『ジオパーク活動の取組状況と地域活性化の効果について』 | まいたち昇冶オフィシャルブログ Powered by Ameba

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『まいたち昇治の活動報告』第34回

 11月5日(水)、自民党と公明党の有志議員で構成する「ジオパークによる地域活性化推進議員連盟」が正式に発足し、石破茂先生(内閣府地方創生担当大臣)に議連会長に就任して頂きました。この議員連盟には88人の国会議員が入会(11月5日現在)し、設立総会は、国会議員本人約40名のほか、ジオパーク所在自治体の首長10人をはじめ、関係府省庁やマスコミなどから多数の出席があり、総勢百数十人の盛況でした。山陰海岸ジオパークからは、榎本武利・岩美町長と銀杏泰利・鳥取県議(山陰海岸ジオパーク推進三府県議会議員の会の幹事長)がお越しになりました。

今回は、ジオパーク活動の取組状況、課題、そして地域活性化の効果について説明します。

● 世界ジオパークと日本ジオパーク

ジオパークとは、ユネスコが支援するプログラムであり、ジオパークを有する地域においては、科学的に価値が高く、景観としても美しい地質・地形のある自然遺産を保護・保全し、教育や防災、ジオツーリズム等を通じて、地域の持続可能な開発・発展を目指しているところです。

2004年に世界ジオパークネットワーク(GGN)が創設され、GGNは、世界各国からの申請に基づき、世界ジオパーク(地質・地形版の世界遺産。ユネスコの正式プログラム化に向けて検討中。)を認定しています。また、日本では、日本ユネスコ国内委員会の支援を受けて、日本各地のジオパークの質を高めること等を目的とする日本ジオパークネットワーク(JGN)が創設されるとともに、世界ジオパーク及び日本ジオパークの審査・評価・推薦を行う組織として、日本ジオパーク委員会(JGC)が設置されているところです。

現在、世界で32カ国、111の地域が世界ジオパークに認定されており、日本では、糸魚川、島原半島、洞爺湖・有珠山、山陰海岸、隠岐、室戸、阿蘇の7地域が認定されています。また、世界ジオパークの認定には至らないものの、日本ジオパーク委員会が認定した日本ジオパークは全国に29地域もあるほか、17地域がジオパークを目指している状況にあります。

 なお、ジオパークは「大地の公園」とも呼ばれますが、JGC委員長の尾池和夫氏(第24代京都大学総長)は、日本語で説明する際は、「見る・食べる・学ぶための大地の公園」と表現するよう提唱されています。とくにこの「食べる」が重要だと強調されますが、その理由は後で説明します。

● ジオパーク活動の取組状況と取組の特徴

 ジオパーク活動は急速に広がっています。2009年5月にJGNが発足して5年経ちますが、現在、JGN会員である自治体は、市が104、町が77、村が30の合計211市町村です。全国の市町村の1割を超える自治体がジオパークと関連しているのです。また、ジオパークと何らかの関連を持つ都道府県は39におよびます。この背景には、地域活性化のツールとしてジオパーク活動の有効性が認識され、関係者の積極的な働きかけや取組により、全国に展開されたことがあります。

 なぜ、地域活性化のツールとしてジオパーク活動が有効かというと、それはジオパークの審査の仕組みが、地域とそこに住む人々を中心に考えられているからです。この点については、世界遺産や天然記念物の仕組みと比較すると、わかりやすいかもしれません。

 世界遺産や天然記念物は、人類あるいは国民にとって大事なものを指定し、社会に広める仕組みです。政府が保護する体制や資金を整備します。保護対象はモノであって、一旦指定されると再審査はありません。一方、ジオパークは、世界ジオパークであれ日本ジオパークであれ、認定後4年ごとに、その利活用状況や地域活性化への貢献等が審査され、認定が取り消される場合もあります。つまり、ジオパークは、大事なものがある地域とそこに住む人が、①大事なものを守るためにはどうしたらいいか(保護・保全)、②大事なものをなくならないように活用して地域の人が元気になるにはどうしたらいいか(教育、観光、地域活性化)をみんなで考えて実行するための仕組みなのです。地域づくりのための人々の活動が最も重要視されているのです。このため、これまで市町村や民間団体等が中心になって継続的な取組が行ってきたかいもあり、多くの住民にとって、ようやく地域全体の宝として認識・定着してきたものと思います。

