『地方創生に関する観光施策について』 | まいたち昇冶オフィシャルブログ Powered by Ameba

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『まいたち昇治の活動報告』第33回 

 昨年、日本を訪れた外国人旅行者数は1,036万人を記録し、1,000万人の目標を突破しました。本年も外国人旅行者数は1,200万人に達するペースで順調に増加しています。政府の新たな2,000万人の目標を実現すべく、各方面での受け入れ体制の整備が急がれます。この点、地方からみると、海外や国内からの旅行者の増加は、いまや地方創生の有力な起爆剤の一つです。今回は、地方創生に関する観光施策を説明します。

● 観光による経済効果

 海外からの訪問者の増加は国内に新たな需要と交流をもたらし、経済活動を活発化し、社会に賑わいをもたらします。地方にとっては、外国人旅行者だけでなく、国内観光客、宿泊であれ日帰りであれ、観光客の消費活動等を通じて新たな需要、新しい商品・サービス開発のきっかけ、地域資源の見直し・気づきを生み出し、地域社会を活気づけます。

 こうした観光客の増大がもたらす経済効果は多岐にわたりますが、観光庁は消費支出に着目した調査を行っており、その結果は以下のとおりです。

*旅行消費額(2013年)(延べ人数)
訪日外国人旅行  1.4兆円(1,036万人)
邦人の国内旅行  20.2兆円(6億3,095万人)
うち、宿泊旅行 15.4兆円(3億2,042万人)
日帰り旅行 4.8兆円(3億1,053万人)
出所:観光庁 訪日外国人消費動向調査(2013年)、旅行・観光消費動向調査(2013年)

1人1回当たり消費額を算出すると、次のようになります。

*1人1回当たり消費額(2013年)
訪日外国人 137千円
邦人の宿泊  48千円
邦人の日帰り 15千円

 総務省の2013年家計調査によると、定住人口1人当たりの年間消費額は124万円ですから、この消費額は大まかに外国人旅行者10人分にあたります。人口減少に悩む自治体の視点でみると、外国人旅行者10人を呼び込めれば、定住人口が1人減少した分の年間消費額相当は取り戻せる、という計算になります。あるいは、日本人の宿泊旅行者26人又は日帰り旅行者83人を誘客できれば同等の経済効果が生じるともいえるでしょう。

 もっとも、この計算は消費額について比べた結果であり、雇用創出効果ではないことに留意しなければなりません。雇用の創出効果は、業種ごとの労働比率や需要増の持続可能性の程度などを加味する必要があり、単純には求められません。観光庁のさらなる調査に期待したいと思います。

● 地方創生に貢献する観光施策

 観光庁はH27年度概算要求で地方創生に資する観光施策を3つ盛り込んでいます。

第一は、「広域観光周遊ルート」形成への支援(新規、14億円)です。目的は、(1)地域の観光資源を磨き上げ、地方を訪れる観光客の流れを戦略的に創出し、交流人口を拡大すること、そして、(2)地域経済を活性化させ、地域における雇用創出と若者の定住促進を図ることです。

広域観光周遊ルートとは、①複数の都道府県をまたがり、②テーマ性・ストーリー性を持った一連の魅力ある観光地を、③交通アクセスも含めネットワーク化して、④外国人旅行者の滞在日数(平均6~7日)に見合う周遊ルートのことです。例えば、主に中華圏から中部・北陸9県への誘客を推進する“昇龍道”プロジェクトが中部経済界を中心に検討されています。能登半島を龍頭に見立て、中華圏に人気の龍をモチーフとした企画です。私の地元鳥取では、鳥取県と島根県を中心とした中国地方“古事記謎解き”という物語性のあるコンテンツを基に新しい周遊ルートを開発できるかもしれません。

国の支援内容は以下のとおりです。
・広域観光周遊ルート形成計画策定に対する支援
・外国人受入環境の整備に対する支援
・広域観光周遊のための交通アクセスの円滑化(二次交通の利便性増進等)
・マーケティングに対する支援
・海外への情報発信 等


