魔女
レストランを出て、カーニバルの会場に向かう事になった
気分が回復するにつれて、色々なものが目に飛び込んで来る
車、ビル、そしてたくさんの人間
カーニバル会場に近づくにつれ、人の波が多くなって・・
ま、前が見えない
人間の足しか見えない
まじょ 「おとうちゃん、き、きもちがわるい・・」
父 「またか! 仕様がないな・・じゃあ、肩車をしてあげよう」
肩車をしてもらうと、今度は果てしなく続く人間の集団が丸見えになった
(う・・ぅ・・、これも・・き・・きもちがわるい・・)
魔女は心の中で葛藤した
(したもうえも・・ どっちも、きもちちがわるい・・ どうしよう・・)
思案の挙句、目をつぶって父の頭にしがみ付き
全てに耐える事に決めた
何もかもが生まれて初めて目にするものばかりの挙句
いきなりこんな人ごみに連れて来られて
魔女の頭の中が火事ように燃え始めていた
魔女は頭の中を燃やしながら、目をしっかりつぶって耐えに耐え
会場に到着し、父の肩から降ろされた
広いテントの中に幾人もの人がいたが
先ほどまでの人ごみに比べれば、はるかに息がし易かった
父は 「やあ、ご招待ありがとう」
と言ってはいろいろな人と握手をした
そして、ある1人の人の前に行くと私に手招きをした
母が魔女の背を押した
それでも動かないでいたら
母は更に強い力で背を押た
私は足だけを前に突き出し、背中を母の手にもたれさせて
まるで壊れた人形が後ろから押し出されるように
かかとを引きずったまま、その人の前まで進まされた
父 「紹介するよ、まじょだ。 まじょ、こちらは、私の親友のアー
カイマさんだ」
アーカイマさん 「やあ、まじょ君、君の噂は聞いているよ。
こんにちは!」
まじょ 「・・・」
父 「ちゃんとご挨拶をしなさい」
母 「さあ、ご挨拶をして」
まじょ 「・・・ ウ・・ウゥゥ・ ウ・・ウオオオオ~ン!!」
父 「こ、この人は狼じゃないんだぞ!」
まじょ 「ちゅちゅちゅ・・ むみゃ~お~お~ぉ~・・・」
父 「猫でもないぞぉ・・」
まじょ 「・・・」
母 「あら、そういえば・・ 私、この子に人間同士の挨拶の仕方を教えてなかったわ!」
父 「まったく・・
人間に挨拶する時は 『こんにちは』 と言うんだよ」
まじょ 「・・・」
アーカイマさん 「ウオオオォォォォ~ン!!」
両親 「・・・???」
アーカイマさん 「この挨拶はなかなか楽しいじゃないか、これから僕とまじょ君の挨拶は狼式で行こう!」
父 「そうか、 そうしてくれると助かる・・」
アーカイマさん 「ところでまじょ君の髪は何でそんなに爆発してるんだい?」
父 「妻が縮れ毛にブラッシングしてしまったんだよ。 その後髪を濡らして治まったと思ったがいつの間にか乾いてしまったようだ・・な」
母 「嫌がってリボンを取ってしまったので、余計に炸裂して・・」
アーカイマさん 「なかなか素晴しい髪だ! さて、まじょ君は象を見に来たんだろう、さあ、早速行ってみよう!」
そう言うないなや、アーカイマさんは魔女を抱き上げテントを出た
魔女は初めて会ったアーカイマさんに動物の臭いを感じて
何故か、ひどく安心し、頭の中の火事が鎮火し始めた
象を見に行く途中で、父とアーカイマさんはこんな話をした
父 「象の様子はどうだい?」
アーカイマさん 「特に悪いところは見当たらなかったよ」
父 「そうか、それは良かった。 しかし可愛そうだな・・」
アーカイマさん 「確かに・・」
着いたところはサーカスのテントの裏手だった
象が・・ 象がいた・・
地面に降ろされた魔女はそこに立ちすくんだ
絵本で見て想像していたより、ずっと、ずっと大きい・・
すごい・・
すごいな・・
やさしそうなめ・・
魔女は象を眺め続けた
ぞうさん、こっちへおいで・・
・・・ あ・・
たいへんだ・・!
魔女は象に向かって走り出した
まっしぐらに走って行った
そして象の足の前まで行って、そこにしゃがんだ
後ろから何か声が聞こえたような気がしたが
それどころじゃなかった
次回に続きます