涼子
私はもともとノラ出身で
私の母さんは商店街のにぎやかな中を
住みやすい所を探しては転々としていた
母さんがいなくなるまでは、私も一緒だった
それは家と家との間の狭い場所だったり
室外機の上だったり
狭い隙間だったり
店が閉まった後の裏口のわきの段ボールの中だったり・・
その頃に比べたら
ここのアパート暮らしは最高だ
意地悪な人間はいないし
だいいち静かだし
好きな時に出たり入ったり出来る
寒さも雨も、しのげるし
ただひとつ難を言えば、お部屋が広い事
それだけはちょっと落ち着かないのよね
トトン・ トタッ!
私 「ん? だれ!」
水玉 「僕だよ、《水玉》 だよ」
私 「ここで、何してるの?」
水玉 「遊びに来た」
私 「ホント! 何もないけどゆっくりしてって、そこの座布団に乗っかっていいからね」
水玉 「うん、それにしても広い部屋だね・・」
私 「そこがちょっと・・ でもここには人間もよそのノラ猫も来ないからビクビクしながら隠れて眠ったりしなくてもいいのよ!」
水玉 「別に僕らの家だって隠れてなくていいんじゃん」
私 「そうなんだけど・・ 昔の自由な暮らしが忘れられなくて・・」
水玉 「自由に暮らして、でもご飯だけはもらいに来るんだろ、それはちょっと都合が良すぎるんじゃないか」
私 「だって・・」
ドテッ・ ドタン!
私 「誰?」
伐 「俺だよ」
水玉 「何だ、《伐》 も来たの?」
伐 「なんだよ、水玉もいたのか。 いや、ちょっと・・どんなかなぁ、って遊びの途中で寄ってみてやった」
私 「 《伐》 もゆっくりしていってね! そうだ、そこのカーテン、よじ登るとおもしろいよ」
伐 「おまえ、ひとりでそんなことやって遊んでるのか?」
私 「うん・・ でもひとりでやると、あんまおもしろくない・・」
伐 「うひゃ~!! こりゃおもしろいな、家でカーテン登りやったら叱られるもんな!」
水玉 「 《伐》 がぶら下がると、カーテンが取れちゃうよ!」
タタッ・ タトン!
私 「あっ、今度は 《ジンジン》 だ!」
ジンジン 「わっ、びっくりした!《伐》 ってば、なんでそんな所にぶら下がってるんだ?」
伐 「おまえもやってみろよ、カーテン登りはメチャメチャおもしろいぞ、癖になりそうだぞ・・こりゃ」
タトッ・・
私 「 《ジョン ブリアン》 !」
ジョン ブリアン 「・・・」
伐 「 《ジョン ブリアン》 も来たのか?」
タッテッ・・
私 「戻ってっちゃった・・」
それからしばらく4匹で遊んだり
みんなで座布団にてんこもりになってお昼寝したりして
すごく楽しかった
でも、夕方になって・・
みんなは家に帰るって
私はみんなと一緒にアパートを出て
家の前までついてった
そして玄関に続く階段の下でみんなを見送った
魔女が出てきたから今日の事を話した
帰り道はちょっぴり淋しかった
明日はみんなとお外で遊べるかな、って思った