ある雄猫の物語 Ⅷ ~ 別れ ~ | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

魔女


ドクロ



この年は幾度も雪が降った



魔女たちはその度に彼らの心配をした




2月に入った頃から

《なぉなぉ》 は、めったに姿を見せなくなっていた

彼は度重なる喧嘩によりかかってしまった感染症を

家族に染す事の無いよう、自らを隔離した

ある朝、魔女が目覚めると

窓の真下に雪を被り横倒しになった段ボールがあった

その箱は家の壁にピタリと付いていた



窓を開ける音に気づいて

中から 《ナオニ》 と 《姉の黒猫》 が出て来た


彼らは 《なぉなぉ》 の教えを守り、暮らしていた

散り散りにはなってしまったものの

あの時、生きる術を学習した兄弟達も

きっとこのようにして暮らしている事だろう




その日は大雪が降っていた

魔女は朝から玄関の前にいた

悲しい予感がして・・ 

ずっと外を見ていた



夕刻

深い雪を踏みしめて 《なぉなぉ》 がやって来た

魔女は彼に玄関の中に入るように促した

閉めるのをとひどく嫌がったので、扉は開けたままにしておいた



《なぉなぉ》 が初めて家の中に入った日



そして彼が初めて自ら魔女の膝に乗った日



《なぉなぉ》 の軽さに思わず涙がこぼれた

傷口からは血が滲み

体中の毛が抜け落ち、ざらざらの皮膚が顕わになっていた




魔女は体を丸めて膝の上の 《なぉなぉ》 を暖めた

いつまでも暖め続けた

そして彼はしばらくそこで眠った




《なぉなぉ》 はゆっくりと目を覚まし・・ 魔女に向かって鳴いた

その声だけは昔と変わらず可愛らしかった




そして、膝から降り・・

玄関の入り口へと向かった

《なぉなぉ》 は躊躇わず、振り返る事もせず、雪の中へと去って行った

どのような姿になったとしても、彼は 【猫としての威厳】 に溢れていた




涙が止まらない


        もう・・二度と会うことはないのだ