また、この施策には、成田空港や関西国際空港を利用して東京、京都・大阪、富士山等を巡る定番の観光コースに飽き足らないリピーター対策のほか、地方空港の機能強化により、地方空港を玄関口として地方の観光地域を周遊する「地方イン・地方アウト」のルート形成の促進、それによる外国人旅行者数の拡大という二つの狙いもあります。

第二は、地方における消費税免税店(以下、免税店と略す)の拡大推進です。本年10月1日より消費税免税制度が拡充され、食料品、飲料品、医薬品、化粧品等の消耗品を含む、すべての品目に拡大されました。当然、地方の名産品も免税対象品目になります。地方に免税店が普及すれば、地方を訪れる外国人旅行者の地方での消費が一層増大し、地元の商店街やショッピングセンターが潤うことが期待されますが、これまで免税店は、免税対象品目が家電製品やカメラ等に限られていたため、大都市圏や国際空港に集中し、地方都市の商店街やショッピングセンターにはありませんでした。

そこで、地方の小売店等が容易に免税店になれるよう、観光庁と経済産業省が連携し、国税庁の協力の下、今年5月から6月にかけて全国12ブロックで免税制度説明会が開催されています。鳥取県では5月22日に米子コンベンションセンターで開催されました。

6月以降も、観光庁・地方の運輸局、経済産業局は、①自治体、商工会議所等が主催する説明会への講師派遣、②免税店申請手続の迅速化、③免税手続事務の事務マニュアルの提供・指導等、普及に全力を挙げています。全国の免税店数は2012年4,173店、13年4,622店、14年5,777店(各々4月1日時点)と順調に拡大しており、当初掲げていた2020年10,000店の目標を前倒しすることが期待できます。

 第三は、地域資源を活用した観光地魅力創造事業(新規、5億円)です。本事業は、(1)観光資源を活かした地域づくり施策と(2)観光振興のための施策をパッケージとして支援する事業で、最終的には地域の観光資源を世界に通用するレベルにまで磨き上げることを目指しています。

ここで言及される観光資源とは、美しい自然、海洋資源、豊かな農山漁村、魅力ある食文化等のことです。また、観光振興のための施策とは、体制づくり、受入環境整備(多言語対応無料Wi-Fi含む)、二次交通の充実等のことです。

国は自治体等観光関係者の取組に対して、以下の内容をパッケージとして支援します。

・計画策定に係る費用
・マーケティング費用
・滞在コンテンツの企画・作成費用
・二次交通の整備に係る実証実験等の実施費用
・受入環境整備、おもてなしの向上に係る費用 等


 地域資源を活用した地域活性化への支援は、これまでも農林水産省、環境省、文部科学省などの事業で行われてきました。観光庁の本事業は、そうした事業と連携しつつ、観光の視点から地域の魅力を引きだそうとするものです。

ところで、複数の省庁の類似した事業がバラマキに終わるか、十分な連携の下で重複を省きつつ有効に利用されるかは、政府の地方創生本部のリーダーシップに加え、申請側である地方団体の主体性・創意工夫が大きく左右すると思います。地方創生の議論では、“地方からの発意・知恵”が強調されていますが、地方の素晴らしい成功例として、例えば、ジオパーク活動の取組があります。

● ジオパーク(地質・地形版の世界遺産)による地域活性化推進議員連盟の創設

 第21回の活動報告「政府(行政)を動かす議員の武器:議員連盟の活動」のなかで、ジオパークによる地域活性化の取組について、国としても議連を立ち上げ支援できないか検討している旨書かせて頂きましたが、この度、自民党と公明党の有志議員からなる「ジオパークによる地域活性化推進議員連盟(仮称)」を立ち上げる運びとなり、11月5日に設立総会を開催します。当日は、設立総会に加え、①日本ジオパークネットワークの事務局からジオパークの現状等について説明、②関係省庁からジオパークに関連する予算説明の後、ジオパークによる地域活性化に向けて意見交換を行う予定です。石破茂先生(内閣府地方創生担当大臣)に議連の呼びかけ人代表になって頂いており、当日、議連の会長に就任して頂く予定です。私は、事務局長として微力を尽くします。

 次回は、地方において盛り上がっているジオパーク活動の取組の現状や課題、そして、地域活性化の効果について説明します。