魔女の子供時代 ~ 別れ Ⅱ ~ | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

魔女



洞窟へ移り住んで数日が経った


まじょはそこで動物たちと過ごし、昼間は森の奥で遊んだ

食べ物は主に木に実った果物だ


これから秋になり、冬になったら

ウサギを捕まえて食べるのは可愛そうだから

草や木の皮や川の魚を食べるしかないかな・・

などと考えていた


草も魚も嫌いだけど

《ソーヤ》たちと暮らすにはそれも致し方ないと覚悟を決めた



「《ソーヤ》、ずっといっしょにくらそうね!」


意外な事に《ソーヤ》は浮かない顔をした


「どうしてそんなかおをするの?!」


まじょは彼を責めた


それでも《ソーヤ》には喜んだ様子が見えなかった

《ソーヤ》が大喜びをすると信じていたから

その態度はまじょをひどく苛々させた


「まじょがきらいになったの!」


すると《ソーヤ》はすっくと顔をあげ、しっかりとまじょを見た

それは今までに見たこともない悲しい目だった


他のみんなは大喜びで一緒に遊んでくれるのに

《ソーヤ》だけは今までと違ってまじょと遊ばなくなった


その事はまじょをひどく不安にさせた

それでも、絶対に《ソーヤ》とは離れないと心に決めていた



朝、洞窟で目覚めると《ソーヤ》がいなかった

こんな事は初めてだ

森の中ではまじょの傍らにはいつだって《ソーヤ》がいた


トムや他の動物に聞いても、みんな眠そうな顔をするばかりだ


《ソーヤ》の帰りを暫く待ったが彼はなかなか現れなかった

まじょは体を洗うため、動物たちと川に向かい

その途中で木に登って果物を取って食べた


川で遊んでいる時も、途中でみんながふざけ出しても

まじょは楽しくなかった


(《ソーヤ》がいない・・)


(《ソーヤ》をさがそう・・)


まじょは狼の合図である鳴き声を出して、森の中を歩きまわった

しかし《ソーヤ》は現れず

最後に《ソーヤ》が遠くに向かっていつも吠えている崖に向かった


本当はそうしたくなかった

そこからの遠吠えは遥か遠くまでも行き渡る

当然まじょの家にも聞こえるのだ


(父や母に気づかれたら急いで逃げ出せばいい・・)


まじょは大きく突き出た崖の先に立って、遠吠えを始めた

必死に吠えて《ソーヤ》を呼んだ


それから、そこで暫く《ソーヤ》を待った

けど、《ソーヤ》は現れなかった


その夜も《ソーヤ》は洞窟に戻って来なかった


次の日も戻って来なかった


まじょはすっかり元気を失くしていた


そんなまじょを他の動物たちが心配そうな顔で取り囲むから

一生懸命に彼らと遊びはするものの

心は不安と淋しさでいっぱいだった



人間の足音を聞いたのは、木に登って果物を食べている時だった

一緒に木に登っていた《ハックル》と《ベリー》

それと下で待っていたの動物たちが

一斉に動きを止めて音のする方を凝視した


この高い木の上から下りる頃には既に人間が迫って来ると思われ

まじょは急いで《ハックル》と《ベリー》にもっと上まで登るように言い

下の動物たちにはすぐさま隠れるように合図をした

それから自分は木の高い場所に移動した


しかし下の動物たちの何匹かは

人間が近づくまでそこを動かなかった


人間は一人ではなかった

何人かの人間がやって来るのが分かった

まじょにはそれが恐ろしい敵に思えて木の上で息を潜めた


下の何匹かの動物はそれらの人間がこちらにやって来るのを確認し、やっと逃げ出した時には、彼らは既に人間の視界に入っていた


人間たちの動きが慌しくなった

そこにいた動物たちがまじょの仲間だと認識したのだ


「この辺りにいるぞ!」


中のひとりがそう叫んだ


向こうから父とアーカイマさんが走って来るのが見えた



つづく