニャガさん 「う、うわ~ん
もう、耐えられない~!」
魔女 「ご家庭の設定温度が高過ぎるから寒いんです!
私のコートを貸してあげるから」
トミニャガさん 「魔女さん、ありがとう~~!! ぶるぶる・・」
それで魔女は自分のコートを脱いで渡したんだけど・・
魔女 「・・ トミニャガさん、こんな所でラジオ体操ですか」
トミニャガさん 「き、着られない・・ きっつい・・」
魔女 「・・」
トミニャガさん 「着られなあーいぃ!!
もうっ、役立たず!」
魔女 「着なくていいから、羽織って・・」
こうして僕らはオーピュンカーのまま、再び動物病院に向かった
今日もつづく・・