魔女
急に寒くなったせいか、軍団はお部屋にかたまって寝腐れてばかりいる
そういう訳で・・
今日はなんら面白い事も起こらなかったので
またまた、魔女の子供時代のお話しを・・
あれからというもの、まじょは2度と都会には行かず
両親も2度と連れては行かなかった
ただ、アーカイマさんが度々森の家にやって来てはまじょと遊んでくれるようになった
まじょは相変わらずソーヤを始めとする動物たちと森で気ままに過す日々が続いていた
ただ・・ あの日から
都会の象のことが時折脳裏に浮かんで
胸が苦しくなる事が度々起こった
それは特に森の中で自由に走り回っている時に思い出され
そのとたんにまじょの元気をなくした
都会の象は・・
まじょにとって辛いトラウマになってしまったのだった
父は街に出かける度にチョコレートを買って来てくれた
そしてまじょがそれを食べ終わると
父は包んであった銀紙を一生懸命にぎゅうぎゅう丸めた
美しい丸の形になるまでしつこく丸め
気が済むと、それを丁寧な手つきで棚に置いた
チョコレートを買ってくる度に
父は以前丸くした銀紙に新しいのを重ねていった
最初は気にも留めていなかったのだが・・
さすがに次第と大きくなってゆく銀の玉に興味が沸いてきた
まじょ 「おとうちゃん、あそこのチョコレートのつつみがみのたま・・」
父 「ああ、あれがどうした?」
まじょ 「なんでああやっておくの?」
父 「まさか触ったりしていないだろうね!!」
まじょ 「だって、とどかないもの・・」
父 「ああ、それは何よりだった」
まじょ 「なにより・・って?」
父 「あの玉は素人が触ったり動かしたりしては駄目なんだ」
まじょ 「なんで?」
父 「爆発するんだ」
まじょ 「・・・ ええ~っ!!!」
父 「いいかい、間違っても、あるいは背が伸びてもだ、決してあれに触ってはいけないよ。 約束だ」
まじょ 「・・・」
父 「約束を破って触ったりしたら、大爆発を起こすんだぞ!」
まじょ 「・・・」
父 「わかったかい!」
まじょ 「わ、わかった・・」
(こんな危険な家にはもう住めない)
まじょは、森に行く度に
自分の財産を持てるだけ持って木の上の家に運び始めた
涼しくなってきたので、毛布も2枚運び込んだ
相変わらず木の上の家でソーヤたちと眠ったが
朝になると何故か家のベッドで目を覚ますことになっていて
飛び起きるや否や、速攻森に逃げ帰る日々だった
そうこうしているうちにも爆弾はどんどん大きくなり
すでに大人の手の握りこぶしくらいには膨れ上がっていた
そのうち家に食事に戻るのも億劫になり
お日様がてっぺんを過ぎても家に帰らず
母が私を探しに度々森の奥までやって来た
まじょは用意された昼食を噛まずに食べ
また森に逃げ帰った
一日中遊びまわっているので
さすがに夕方には空腹になり家に戻るが
やはり夕食も、棚の上の銀紙を睨みながらのかき込み食べとなり
終わるや否や、夜道をまっしぐらに木の上の家に向かって走った
もう父の買ってくるチョコレートを食べるのを止めようと決心した
もっと早くそれに気づくべきだったと後悔していた
つづく