『消費税増税先送りについて』 | まいたち昇冶オフィシャルブログ Powered by Ameba

まいたち昇冶オフィシャルブログ Powered by Ameba

まいたち昇冶オフィシャルブログ Powered by Ameba

『まいたち昇治の活動報告』第35回 

 安倍首相は11月18日、来年10月1日に予定されていた消費税の10%への引上げを行わず、1年半後のH29年4月に先送りし、税制上の大きな変更となる、この判断について国民の信を問うとして、21日に衆議院の解散を行うことを表明しました。

今回は、消費税増税の先送り及びアベノミクスに関する論点をQ&A形式で説明します。

質問1:なぜ消費増税を先送りするのか?

舞立:11月17日に発表された7-9月期の実質GDP(国内総生産)成長率(速報値)は年率マイナス1.6%でした。4-6月期に続いて2期連続のマイナス成長で、景気が4月の消費税8%への引上げの影響から戻っていないことが明らかになったからです。平成9年の橋本政権時に消費税の引上げ(3%から5%へ)を強行して、わが国経済はデフレに突入してしまい、“失われた15年”を過ごしました。その二の舞にならないように、財政残って国民生活焼け野原ではいけませんので、地方の景気回復を最優先して取り組みます。

質問2:景気が問題であれば、補正予算やピンポイントの対策で対応可能ではないか?

舞立:確かに、H25年初以降のアベノミクスによる景気回復で、税収の自然増収も見込まれますので、赤字国債を増発することなく補正予算を編成できます。現に安倍首相は、新たな経済対策を指示し、来年の通常国会に補正予算が上程される予定です。

 しかし、消費者心理がデフレ・マインドに戻るのを防ぐには不十分です。国民の先行きに対する不安感を払拭するほうが優先されます。財政再建を優先し、また長い不況に陥っては、再度日本が立ち上がることは困難でしょう。景気が腰折れしてしまうと、消費税率を上げても期待通りに税収は増えません。

質問3:アベノミクスは失敗したのか?

舞立:そうではありません。三本の矢の経済政策は、確実に成果を挙げつつあります。安倍政権発足以来、雇用は100万人以上増加しました。有効求人倍率は22年ぶりの高水準です。賃金も今春、平均2%以上アップし、過去15年間で最高(連合調査)です。

 都市部では、企業収益増加⇒雇用拡大⇒賃金上昇⇒消費拡大⇒景気回復という経済の好循環が実現しつつあります。この流れを、未だ景気回復の恩恵が及んでいない地方に広く普及させる必要があります

質問4:衆議院を解散するのはなぜか?

舞立:消費税を5%から8%を経て10%へ引き上げるという内容は、民主党政権下で自民、公明、民主の3党が“奇跡的に”合意したものです。しかも、その協議過程で景気条項が追加されました。今回、安倍首相はこの3党合意を無にする判断をし、景気条項も外して18ヶ月後に10%にすると断言したのです。これは国民生活にとっても、国民経済にとっても、大きな変更であり、重い判断です。この判断について国民の信を問うのは議会制民主主義の下では当然と言えるでしょう。

 とりわけ、税の問題は国民生活に密接に関わっており、米国の独立戦争の頃より、「代表なくして課税なし」と言われてきました。消費増税先送りの判断とアベノミクスの評価を併せて問うことは理に適っており、解散の大義は十分にあると考えます。

 なお、以前から、野党は、特定秘密保護法や集団的自衛権の一部を認める閣議決定、原発再稼働に関して国民の信を問うべきだと主張していたと思いますが、これらを含め、丁寧に国民の信を問うているものと思います。

質問5:消費者心理がデフレ・マインドに戻るのを防ぐにはどうすればよいか?

舞立:4月以降の家計消費支出動向を世代別にみると、子育て世帯を中心に30歳代世帯及び低所得者層で著しい消費支出の抑制が見られます。将来の雇用や所得に対する漠然とした不安感や社会保障制度の先行きに対する不透明感が、どうしても拭えないからです。そこで、まず景気を4月の消費増税前の成長軌道へ戻すために、新たな経済対策(補正予算)は絶対に不可欠です。

安倍首相が指示した新たな経済対策の対象は以下のとおりです。

①円安、エネルギー価格高騰・米価下落等への対策、経済の好循環の実現に資する事業者・住民の方々への対応(優先)
②「地方創生」の先行的実施
③地域における成長戦略
④災害復旧・復興加速化を始めとする危機への対策


また、消費増税先送りの下でも少子化・子育て支援の拡充を予定通り進め、制度に対する信頼感を高めることも大事です。

質問6:消費増税延期により税収が減少するが、社会保障等の対応はどうするのか?

