ある雄猫の物語 Ⅳ | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

魔女 


ドクロ


厳しい冬が終わろうとしていた

〈なぉなぉ〉 親子は何とか寒さを乗り切った



子供たちは始めての春を感じ取ってふざけ合ったりし始めた




冬のさ中、〈クロベエ〉 が姿を消した

魔女はかなりそれを気にした

が、その懸念はほどなく解消された



誰かの好意的通報により、実家に連れ戻されていたのだ

魔女はホッとする気持ちと、《クロベエ》 の言葉との狭間で複雑な心境だった



どっちにころんでも正解がない

ただモヤモヤとした気持ちが心を支配するばかりだった




春に心が浮き立つのは人間ばかりではない

むしろ寒い冬に耐えた者達の方が、待ちわびる春にいっそうの喜びを感じる

たぶん、人間も昔は今より深く春を感じる事が出来ていたはずだ




ある日、《なぉなぉ》 一家と〈春みっけ〉の遊びをやっていると

外階段の踊り場に・・・

《クロベエ》 の姿を見つけた

それから私たちは 《クロベエ》 も一緒に〈春みっけ〉をした



楽しい日々だった




しかし・・

夜になると、度々雄猫たちが 《なぉなぉ》 一家を襲った



《なぉなぉ》 は家族を守る為の喧嘩に明け暮れ、生傷が絶えなくなってゆく

彼はこの場所に住み続ける事に危険を感じ始めていた



夏になる前に彼は家族を率いてどこかへ越して行った



それでも毎日一家でやって来ては魔女たちと楽しい時間を過した

その後、子供たちは一人立ちしたようで

1匹の黒い雌猫を残し、他の子供たちは姿を消した





そして・・

夏の終わりに、また新しい小さな命たちが誕生した

再び賑やかになった 《なぉなぉ》 一家

母親と、残った黒い雌猫は子猫たちの世話をし

《なぉなぉ》 は懸命に彼らを守った




猫の世界の移り変わりはめまぐるしく

次から次へと新たに若い雄猫が現れる

秋になると 《なぉなぉ》 の傷あとが目立つようになっていた



薬を塗ってやりようやく治りかけたと思ってもまた喧嘩を繰り返す

だからといって彼だけを家族から引き離すのは不可能だった

彼は2度と人間には飼わる事はないだろうし

ましてや 《なぉなぉ》 のいない家族の先行きは目に見えていた




季節は巡ってまた冬がやって来た

《なぉなぉ》 にひと頃の勢いが失せ始めていた


《クロベエ》は相変わらずやって来てはひと時を過してどこへともなく去ってゆく

彼の首輪に付けられたプレートの文字は既に消えかけていた




暮れのある日

魔女たちは庭先で焚き火をしていた

《なぉなぉ》 一家もそばで暖をとっており

子供たちは無邪気に遊んでいた



そんな中、《なぉなぉ》 が驚くべき行動をとった



                        

                       次回に続く