水玉
昨日トミニャガさんちの 《ベス》 が家出して来て、《涼子》 がお化け屋敷の自分の家出用アパートに 《ベス》 を連れて行った
夕べ 《涼子》 はフツー顔で晩ご飯を食べていた
僕らの神経は、いつもなら特には関心を持たない 《涼子》 の行動に集中していた
その後、《涼子》 はちょっとくつろぐふりをして・・
テレビを観ている僕らを横目でチラチラ見ながらそっと部屋を出て行った
《涼子》 が外に出たら
偵察隊長の僕が、後をつけて様子を見に行く事になっていた
魔女 「 《水玉》、頼む!」
僕 「何で僕が偵察隊長なの?! 《伐》 だって 《ジンジン》 だっていいじゃん」
魔女 「 《伐》 は途中に食べ物が落ちてたりしたら本来の目的を必ず忘れるし、《ジンジン》 は分単位で魔女が恋しくなっちゃうから偵察に適してないんだよ」
僕がしぶしぶ様子を見に行ってる間に、魔女たちは勝手に 【家出猫ベス対策本部】 たらを立ち上げていた
僕 「行って来たよ、《涼子》 はアパートのいつもの部屋に入って行った」
魔女 「 《ベス》 は? そこにいた?」
僕 「わかんないよ・・ だって 《涼子》 ってば、高い窓から出入りしてるじゃん。 僕が窓に飛び乗ったら気づかれちゃうじゃない」
魔女 「そっかぁ・・ そうだよな」
ユリぼうず 「魔女だったら立って窓から覗くだけ」
僕 「そうだよ!《ユリぼうず》 の言う通りだ、魔女が行けばいいんだよ」
ユリぼうず 「もう夜だから部屋の中は真っ暗で見えない。魔女が行っても無駄だからやっぱ夜目が利く 《水玉》 が行く・・」
僕 「なんだよ、なら最初っからそんな無駄な話するなよ!」
ジンジン 「静かに・・ 《涼子》 が戻って来たっ」
《涼子》 が部屋に入って来た
自分では普通にしているつもりかもしれないけれど
かなりキョドってる
部屋の中をうろうろして何かを探しているみたい・・
僕らは気づかないフリをしてテレビを観ていた
けど、実際は神経は 《涼子》 の行動に集中していて
テレビなんてだれもまともに観てはおらず・・
ん?
(あいつ、何やってんだよ!)
こんな場合に 《ジョン ブリアン》 が・・ 監視するように《涼子》の後をピッタリくっついて歩いている・・
そして、魔女に羽交い絞めにされ
暴れている
伐 「魔女、《涼子》 が急いで出てったぞ! テーブルの上のお菓子を一個くわえてたぞ」
魔女 「だってあのクッキー、一個一個袋に入ってるから匂いはしないよ」
僕 「相手は 《涼子》 だよ!袋を見ただけで中身が食べ物か、そうでない物か分かるやつなんだよ」
ジンジン 「魔女、クッキーが減ってるのにまだ気づいてないの?魔女が寝た後、《涼子》 が毎晩一個ずつ食べてるんだよ」
魔女 「そぉなの?! で、今日は、まだ寝てないのに食べるの?」
伐 「魔女って特別頭悪いなぁ・・ 《涼子》 はそんな危ない橋渡るようなやつじゃないよ。 きっと 《ベス》 が腹空かしてんじゃないの?」
魔女 「そうか・・ ・・《水玉》、気づかれてもいいから様子を見て来て!」
またまた僕がアパートに向かった
僕は一回大きく息をしてから、思い切ってその部屋の高窓に飛び乗った
大きく息をしておいて良かった
僕はその後、息を呑んじゃったから
窓から部屋の中に飛び降りたとたん
大きな動物が赤い口を目一杯開けて僕を威嚇したんだ
涼子 「 《水玉》!」
ベス 「なんだ、《水玉》 か・・」
僕 「ああ、驚いた! 《ベス》 って凄い顔だね!」
ベス 「失礼な!」
涼子 「ここにいるのがなんでわかったの?」
僕 「なんとなく・・」
ベス 「ちょっと、《水玉》、聞いてよ! この子、私が 『お腹減った』 って言ったら、何持って来たと思う? クッキーよ!」
涼子 「クッキー、嫌いなの?」
ベス 「どうやって食べるのよ! 袋に入ってるじゃないの」
涼子 「私、いつも破いて食べてるからやってあげる!
ほら、破けたよ」
ベス 「ヤダ! よだれ付いてる」
涼子 「でも、おいしいよ」
ベス 「お刺身がいい!」
涼子 「うちにはそんなものないよ・・」
ベス 「なによ、自分だけ晩ご飯食べて来たくせに!」
涼子 「・・・」
僕 「 《ベス》、いい加減にしろ! 《涼子》 はそのクッキーを、ドキドキしながら一生懸命持って来たんだぞ。 そんなに刺身が食べたきゃ家に帰れよ!」
ベス 「・・・」
涼子 「いいんだよ 《水玉》、 《ベス》 は私と暮らすんだから」
僕 「トミニャガさん、探してるぞ。 魔女、困ってるぞ。
どうするんだ」
ベス 「私、帰らないから 」
これが夕べの話・・
その後は、また次回ね