魔女の子供時代 ~ 別れ Ⅲ ~ | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

魔女 



動物たちは散り散りに逃げ出し

下では、何人かの男たちがまじょのいた形跡を探していた


まじょは高い木の上の葉の中で息を潜めた

猫の《ハックル》と《ベリー》はそれぞれの枝から下の様子を眺めた

時々私たちは顔を見合わせ、互いを確認した


木になった果物は、ちょうど食べ始めたところで

まだ種などを下に落としていなかった

それは幸いだった、と少しばかり安堵していた


「この辺りにいる筈だ」


「間違いない」


そんな言葉が聞こえて、まじょは身を硬くした


後から来た人間のひとりが大きな猟犬を従えていた

それを目にした時、ひどく嫌な気分になった


しつこく地面の臭いを嗅ぎ回っていたその猟犬が

何かを見つけたように、突然荒々しく走り出し

人間たちも猟犬の行く方に移動した


助かった・・

今のうちに木から下りて逃げ出そう


彼らが遠ざかるのを確認して足を踏み出した


猟犬が異常な吠え方をしている

太い幹にしがみつきながら、声の方に目をやった


木の上から必死で逃げる狐の《トム》の姿が見え隠れしている

目を移すと、吠えながらそれ追う猟犬が目に映った


大変だ!

まじょは急いで木から下り始めた

だが、それも面倒になって途中で木から飛び下りた


そして、必死で犬の声を追い、凄い勢いで走った

木々を避けながら走って走って、走った

猟犬の声が近づいている


(《トム》がおいつめられている、いぬがほえているから《トム》はまだおそわれてない・・ はやくいかなくちゃ!)


途中、向こうの林に人間たちの姿を捉えた

しかしそれに怯んでいる場合ではなかった

ただ、ひたすら走り続けた


猟犬の声はもう目前だった


まじょの目は大声で吠えながら穴に首を突っ込んでいる猟犬の姿を捕らえた

《トム》はその穴に逃げ込んだに違いなかった


猟犬は前足を力強く動かし、恐ろしい声を出しながらその穴を掘っているところだった


(《トム》がひきずりだされる!)


まじょはそのまま猟犬に飛び掛った

まじょを振り払い、驚いたように振り返った猟犬の目は血走っていて、口のまわりは土とよだれにまみれていた


獣臭い子供を獲物とばかりに猟犬はこちらに向き直った

口から何本もの太いよだれの糸を引いて・・


まじょは瞬時に目の端に入った太い木の枝を拾い上げた

しかし、その枝は枯れていたようで思いのほか軽かった

まずい・・と思ったが、何もないよりはましだと自分に言い聞かせた


それでも、なぜかこの猟犬に負ける気はしなかった


猟犬はよだれを引きずりながら、顔を低くし

その代わり肩を交互に高く上げてこちらに近づいて来る


(さあ、とびかっかっておいでよ・・ 

           これをくちのなかにつきたててやるから)


後ろから、人間たちの叫び声が聞こえた

この時、まじょは彼らをひどく邪魔者に感じていた


(にんげんはてをだすな・・)


その時

猟犬の後ろ、《トム》が逃げ込んだと思われる斜面に作られた穴の上に・・


《ソーヤ》の姿を見た



つづく