 尾池JGC委員長が「食べる」を強調する理由は、飲食を通じた消費支出が地元を潤すという経済効果があることは言うまでもありませんが、一つには地域の人々が面白がって楽しめないと、ジオパーク活動は長続きしないからで、もう一つは固有の地域資源に創意工夫を加えて観光資源(特産品、地酒、名物料理等)に仕立てることを通じて、人々は地域に対する誇りと自信を取り戻せるからです。

● ジオパーク活動による地域活性化の効果

 ジオパーク活動による地域活性化の効果は主に二つあります。第一は、ジオパークの認定獲得を通じた知名度の向上と来訪者数の増加です。例えば、H22年12月に世界ジオパーク認定を得た山陰海岸ジオパークでは、拠点施設の一つである玄武洞公園の入場者数がH21年度19万6,000人、22年度20万6,000人、23年度21万6,000人と推移し、H23年9月に世界ジオパークとなった室戸ジオパークでは、室戸岬展望台の入場者数が24年度2万1,400人、25年度2万300人となり、それ以前の1万6,000人前後から大きな伸びを示しています。この来訪者の増加は、世界ジオパークの認定が地方新聞を中心に大きく取り上げられ、その後も関連記事の掲載数が増えたことによる効果ともいえます。もっとも、ブームとはいえ、世界認定を獲得した地域の人々の誇りや地元自治体の自信という無形資産の価値を見落としてはなりません。それが次の大きな変化を生み出す“種火”となるからです。

第二は、より長期的な変化ですが、まちが変わることです。例えば、島原半島ジオパークでは新しい観光プログラム「ジオマルシェ」に取り組んでいます。島原独自の名物を作り出す試みで、地元の島原商業高校商業部と島原雲仙かまぼこ組合が共同で「かまポテト」という新商品を開発しました。現在は、さらにステップアップした商品開発が進められています。この事例では、地域の魅力を高校生の新鮮な視点で見直すことで、高等学校と地場産業との新しい協力関係が生まれ、様々な分野の人々が地域振興に関わる素晴らしい効果を生んでいます。

もう一つは、糸魚川でH21年度から始まった糸魚川ジオパーク検定です。検定は初級、上級、達人級と難易度に応じて、糸魚川ジオパークのことから地質・地形の学術的な知見まで扱われ、毎年300人余りが挑戦します。受験者は多くが地元の人達で、彼らは糸魚川ジオパークの学術的な価値に気づき、地域に対する愛着を深めています。

世間一般にある検定制度では、これ以上の展開はありません。ところが、糸魚川では飲食店、サービス業・商店等の事業主を対象に「ジオパークマスター」制度を設けて、商売への転換を図りました。検定の勉強をする余裕のない事業主を対象に集中講座を行い、マスター認定を与えます。H26年3月末現在、72名のジオパークマスターがいるそうです。

ジオパークマスターは、自分の商売で検定合格者限定のサービスを始め、地元での商業・サービス振興に励みます。そして、これに着目した地元金融機関はジオパーク振興資金という融資制度をつくり、46件3億5,000万円(H25年度)の融資を実行しました。

 糸魚川では、ジオパーク活動を通じて、金融機関まで巻き込んだ地域社会活動の好循環が生み出されています。

● ジオパークによる地域活性化推進議員連盟の今後の取組

 このように、ジオパークを活用した地域の取組は、環境保全、教育、防災、観光振興、地域振興等、今後、まち・ひと・しごと創生総合戦略を政府が策定するにあたり、実践的なヒントが満載です。一方、ジオパークがある自治体は、人口減少が深刻なところも多く、財政面で自立的な活動を継続するのが次第に難しくなっているのが実情です。また、御嶽山の噴火災害にみられるように、火山防災は自治体の対処能力を超えています。火山活動が生み出してきた様々な地質・地形に特色をもつ、わが国の多くのジオパークにとって、国レベルの新たな火山防災対策も求められます。

 そこで、議員連盟の事務局を預かる私としては、11月中に「ジオパークによる地域活性化の推進に関する決議」をとりまとめ、①ジオパークに関する国のワンストップ窓口を設け、一体的な支援・推進体制を構築すること、②ジオパーク関連の既存の補助金・交付金・調査研究費等を拡充するとともに、ジオパーク地域を含め自由度が高く使い勝手の良い新たな交付金を創設すること、③ジオパークと関連する国の機関を東京からジオパーク活動が盛んな地方へ移転させること等を政府に対して働きかけていきたいと思っています。

 ジオパークによる地域活性化を推進することは、地方創生の起爆剤の一つになると信じているため、ジオパークに関する施策が少しでも前に進んでいけるよう、引き続き微力を尽くしてまいります。