水玉
昨日、お化け屋敷の庭に 《涼子》 と 《ベス》 がいた
とびっきりお天気が良くて、2匹は楽しそうに遊んでいた
雑草だらけの庭をぴょんぴょん、ぴょんぴょん飛び跳ねていた
《ベス》 の長い毛には枯葉や細い木の枝がからみついている
《涼子》 がこっちへおいでよ、と言って《ベス》をぶっ倒れた物置の後ろのビワの木の方に連れて行った
そこで 《涼子》 はビワの木に登ってみせた
《ベス》 も登ろうとしたけど、ヒシッとビワの木にしがみついただけで、それ以上のことは出来ないらしく、うらめしそうな顔で 《涼子》 を見上げていた
涼子 「 《ベス》、木に登れないの?」
ベス 「・・・」
涼子 「登った事ないの?」
ベス 「ない・・」
涼子 「大丈夫、きっと登れるよ! ほら、恐い雄猫に追いかけられた事を想像してみて。 必死に逃げると木にだって何にだって登れるんだよ」
ベス 「私、追いかけられたことなんてない・・」
涼子 「そっか・・ お嬢様だもんね」
《涼子》 は何回も下りたり登ったりしながら、根気強く 《ベス》 に木登りを教えていた
少しして見に行ったら、《ベス》 が小さな鉢植えの高さ分くらい登れてた
でも、それ以上は無理みたい・・
それから2匹は鬼ごっこを始めた
最初は 《ベス》 が 《涼子》 を追いかけていたのが、いつの間にか逆になっている
《涼子》 が 《ベス》 を追いかけてビワの木の方に行った
《涼子》 が加速した!
《ベス》 は必死で逃げて、目の前にあるビワの木に飛びかかった
《涼子》 が下から追ってくるものだから、《ベス》 はそのままの勢いでビワの木を登って行った
涼子 「登れたじゃん!」
ベス 「でも恐いよ・・」
涼子 「ほんとだ、足がカタカタ震えている・・」
《ベス》 がぐらぐらしながら、必死でビワの木の枝にしがみ付いている
そのうち少し余裕が出てきたのか、あちこちを眺め始めた
2匹はずっと木の上にいたから
僕は家に帰った
そして 《涼子》 は夕べも 【ちくわ】 をくわえて出て行った
魔女がわざと台所に置きっぱなしにしたんだ・・
今日、お昼くらいまで2匹はお化け屋敷のお庭で遊んでいたけど
雨が降ってきて、アパートのお部屋に戻って行った
僕 「魔女、《ベス》 の事だけど、どうするの?」
魔女 「トミニャガさんに知らせるよ」
伐 「じゃぁ 《ベス》 は連れ戻されるのか?」
ジョン ブリアン 「せっかくふたりでたのしくあそんでいるのに・・」
魔女 「大丈夫だよ。そう簡単には連れ戻せない」
ジョン ブリアン 「なんで?」
魔女 「考えてみなよ、家に帰りたくない 《ベス》 はトミニャガさんが連れ戻しに来たらどうすると思う?」
ジョン ブリアン 「どうするの?」
魔女 「逃げ込むんだよ」
ジョン ブリアン 「うちに?!」
伐 「家に逃げ込んだら捕まっちゃうじゃないか!」
水玉 「わかった! アパートに逃げ込むんだ」
魔女 「その通り! アパートの 《涼子》 の部屋に逃げ込んだら捕まえられないって事」
伐 「どうしてよ?」
魔女 「あそこのドアには鍵がかかってるんだ。 出入り口はちょうど猫が十分入れるだけの大きさに割れたガラスの高窓だけ・・って事は、人間が入るなんて、ふっ・かっ・の・うっ」
伐 「なるほど~!」
魔女 「さて・・ トミニャガさんに電話するかなぁ」
魔女が握っている声が聞こえる機械の奥から大声が・・
「ドンガラガッチャン 」
僕にはそんな風に聞こえた
そして直ぐにトミニャガさんがやって来た
でも・・この 《ベス》 に偏った画策が
魔女の身に災いをもたらす事になるとは・・
つづく・・