『日朝合意から1年』 | まいたち昇冶オフィシャルブログ Powered by Ameba

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『まいたち昇治の活動報告』第45回 

 6月7日の日曜日、自民党青年部・青年局の全国一斉街頭行動で、鳥取県西部のアスパル日吉津と中部のハワイ夢マートで、「北朝鮮による拉致問題」と「憲法改正」を主なテーマとして街頭演説を行いました。今回は、日朝合意から1年経つ現状やこの間の日朝間の動き等について説明します。

● 日朝合意の内容

 北朝鮮の国営メディアである朝鮮中央通信は4月2日、日本政府による①国連での人権問題の提起、②朝鮮総連議長の家宅捜索を理由に、政府間対話を行うことができなくなっていると、日本側に抗議してきました。

 相変わらず北朝鮮は何を考え、どういう行動を起こしてくるか予測困難な独裁国で、抗議の内容は理解に苦しみます。一体どういう経緯でこういう事態に至ってしまったのか。昨年の日朝合意から現在までの両国の動きを振り返ってみたいと思いますが、その前に日朝合意についてもう一度、確認します。

 昨年5月26~28日にスウェーデンのストックホルムで日朝政府間協議が開かれ、29日に「北朝鮮によるすべての日本人に関する調査に関する合意文書」(以下、「合意文書」と略す)が発表されました。合意文書は前文、北朝鮮側の実行項目、日本側の実行項目から構成されており、主な内容は各々、以下のとおりです。

〔前文〕
・北朝鮮が「従来の立場はあるものの、全ての日本人に関する調査を包括的かつ全面的に実施」
・北朝鮮が「最終的に、日本人に関する全ての問題を解決する意思を表明」

〔北朝鮮側〕
・日本人の遺骨及び墓地、残留日本人、いわゆる日本人配偶者、拉致被害者及び行方不明者を含む全ての日本人に関する調査を包括的かつ全面的に実施
・(全ての機関を対象とした調査を行うことのできる)特別権限が付与された特別調査委員会を立ち上げる

〔日本側〕
・日朝平壌宣言に則って、不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、国交正常化を実現する意思を改めて表明
・北朝鮮側が包括的調査のために特別調査委員会を立ち上げ、調査を開始する時点で、制裁措置を一部解除
・適切な時期に、北朝鮮に対する人道支援を実施することを検討


● 日朝合意からの1年の動き

 合意文書は、日本側が一貫して主張してきた、「行動対行動」の原則に従っており、合意文書の発表以降、事態は次のように動き始めます。

(平成26年)
 *7月1日 北京で日朝政府間協議が開催。北朝鮮が特別調査委員会の組織、構成、責任者等を説明
 *7月4日 北朝鮮が特別調査委員会を設置。日本独自で課している制裁措置を一部解除。①人的往来の規制措置(全面解除)、②送金報告等の規制措置、③人道目的の北朝鮮籍船舶の入港(万景峰号を除く)


 7月初旬頃までは、北朝鮮による調査内容の最初の通報は、「2014年の夏の終わりから秋の初め頃に行うことが望ましい」との認識が日朝間で共有されていました。

 しかし通報がないまま夏は過ぎ、9月中旬以降、事態は膠着化し、拉致被害者との再会を心待ちにしてきた家族らを失望させました。

 *9月18日 北朝鮮から「調査は全体で1年程度を目標としており、現時点でこの段階を超えた説明はできない」と日本側へ伝達。
 *9月29日 瀋陽で日朝外交当局間会合が開催。北朝鮮側は「平壌の特別調査委員会と面談を行えば、より明確に聴取できる」と発言

 *10月20日 日本政府、政府担当者を平壌に派遣することを決定
 *10月28~29日 平壌にて特別調査委員会との協議が開催。特別調査委員会が「過去の調査結果にこだわらず調査を深めるとの方針」や「拉致被害者の調査状況」等について日本側に説明

 特別調査委員会との協議を踏まえた当時の日本政府の反応は、「調査報告は常識的には年内だろう」というものでした。しかし大変遺憾なことに年明け後も通報はなく、冒頭に述べたとおり、4月2日に朝鮮中央通信が一方的に通知文をよこしたのです。

● 日本政府の活動

 北朝鮮の対応は我々の期待を裏切り続けていますが、この1年間、日本政府はなにもせずに、ただ待っていたわけではありません。この点、成果が出ていないだけに歯がゆい状況ですが、政府は様々な手段を駆使して北朝鮮にさらなる圧力や揺さぶりをかけ続けてきました。その活動は、概ね次の4つに分けられます。

 第一に、日本独自の制裁措置を引き続き維持していることです。政府は国連安保理決議に基づく制裁に加え、本年3月、北朝鮮籍船舶の入港禁止措置及び北朝鮮との輸出入禁止措置の2年間延長を決定したところです。また、昨年7月に一部解除された制裁措置の再強化については、北朝鮮側から前向きな、具体的な行動を引き出すうえで何が最も効果的かという観点から、絶えず検討を行っています。

 ところで、米国の北朝鮮事情を掲載するウエブサイトに、北朝鮮船籍の貨物船が本年3月に境港港に入港したとの記事が掲載されました。わが国が特定船舶入港禁止法を違反したかのような報道ぶりでしたが、入港したわけではなく、事実関係は以下のとおりです。

・3月9日午後3時ころ、隠岐諸島の南西を航行中の北朝鮮籍貨物船から、海上保安庁に、海上荒天のため“緊急入域”したいとの通報かあった。
・海上保安庁は、当時の海上模様やその後の気象、海象予報を勘案のうえ、人道上の観点から、鳥取県美保湾への“緊急入域”を認め、同船は沖合で錨泊した。
・海上保安庁が立入検査を行ったが、特異事象は確認されなかった。
・本件は、国交省・海上保安庁が内閣官房や外務省等の関係省庁と緊密に連携し、情報の共有、対応の検討などを行ったうえで対応した。


