ジョン ブリアン
《ユリぼうず》がどうやら猫じゃないらしい・・
といううわさに僕は興味を持った
それでここ数日、《ユリぼうず》を観察することにした
僕ら猫との違いを検証するんだ
(なんだか僕、色んな言葉や漢字を覚えたと思わない? こう見えても猫日記のために毎日努力してるんだ)
それでね、昨日は《ユリぼうず》の病院に同行した
(ふむふむ・・ 車の窓から外を眺めてバイクを探してる)
僕 (止まれ信号で隣にバイクが停まった・・)
ユリぼうず 「チッ・・・」
僕 (気に入らないんだな・・)
ユリぼうず 「おおぉぉぉ!!」
僕 (あ・・向こうから来た大きなバイクに反応してる!)
ユリぼうず 「ぉぉぉぉぉぉおうお~!! おおぉぉぉぉぉ・・・」
僕 「へえ、おもしろい! 《ユリぼうず》はバイクが近づいて来るにつれて大声になって、遠ざかるとバイクの音と同じように声も小さくなって行くんだね」
魔女 「ドップラー効果かい・・」
ユリぼうず 「カチャカチャ・・ カチャ・・」
僕 「・・太いヒモ(シートベルト)で遊んでる」
ユリぼうず 「カチャカチャ、ガチャガチャ、
・・・ジタバタ・ジタバタ!!!」
魔女 「なぁ~にやってんの!」
僕 「ヒモに挟まれてもがいてる・・
魔女がヒモをダラダラにしておくからだよ」
ユリぼうず 「グイグイ! グイグイ!!」
魔女 「こっちに来ないで!」
ユリぼうず 「グイグイ・ギュギュッ!グイグイ・ギュギュッ!」
魔女 「背中に入り込まないで!」
ユリぼうず 「よっしょ~ こらしょ~!」
魔女 「頭に乗っからない!」
ユリぼうず 「タンッ!!」
僕 「運転席の前に飛び降りた・・」
ユリぼうず 「おお・・ 見晴らし最高!」
魔女 「前が見えない! どいてっ!!」
ユリぼうず 「みゅ~ みゅみゅみゅ~ 」
魔女 「歌うなあ!」
僕 「魔女、《ユリぼうず》っていつもこんななの?」
魔女 「そうだよ・・ 時々急ブレーキかけてやろうかと思っちゃうよ」
バイク 「ブンブブ ブンブブ
バ~バババ~ババ」
ユリぼうず 「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ 」
やっと病院に着いて・・
先生 「やあ、《ユリぼうず》ちゃん、今日は兄弟と一緒なんだね」
ユリぼうず 「ああ、こいつは付き添い!」
僕 「何だよ偉そうに・・ それにしてもすっかりここの顔だな」
ユリぼうず 「《ジョン ブリアン》、まあここに座りなよ」
僕 「あ・・ うん、 ありがと・・」
ユリぼうず 「気にしないでいいよ、この病院も僕の縄張りだから」
僕 (こ・・ こんなところまでかい!!)
僕が長い椅子に座ってあちこち見ていると・・
いきなりまだらの大きな犬(ダルメシアン)が入って来た!
僕は驚いて魔女にしがみついた
僕がすごくあせっていたから、魔女は僕をバスケットに避難させた
《ユリぼうず》は相変わらず犬に向かっても威張って・・
ユリぼうず 「君、犬だねえ」
犬 「そうだよ、君はどこが悪いの?」
ユリぼうず 「時々お腹に石が・・ケッケケ!
石が溜まっちゃたりするんだよね~ ケッケケ」
犬 「僕も同じ病気なんだ・・ ところで、なんで笑ってるの?」
ユリぼうず 「・・・」
犬 「・・ 僕・・ 病院嫌いなんだよ」
ユリぼうず 「そりゃそうだろうよ
この病院は僕の縄張りだからね!」
犬 「い、いや・・ そういう事じゃなく・・ え? そうなの?!」
ユリぼうず 「だからこうやって君は床に
僕は椅子に座っているんだろ?」
先生 「《ユリぼうずちゃ~ん》!どうぞぉ」
ユリぼうず 「へいへ~い!」
その間僕は待合室で、バスケットの中にひとりぼっちだった
そんな心細いところにもってきて
犬 「君はどこが悪いの?」
僕 「ぎょっ!! そ、そんな大きな顔で覗かないで・・」
犬 「ねえ、どうしたのさ」
僕 「なんだよ、 は、話しかけないで!」
犬 「 まったく・・ 猫はフレンドリーじゃないんだから」
僕 「・・さっき、《ユリぼうず》と話してたじゃん」
犬 「だって、あれは猫じゃないじゃないか」
僕 (やっぱり・・ 猫じゃなかったんだ・・)
《ユリぼうず》が戻って来た
犬 「ど、どうだった?」
ユリぼうず 「どうって事ない!」
犬 「注射した?」
ユリぼうず 「しなかった、別に注射したっていいし!」
犬 「注射・・ 平気なの?!」
ユリぼうず 「この前巨大な注射を2つしたね!」
犬 「・・ ・・・ 」
僕 (わあ! 犬の足がガタガタ震え出した)
犬 ガタガタ・・ブルブル・・ ガタガタ・・ ブルブル・・
先生 「《ジョニーちゃん》! お待たせしました、どうぞぉ」
犬 「やだ!やだあ~! た、助けて!」
ユリぼうず 「いってらっしゃい!」
犬 「いやだあぁぁぁぁ~~!!」
飼い主のおばさんは、まるで綱引きをするようにして《ジョニー》を先生のお部屋の方に引っ張った
《ジョニー》はゼーゼー言いながら
絶対にこっちを向いたまま、少しずつ引きずられて尻尾から先にお部屋に消えてった
ユリぼうず 「なかなか往生際の悪い犬だな・・」
《ユリぼうず》は帰り道もピクニック気分で
ケッケと笑ったり、歌ったり、窓に張り付いてバイクを探したりしていた
そして今朝
《ユリぼうず》はテレビ台にマーキングして魔女にうんと叱られた
魔女はぶつぶつ言いながらそこを拭いて
ショーシューなんとか(消臭剤)で《ユリぼうず》の臭いを消した
それを見て《ユリぼうず》の目が、見る見る逆三日月に変わって行った
ユリぼうず 「もう怒ったぞ! 前から気に入らないと思ってたんだ! 今日こそ絶対に許さないからな・・」
僕 「自分が悪いから叱られたんじゃないか」
ユリぼうず 「あのテレビ台は僕の縄張りなんだぞ!」
僕 「テレビ台なんかを縄張りにしてどうするんだよ・・」
ユリぼうず 「こうなったら仕返しをしてやる!!」
僕 「ちょっと待ってよ! 魔女に何をするつもりなの!」
僕の制止を振り切って
《ユリぼうず》は恐い顔で立ち上がり・・
なんでだか・・
ショーシューザイに向かって、捨て身のおしっこをひっかけた