ある雄猫の物語 Ⅶ ~ 離散 ~ | まじょねこ日記

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魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

魔女


ドクロ






親子は揃って新年を迎えた


お正月に少しばかりき気の利いたものを彼らに与えた

子供たちは大喜びで食べていたが

相変わらず 《なぉなぉ》 は食べ物の一切を口にしなかった

ただ、子供たちが嬉しそうな様子を傍らで眺めていただけで・・



子供たちと姉の黒猫は毛艶も良く、痩せてもおらず健康そうだった

しかし、《なぉなぉ》 と母親の三毛猫には、初めて会った時の面影は既になくなっていた



相変わらず 《なぉなぉ》 は傷だらけで、彼に守られている母親(妻)には傷はないものの疲れ果てた様子が窺えた




彼らが姿を見せない日が続いた

その事に魔女たちは日々不安をつのらせてゆき

終いにはあちこち歩き回って彼らの姿を探した




1月の終わり

《なぉなぉ》 が姿を現した

黒い姉も、子供たちも一緒だった

しかし・・母親の姿はなかった



より一段と痩せて憔悴しきった 《なぉなぉ》 が魔女の前にいた



母親がどうしたのかを・・魔女は知らない

ただ・・

夫と子供のそばを片時も離れなかったその母親が

どうなったのかは、想像に難くない




それから 《なぉなぉ》 は1人で必死に子供たちを守った

しかし、母親がいなくなってから

《なぉなぉ》 の努力の甲斐もなく

子供たちは散り散りになっていった




我が家にやって来るのは、《なぉなぉ》 の他に

黒い姉と、《なぉなぉ》 そっくりの毛色を持つ 《なぉに》 と名づけた男の子だけなっていた




《クロベエ》 は相変わらず気が向くとやって来た

彼は気ままな一人暮らしだったので元気ではいたが

艶やかだった毛並みが擦り切れた筵のような手触りになっており

皮の首輪は既にちぎれてどこかへと置き去られていた



《なぉなぉ》 は傷だらけの体で喧嘩を繰り返していた

それは以前のように家族を守るためのそれとはかけ離れて

何かに憑かれたかのように、

そしてまた、自分を追い詰めるかのようにも感じられた



彼は時折、寂しさからなのか

微かに残っている甘えの本能からなのか

黒い雌猫や 《なぉに》 がいない時に我が家へやって来て

魔女の膝で長い時間抱きしめられる時がある



ただそれだけで

他には何も求めなかったけれど・・



                次回に・・