 第二に、国連など国際機関との連携を強めていることです。昨年12月、国連総会において北朝鮮人権状況決議が、賛成国116カ国、反対国20カ国という圧倒的多数で可決されました。同決議では、北朝鮮の状況の国際刑事裁判所への付託の検討等を通じ、安保理が適切な行動をとることが促されており、これまでより強い内容となっています。その後、安保理において拉致問題を含む北朝鮮の状況が包括的に議論されています。さらに、本年3月には、国連人権委員会理事会において、日本とEUの共同提出により、安保理が拉致問題に継続的かつ積極的に関与することを期待する北朝鮮人権決議が採択されるなど、国際社会でも機運を高める努力が継続的になされています。

 第三に、わが国と北朝鮮以外の第3国に、拉致問題に関して改めてより積極的な関与、協力を求めていることです。具体的に、日朝双方と国交があり、平壌に公館等をおいている国は、アジアではモンゴル、ベトナム、インドネシア、欧州ではスウェーデン、チェコ、スイス、そして南米ではブラジルが挙げられます。これまでもモンゴルやスウェーデンは交渉等の場所で使われました。こうした諸外国との連携を通じた北朝鮮への働きかけは、大変有意義だと考えます。

 そして、最後に、安倍総理が各国との首脳会談の場等、あらゆる機会を捉えて拉致問題について提起しておられていることを忘れてはなりません。政府トップが最重要課題として訴え続けている政治メッセージの重みを理解して頂きたいと思います。現状は、事務レベルでの折衝を超える段階ではありませんが、いずれは北朝鮮側の最高幹部との政治レベルでの折衝が不可欠となります。いつでも国際世論を味方にできるよう、「全ての拉致被害者の安全を確保し、即時帰国させる」との揺るぎない主張を国際社会に発信し続けることが重要です。

● 不透明かつ予断を許さない北朝鮮内部の動向

 ところで、北朝鮮内部の状況はどうでしょうか。北朝鮮は10月に朝鮮労働党創建70年という大きな節目を迎えます。最高指導者の金正恩氏にとって、日本は簡単に捨てることができるカードではないはずです。北朝鮮に関する情報は相変わらず限られており、その内容は不透明・不確実です。内部の動向を把握・評価するのは非常に難しく、予断は禁物ですが、最近の動静から、以下のような北朝鮮の姿が垣間見えます。

+米韓合同軍事演習が始まった3月2日に弾道ミサイルを発射。
 毎年3月と8月頃に実施される米韓合同軍事演習に反発し、昨年も弾道ミサイル発射等の挑発的言動を繰り返してきましたが、今年も挑発的姿勢は変わりません。

+ロシアとの政府関係者の往来が増加するものの、金正恩氏は訪ロせず。
 金正恩国防委第一委員長は、ロシア政府から5月9日の対独戦勝利70周年式典に招待されましたが、結局出席しませんでした。露朝間貿易は前年比約4割増の急増(2013年)でしたが、北朝鮮の貿易全体に占める割合は約1%に過ぎません。一方、中朝貿易も活発で、貿易全体の約77%を占めています。中朝関係が死活的に重要なことは依然として変わりません。

+金正恩国防委第一委員長を中心とした独裁体制であるものの、幹部の粛清が続く。
 5月13日、韓国国家情報院は国会で「玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)人民武力大臣が4月30日に反逆罪で処刑された」と報告(北朝鮮では報道なし)しました。玄人民武力大臣は、軍のナンバーツーで金正恩氏の側近とも言われ、昨年9月に国防委員会委員に就任したばかりです。また、4月には朴道春(パク・ドチュン)党政治局員が国防委員会委員を解任されています。

 こうした様々な動きがありますが、北朝鮮内部の情勢が不安定化しているという具体的な情報を政府が得ているわけではありません。特別調査委員会の調査開始から1年となる来月、北朝鮮から誠意ある回答が本当になされるのか不透明ですが、政府は、引き続き大きな関心をもって、情報収集並びに分析をしっかりやっていく必要があります。

● オール・ジャパンでの取組が大事 

 拉致問題に対する今後の対応について、「対話と圧力」、あるいは「行動対行動」という、日本の基本原則はまったく変わりません。現状では、特別調査委員会に強く通報を求めつつ、政府は、状況を打開していくために再度圧力を高めていくことも選択肢に含めて取り組んでいく必要があると思います。

 そして、北朝鮮側の前向きな態度を引き出すには、何より、「我々はオール・ジャパンで、政府も民間も一枚岩で取り組んでいるぞ」、「拉致問題の解決なくして北朝鮮の将来なし」という強いメッセージとともに、国際社会全体からの圧力が不可欠です。

 拉致被害者のご家族の気持ちを思うと、本当に心が痛みます。北朝鮮では、「1年程度を目標に」調査するとのことであり、あれから1年経つ本年7月4日にきちんと回答がなされるかは極めて不透明ですが、北朝鮮が不誠実な対応をとるのであれば、日本側から、例えば10月までとか年内とか、期限を明確に区切り、期限内に適切な対応がなければ制裁を強化するといった強い姿勢で臨むことも必要と思います。いずれにしろ、拉致被害者の詳細情報は北朝鮮が握っているだけに、政府は高度な政治判断を求められると思いますが、拉致問題の解決に向けて、引き続き私も微力を尽くしてまいります。