黄金の髪に深緑の瞳の歌姫。

冰國の二人の王から託された
ひとつの生命体。
腕の中の小さな温もりが
彼女の全てだった。

歌姫は小さな王の守護者だった。

竜の血を引く白銀の髪。
王者の血を引く蒼い瞳。

人間と竜の間に揺れる不安定な力。

歌姫は二つの力を封印した。

受け継いだ奇異なる力を封じられ
眠る赤子の髪は銀糸に
二対の瞳は蒼と銀の斑となった。

歌姫の死が訪れるその瞬間まで
封印は守られた。


氷の大地にて生まれた竜の落とし子は
真紅の双眸に白銀の髪、背には二対の皮翼が生えていた。

人間の狩りにより失われた隻眼は
国宝である蒼珠を填めた義眼となり、
引き裂かれた竜の皮翼は
背から溢れ出る鮮血により
真紅の翼へと生まれ変わった。

人間に忠義を誓った竜の末裔。
その子々孫々に、
竜の血が引き継がれている。
――――×××――――

其処は、暗く、冷たく、生有るモノは存在しない世界。
漆黒の闇が、ただ一面に広がっている。

一面の闇に、血よりも深く鮮やかな二対の赤い宝珠が在る。
時折煌めいては、真紅の輝きを放ち、
その飛び火は赤、紫、青、緑、橙、黄、
そして、再び赤へと、その色を変え続ける。

宝珠には、ひとつの生命が映っていた。