『「CIQ体制の強化」について』 | まいたち昇冶オフィシャルブログ Powered by Ameba

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『まいたち昇治の活動報告』第44回 

 政府は5月20日、4月に日本を訪れた外国人旅行者数が前年同月より43.3%多い176万4,700人だったと発表しました。政府が掲げる2020年までに年間2,000万人という目標を達成するには月平均約167万人受け入れる計算となるので、4月は単月で初めて目標をクリアしたことになります。訪日外国人年間2,000万人越えは、意外と早くやってきそうです。今回は、政府の「CIQ体制の強化」に関する取組状況について説明します。

● 多省庁が関与する「CIQ体制の強化」

 CIQ体制とは、税関(custom)、入国管理(immigration)、検疫(quarantine)の三つの英語の頭文字を取った略称で、外国人が日本に入国する際に受けなければならない入国審査手続の体制のことです。この体制には、三つの業務を担当する専門職員だけでなく、入国審査が実際に行われる施設、つまり、外国人旅行者が到着する空港や港のターミナルビル等の施設も含まれます。そのため、CIQ体制に関わる省庁は、法務省(入国管理局)、財務省(関税局)、厚生労働省(医薬食品局)、農林水産省(動植物検疫所)、国土交通省(航空局、港湾局)、そして観光庁と、多数にわたります。

 「CIQ体制の強化」の目的は、「2020年までに訪日外国人年間2,000万人受け入れ」に適切に対応できる体制を整備することにあります。そのため、政府が策定した観光立国実現に向けたアクション・プログラム2014では、以下の二つの目標を定めています。

(1) CIQに係る予算・定員の充実を図り、必要な物的・人的体制の整備を進め、2016年度までに空港での入国審査に要する最長待ち時間を20分以下に短縮することを目指す。

(2) 地方空港における外国人旅行者の受入に必要となるCIQ体制を確保。特に、入国手続に要する待ち時間が著しく長期化している地方空港や、近隣官署からの応援に支障がある地方空港につき、待ち時間の短縮等を図るため、緊急に所要の体制整備を実施。


 以下に、H26年度以降の主な取組状況を説明しますが、その前に外国人旅行者が主にどの空港・港湾から入国しているか、その内訳を紹介します。

● 4大空港が74%を占める外国人の受入れ

 法務省の毎月港別外国人数からの推計値によると、H26年(2014年)の入国外国人は1,415万人で、空港・港湾の利用内訳は、以下のとおりで成田、関空、羽田、中部の4空港が全体のほぼ4分の3を占めています。

成田空港 493.2万人(35%)
関西空港 317.0万人(22%)
羽田空港 175.2万人(12%)
中部空港  69.9万人( 5%)
その他地方空港 295.7万人(21%)
港湾  64.0万人( 5%)


 地方空港のなかでは、福岡空港(88.4万人)、新千歳空港(66.2万人)、那覇空港(65.3万人)が中部空港と遜色がない人数の外国人の入国を受け入れています。なお、港湾は国際クルーズ船等の寄港にともなう外国人の上陸です。

● 出入国管理体制の整備

 入国審査待ち時間短縮のために、①人的強化、②ハード面の拡充、③運用・ソフト面の改善が図られてきました。①ではH26年7月に入国審査官30人が10か所の地方空港へ緊急増員(米子、鳥取は含まれず)され、H27年度も202人の増員が認められました(現在の入国審査官数は2,379人)。②ではH26年度に緊急増員された地方空港等で審査ブースが25増設され、自動化ゲートも40台から70台へ増設されました。H27年度も羽田、新千歳、那覇ほか11空港において審査ブースが増設され、一度に審査できるキャパシティー(能力)の増強が図られます。そして、③では次のような取組が行われています。

a) 審査機動班の設置(地方空港等への審査応援をより効率的に行うため、福岡、羽田、千歳に設置)

b) 通訳や審査ブースコンシェルジュの配置(EDカードの確認・記入補助、バイオ読取装置の手順案内・補助、空いている審査ブースへの誘導の実施など)

c) 事前旅客情報システムの効果的な活用(航空機の到着前に乗員・乗客名簿の提出を受けることで、出入国管理上問題のない外国人には迅速な手続きが可能に)


