森のクリスマス  | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

魔女


またまた魔女の子供時代のお話

魔女が覚えている初めてのクリスマス



クリスマスがやって来る前から

森はすっかり雪に包まれて


まじょは深い雪に足を丸ごと取られながら

相当な時間をかけて森の奥までトムとソーヤ、そして彼らの仲間に会いに行った


背負ったバッグの中はその時によって

パンだったり、雪に中に埋めておいた肉だったりした


トムやソーヤは自分でもご飯を獲るから

小さなまじょが持って行く量なんてほんのお口汚しに過ぎず

それはあくまでもまじょの自己満足の域なのだった


トムやソーヤたちがとても元気に雪の上を跳ね回ってふざけているのが、まじょには不思議だった


(なぜソーヤやトムは、雪にずぶずぶと足がめりこまないのかなぁ?)


その日のお口汚しは、ふわふわのケーキだった

それはハックルやベリーたちの猫や外の犬たちにも配られる

動物のためのケーキだから

材料以外の味付けは何もされていない



今日はクリスマスなんだって

こんな森の中にもサンタクロースはやって来たよ


今朝まじょが目を覚ますと・・

枕元に絵本が置かれていた

『クリスマス キャロル』 っていう絵本


背中のバッグにはトムとソーヤたちに見せようとその絵本も入れた

ケーキを食べ終えた彼らに、まじょは木の上の家で絵本を見せた


今日は朝から母は忙しそうにオーブンの前を行ったり来たりしていて

父はケーキを買いに街に出かけていた


だからまじょは今朝サンタさんから貰ったこの本の内容を知らなくて

まだ字も読めないし

それで絵を見ながら勝手な物語を作り上げて読むふりをしてみせた


冬は日が暮れるのが早いから帰らなきゃ

雪の中をぼっこ、ぼっこしながら歩き出すと

他の仲間とバイバイして、トムとソーヤがついて来てくれた



家に着くと、ちょうど父が街から帰って来たところだった



父  「ケーキを買ってきたぞ!」


まじょ 「けーきならおかあちゃんがつくれるよ」


父  「クリスマスのケーキは街で買うものだ!」


まじょ 「どして?」


父  「それがクリスマスの決まりなんだ!」


母  「まじょちゃん、放っておきなさい・・ 自分もクリスマスに何か活躍したって感じが欲しいだけなんだから」


父  「いやあ、街はクリスマス一色だったよ! 見事なツリーもあったぞ、まじょにも見せたかったなあ」


まじょ 「まちにはいかない!」


父  「人々は楽しそうに浮かれていたな」


まじょ 「ひとびとはきらい!!」


母  「さあ、食事にしましょう! 

    トムもソーヤもマリーたち(犬)もみんな中に入って」



いつになく蝋燭がいっぱいで明るいな・・

狼も猫も犬も狐も、みんな揃ってのお食事が終わって



父  「いよいよデザートのケーキだ!」


まじょ 「どんなけーき?」


父  「まあるくて、大きくて、クリームがいっぱい乗っかってて、それは素晴しいものだ、これは感動するよ!」


まじょ 「はやくはこをあけて!」


父  「その前に!」


母  「何ですか・・ もったいぶって」


父  「じゃんけんをしよう」


まじょ 「なんで?」


父  「勝った者が3等分にしたケーキの一番大きいのを取る!」


母  「大きいのはまじょちゃんでいいでしょう!」


父  「いやだ!」


母  「もう・・ 私は最後でいいですから2人でどうぞ」


父  「よしっ! いくぞ! じゃんけんぽん!!」



父  「私の勝ちだ!」


まじょ 「はやく あけようよ」


父  「じゃんけんも勝った事だし、では開けるぞ!」


まじょ 「そーや、みんなもこっちにおいで、いっしょにみようよ」


父  「よし、全員集まったな、 それっ ビックリマーク



まじょ 「・・」


ソーヤたち 「???」


父  「えっ・・・」


母  「予想通りだわ ・・」


まじょ 「・・ なあに? これ 」


父  「こ、こ、これはまさにケーキだ! ケーキ・・ だよねぇ、君」


母  「ケーキだったんじゃないですか?


まじょ 「まあるくて・・ おおきくて・・ 

          くりーむがいっぱいじゃなかったの?」


父  「ううむ・・」



ケーキは・・

ドンガラガッチャンになっていた

跡形もなかった


大きなケーキの箱は、バイクの後ろのシートに縛られ

ガタガタ道を長い事かけて運ばれて来たのだった



母  「さて、これをどうやって3等分すればいいのかしらねぇ」


父  「それは君の役目だ、 上手くやってくれ!」


母  「子供に散々夢を与えておいて、台無しにする・・」


まじょ 「おかあちゃんのけーきがいい・・」


父  「何て事を言い出すんだ!」


まじょ 「だって、これ・・ きもちわるい」


父  「何という事を・・ そんな子に育てた覚えはないぞ!」


母  「勘違いしないで下さい、この子を育てたのはソーヤですよ」


父  「どうりで躾がなっていないと思ったよ」


母  「あなたに躾けられなくて幸いでした」


父  「なに! 私より狼のほうが良いと言うのか」


母  「ソーヤはあなたよりずっと常識がありますし、役に立つ事をたくさん教えてくれます」


父  「つまり君は私が狼より劣っていると言っているんだな!」


母  「別にそんな事は言っていません」


父  「そうか、安心したよ」


母  「事実を言っただけです」


父  「×▲÷★= ダウン 」



こうしてまじょの記憶にある最初のクリスマスは

むっちゃくっちゃのケーキと夫婦喧嘩で終わった


父は性懲りもなく、どんがらがっちゃんのケーキを毎年運んで来ては、まじょに 『さあ、食べなさい』 と迫り・・


だから、まじょがケーキというものの本来の姿を知ったのは

これより何年も後の事だ


クリスマス キャロルの本は、今も自分の部屋の本棚にある