魔女の子供時代 ~危険物 Ⅱ~ | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

魔女



銀紙の玉が大きくなるのと比例するように

まじょはどんどん家に寄り付かなくなっていた



まじょは実の両親と過す時間よりはるかに多くの時間を

育ての父と信じて疑わない狼のソーヤを筆頭とした

多くの動物達とともに過ごしていた


動物たちの種類はそれこそ様々で

まじょはお腹が減った時のために

ミルクを出す雌のヤギまで森に連れ込んでいた


その他の動物は、来るもの拒まずで

みんなして、ぞろぞろと連日森を徘徊した


森はまったく私を飽きさせず

日々違う顔を見せてくれ

どこよりも安心して過せる場所だった


猫のハックルはヘビを見つける才能があった

彼が見つけたヘビたちを、まじょはしつこく観察してから穴に戻した


犬のマリーはモグラのように穴を掘る趣味があったので

何かを堀返したい時はマリーに頼んだ

すると彼女はわが意を得たりとばかりに

『もういいよ・・』 と言うまで掘り続けた


ヤギはどうやら高いところが好きなようで

何が何でもみんなより高い場所に位置しようと努めていた


毎度、木のてっぺんまで登っては降りられなくなるベリー

まじょはその度に木に登り

彼女を抱えて危なっかしく降りなければならなかった


狐のトムはいつもふざけたように跳ねていた

特に川の中では、魚を見つけては飛び掛っていたが

ただ闇雲に跳ね回るだけで、1匹の魚も獲った例がなかった


そしてソーヤは、常にまじょのそばから離れず

ただそんなみんなの様子をながめていた


まじょが生まれた時、すでに大人の若者だったソーヤ以外は

赤ん坊の頃から一緒に育った兄弟たちだ


けど、何故か動物達の方が人間のまじょより早く成長するのだ

ソーヤは、すでにまじょの保護者然としていた


ソーヤには様々なことを教わった

まじょは常にソーヤを尊敬し、また心から信頼していた



そんなある日、家での夕食の時間に

相変わらず食事をかき込むまじょに、母が尋ねた



母  「あなたはどうしてこの家に帰りたがらないの?」


まじょ 「・・・」

 

母  「おかあちゃんやおとうちゃんが嫌いになってしまったの?」


まじょ 「・・」


母  「ソーヤたちといた方が楽しいの?」


まじょ 「うん!」


母  「・・・」


まじょ 「でも・・ それだけじゃない」


母  「ほかに訳があるの?」


まじょ 「うん、このいえ、ばくはつするかもしれないから」


母  「・・・なに?」


まじょ 「このいえは、いつかばくはつする・・ 

                 まじょ、もう、もりにかえる!」


母  「ちょ、ちょっと待ちなさい!」


まじょ 「おかあちゃんも、きのうえのおうちにすんだほうがいいよ、ここ、ばくはつするから」 


母  「どうしてこの家が爆発するの」


まじょ 「ばくだんがある」


母  「なに?? ・・いったいどこに?」


まじょ 「そこの・・たなのうえ」


母  「・・ これ?」


まじょ 「そう・・  だからまじょ、かえる!」


母  「待ちなさい、もう大丈夫だから」



母はそう言うと・・

いきなり棚の上の爆弾をつかんだ


同時にまじょは狼のように後ろに大きく飛びのいた


母が爆弾を持って玄関に行きかけたところで

往診から帰って来た父と出くわした

父は母の手に爆弾がつかまれているのを見つけて


父  「君、私の苦労の塊をどうする気だ!」


と血相を変えた


母は答えず父の横を通り過ぎ

焼却炉にそれを

無造作に捨てた・・



父 「あ・・あ・ 私の血と汗の結晶が・・」


母 「あなたよりソーヤの方がよほど父親らしい事をしています!」



この時、まじょは母の偉大さを知った


この人間の女はあなどれない・・と思った