 こうした入国審査体制の強化で、審査待ち時間はどの程度改善したでしょうか。

 緊急増員が図られた10か所の地方空港では、最長審査待ち時間が増員前(H25年8月~26年3月)の平均40分から増員後(H26年8月~27年3月)の平均31分へ9分間短縮しました。なお、緊急増員の対象外だった米子空港では、H27年1月~3月の外国人入国者数は前年同期の2.5倍に急増したため、最長審査待ち時間は平均20分から平均33分へ悪化しています。引き続き、地方空港の審査体制の強化を求めてまいります。

 一方、外国人入国者数が多い4大空港では、H27年の最長待ち時間(1月から3月の平均値)は、成田20分(前年比5分短縮)、羽田24分(同1分増)、中部22分(同4分短縮)と関空34分(同7分増)とで対照的な結果となっています。特に関空は、外国人入国者数が急増中で、しかも特定の時間帯に到着便が集中するため、すべての審査ブースで対応しても対応しきれない事態がたまに発生しており、こうした問題への対処も急がれます。

● 財務省や国交省等の取組状況

 税関や検疫所の人員は以下のとおり増員されました。

【税 関】
H26年度 57人増(うち、43人は危険ドラッグに係る緊急増員)
H27年度146人増

【検疫所】
H26年度 検疫官30人増(エボラ出血熱などの検疫体制強化のため、21の地方空港へ配置。米子空港も増員)
H27年度 検疫官24人増(輸入食品の審査・検査体制の強化も)

【動植物検疫】
H26年度 家畜防疫官19人増、植物防疫官22人増
H27年度 家畜防疫官11人増、植物防疫官18人増
(検疫探知犬 H26年度6頭増、H27年度2頭増)

 人的体制の強化のほかに、以下の取組も動き始めています。

【ファーストレーンの設置(国土交通省)】
諸外国の主要空港で設置されているVIP等むけの一般旅客の動線とは異なるサービスの提供のことで、H27年度中に成田空港と関西空港において設置される予定です。

【地方ブロック別連絡会(国土交通省/観光庁)】
地方の受入れ体制の充実を図るため、2月から地方ブロック別連絡会を立ち上げ、6月中に対応策の中間とりまとめを行う予定。
観光庁が主導し、各ブロックの地方運輸局、地方整備局、地方航空局や都道府県・政令市、関係事業者・団体等(交通、旅行、宿泊等)を構成員とする。
a)CIQ施設の拡張・改良、b)貸切バス、宿泊施設等の供給の確保、c)観光バス駐車スペースの確保、d)道の駅、みなとオアシス等の観光案内機能の向上、などの現状と課題を把握し、必要な手立てを迅速に講じることを目的とする。

とくにCIQ施設の混雑への対応が急務です。地方空港のなかには出国待合スペースの一部を入国審査場に転換する施設改良が始まっていますが、ターミナルビル自体の容量が限界の場合もあり、ターミナルビルの建て替えも視野に入れる必要があります。

【輸出植物検疫カウンターの設置(農林水産省)】
これは入国管理手続とは逆方向の、輸出検査手続の利便性を向上させる取組です。訪日旅行者が国産農産物をお土産として持ち帰るのを促進していく狙いがあります。
これまで、農産物を手荷物として外国に持ち出す場合は、輸出検査のために植物防疫所まで行かなければなりませんでしたが、今年4月から、空港の旅客ターミナルに「輸出植物検疫カウンター」が新設され、このカウンターでも輸出検査及び植物検疫証明書の発行が行われるようになりました。輸出植物検疫カウンターは5月末までに、成田、福岡、羽田、関空の4空港に設置されます。

