魔女の子供時代 ~別れ~ | まじょねこ日記

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魔女


今日の昼休み

ベランダでぼんやりしていたら

東の空に大きな白い月が出ていた

月の地形までも分かるほど大きな白昼の月だった


子供時代を思い出した

明かりのない森で見る月は本当に明るかった

月のある夜は、何不自由なく歩く事が出来た


太陽の明かりと違って

月明かりは余分な色をかき消す

そして、それは独特の世界を創り出すのだ



母のお腹の中に

まじょの弟が出来た


母のお腹は当然の事ながら、次第に大きくなっていった筈なのだが

まじょはお腹の大きな母をまったく覚えていない


クリスマスも過ぎ

動物たちの少なくなった淋しい冬を越し

雪解けの春を迎えると

あたりは様変わりする


たくさんの動物や虫が姿を現し、活き活きと活動を始め

花が咲き、木々は息吹く

そして、森はその色を変える


まじょも動物たちも浮かれて終日森の中で遊びまわった

そうしてまじょの関心は外にばかり向けられていたのだ


夏を迎える頃には

ますます増えるたくさんの動物たちとともに

森の奥深い場所にある滝にまで足を延ばすようになっていた


毎日が面白い発見の連続で

森が私たちを飽きさせる事はなかった


このまま楽しい生活が永遠に続くと信じて疑わなかった



父が言った


この地を去る・・ 父はそう言った



まじょ 「ぜったいにいやだ!! どこにもいかない!」


父  「そうはいかなくなったんだ・・」


まじょ 「どうぶつたちと さよならはしない、 ソーヤとおわかれしない!!」


父  「いつかはお別れしなくちゃならないんだ」


まじょ 「いやだ!」


父  「お父ちゃんの言うことを聞きなさい」


まじょ 「まじょのおとうちゃんはソーヤ!」


父  「お母ちゃんは赤ちゃんを産むし、それにまじょはあと1年と少ししたら小学校に行かなければならないんだよ。 その準備や手続きがあるんだ」


まじょ 「しょうがっこう・・ ってなに?!」


父  「決まった年齢になった子供はみんなそこに勉強をしに行くんだ」


まじょ 「べんきょう、って?」


父  「色々な事を教わるんだよ」


まじょ 「ぜんぶソーヤにおそわった!」


父  「他にも知らなきゃならないことがたくさんあるんだ」


まじょ 「そこはどうぶつのこどもがいっぱいいくの?」


父  「人間の子供だけだ」


まじょ 「・・・ ぜったい! ぜったい、いかない!!」


父  「じゃあ、お父ちゃんや、お母ちゃんとさよならしてもいいのかい?」


まじょ 「いいよ!」


父  「・・」



父はどうやってもまじょを説得できなかった


しかし、物事はまじょの知らない所で進んでいた


まじょは動物的感覚で事態を察知し

家出を決めた



何もかも捨てて、森で動物たちと暮らすんだ・・


木の上の家は見つかってしまう

だからといって、他の場所にひとりで家など作れない

木の上の家は父と一緒に作ったのだ


まじょは連日森の中をうろついて、やっと洞窟をひとつ見つけた

ここなら見つからない・・


必要と思われるものをその洞窟に運び込んだ

持てるだけの物を持って、親に見つからないように何回も往復した


この世界以外の暮らしなど想像もつかなかったし

想像したくもなかった


この後秋が来て、雪深い冬が来る事も知っていた

それでもソーヤや動物たちと一緒なら生きていけると信じた


最後に荷物を運び込んだ日から

まじょは家には戻らなかった


                        

つづく