舞立:消費税の増収分は社会保障に支出されることになっているので、先送りによる減収(約4,500億円)は、年金、医療・介護、子育て支援の分野に影響します。H27年度概算要求は来年10月からの10%引上げを前提に作成されていますので、施策の見直しや更なる重点化が必要になります。具体的には、例えば、年金分野では、加入期間の25年から10年への短縮等に係る予算、医療・介護分野では、施設整備や介護人材の処遇改善等に係る予算、そして、子育て支援分野では、待機児童解消に関連する施設整備等に係る予算が、見直しの対象になるのではないかと言われています。

 この点、世界一の資産大国と言われる日本の資産は、有価証券や貸付金だけで250兆円もあるほか、外為特会の積立金は22兆円もあり、近年の為替差損にも十分耐え得る水準です。例えば、外為特会の積立金を数兆から5兆円程度捻出したり、貸付金等を低い割引率で証券化し、現金化することにより、相当の財源は捻出でき、当面の財源対策の奥の手とすることもできるため、消費税引上げを1

年半先送りするからと言って、予算がむやみに削減されないよう留意する必要があります。
いずれにしても、自民党は消費税率を10%に上げるH29年4月までの間も、介護や子育て支援を充実するよう選挙公約に明記します。私も、少なくとも子育て支援分野の予算は、補正予算などあらゆる手段を使って、概算要求どおりの規模を確保するよう微力を尽くします。

質問7:消費税の10%引上げは国際公約だったのではないか?

舞立:国際社会は日本が約束を誠実に遵守するかどうか注視しています。より具体的にいうと、日本政府は国民が嫌がる増税を強いるだけの統治能力を持っているかどうか絶えず点検しています。安倍首相はこの国際社会の厳しい目を十分意識して対応しています。景気条項を撤廃し、増税時期を明言したことは、安倍首相が無責任に消費増税を先送りした訳ではないことを示しています。また国際社会は、世界第3位の経済規模の日本がふたたびデフレに戻るよりも完全に脱却するほうを望んでいることも忘れてはなりません。

質問8:成長戦略でなにをするのか?

舞立:アベノミクスの第三の矢「成長戦略」は、わが国経済の潜在成長率を高める戦略です。潜在成長率を長期間、持続的に高めるには、技術開発、教育投資、制度改革等を通じた労働生産性の上昇が必要で、具体的には労働法制などいわゆる“岩盤規制”の改革や新規の創業支援等が重要です。高速道路のミッシングリンク解消も必要です。この問題は、当該区間の経済効果だけで採択の可否を決めるのではなく、わが国の高速道路ネットワーク全体の効率性向上という高次元の観点から考え、もっと重視されるべきと考えます。 

質問9:なぜ法人税率の軽減が優先されるのか?

舞立:日本の潜在成長率を上げていくには、日本企業の生産性や国際競争力を向上させるだけでなく、海外の優良企業を国内に誘致することも有力な方法です。海外からの優秀な人材や異質な発想に基づくビジネスモデル等の流入は、国内にさらなる活力をもたらします。

海外企業の誘致競争は非常に激しく、なかでも税制面でわが国は、法人課税の実効税率が約35%と国際的に高く、不利な状況にあります。とくに東アジアで競合するシンガポール、香港、韓国等と比べると大きな差があります。そこで、政府は6月の成長戦略でH27年度から概ね5年間で5~6%引き下げる方針です。

なお、法人税率引き下げの代替財源を確保するために、外形標準課税の強化(赤字企業の税負担が増える)や繰越欠損金制度の見直し等が議論されており、国内企業の税負担が一方的に軽減されるわけではないことに留意する必要があります。

質問10:消費税10%時に軽減税率の導入を目指す方向について、どう考えるか?

舞立:軽減税率とは、消費税率が高水準の諸外国で導入されている制度で、食料品など生活必需品を対象に低い税率を適用するものです。軽減税率の水準や適用対象品目の範囲をどのように設計するかにも依りますが、一般的に、低所得者層や中小零細事業者の負担を軽減する効果があるといわれます。

一方、高所得者も対象品目を軽減税率で買えるので経済格差の是正にはつながらない、あるいは軽減された税収減少分を埋め合わせるために、ほかの財源(含む、消費税率のさらなるアップ)を確保しなければならない、といった問題点も指摘されます。

 さらに、どのように線引きするか、実務上多くの課題があり、今後、慎重に検討する必要があると思います。