● クルーズ船の乗客に対する審査体制

 次に、国際クルーズ船の乗客に対する審査体制について説明します。法務省・入国管理局はH24年度以降、大型クルーズ船の日本寄港の増加に対応するため、次の対策を順次取ってきました。

*応援派遣体制の増強:
H25年度に福岡入管、H26年度に東京入管の派遣要員を増員

*「船舶観光上陸許可」制度の導入:
簡易な手続で一時的な上陸を認める制度で、H27年1月から運用を開始
乗客1,000人以上の船舶が対象


 その結果、H26年には福岡入管から169回(延べ1,559人)、東京入管から35回(延べ115人)、応援班がクルーズ船寄港地に派遣されました。入国審査時間について、船舶観光上陸許可制導入前(H26年)と導入後(H27年1月~3月)の審査時間を比較すると、151分から90分へ改善されています。この数値は大型クルーズ船の寄港が最も多い博多港の平均審査時間です。なお、境港には今年1月~4月は大型クルーズ船の寄港がなく、簡易な手続の導入前になりますが、審査に117分(H26年10月23日入港;乗客数3,530人)かかっていました。

 クルーズ船は2,000~3,000人の乗客が下船するので、海外でも審査に相当の時間を要します。香港の大手クルーズ船総代理店の聞き取り調査によると、クルーズ船の入国審査時間は、シンガポールで105~135分、韓国で90分、香港は海外臨船の場合50分、ない場合は180分(海外臨船とは、事前に審査官が乗船し船上で審査すること)とのことです。アジアのライバル港湾と比較して、見劣りしない水準になりつつあると言えるでしょう。

● 自民党の取組状況

 このようにCIQ体制の強化は、各省庁で着実に動き始めましたが、新しい問題も生じています。それは、訪日外国人数のすう勢と各省庁の増員計画等のギャップです。喜ばしい誤算とも言えますが、訪日外国人数は極めて好調な伸びを見せており、この傾向が続くと、2020年を待たずに訪日外国人観光客数2,000万人越えが実現しそうです。一方、各省庁の増員計画は5年後(2020年)の2,000万人到達を前提に、必要となる人数を5年間に分けて“計画的に”増員することになっています。このままでは、予想以上の訪日外国人数の上振れにスピーディーに対応できなくなってしまいます。

 そこで、自民党においては、CIQ体制の強化をこれまで以上に「攻め」の姿勢とスピード感をもって徹底するよう、政府に対して働きかけています。

 党内には、私もメンバーである「CIQ体制の抜本的強化を図る議員の会」(会長:石破茂衆議院議員)や政務調査会の「観光立国調査会」(会長:山本幸三衆議院議員)があります。観光立国調査会は5月21日の会合で、①空港・港湾は、訪日外国人旅行者に対し、訪日時の第一印象を決定づける、②外国人旅行者が迅速かつ円滑に、また、快適に出入国できるよう措置することは極めて重要な課題である、との認識のもと、以下の内容の緊急決議を行いました。6月初旬に菅官房長官と関係4大臣へ申し入れる予定になっています。

1. 地方空港への国際チャーター便の就航や国際クルーズ船の寄港、一時的に発生する季節的需要等に対応するため、CIQの「機動的体制」を構築すること

2. 訪日外国人旅行者の円滑な上陸審査のため、外国の空港に入国審査官を派遣して現地で事前チェックを行うプレクリアランスの実現を図ること

3. 出入国時の混雑緩和のため、出入国審査スペース、チェックインカウンター、保安検査レーンの増設・拡張などを図ること

4. 上記1~3に関連した予算・定員の充実等を図り、必要な物的・人的体制の整備を進めること


 米子空港、鳥取空港、そして、境港や鳥取港など、地方の空港・港湾におけるCIQ体制が迅速に拡充整備されるよう、引き続き議連や調査会活動等を通じて働きかけてまいります。