前回は環境消毒に使用する薬剤の4種を述べました。4番目の4級アンモニウム塩系と過酸化水素系が主流で、これが使い易いと述べました。
今日はその説明をもう少ししていきましょう。
メンテナンスで使用する場合は洗剤としての効果もあった方が良いのは言うまでもありません。環境を衛生的に保つには、汚れを取り去る事が第一歩だからです。汚れがあればそこには微生物が生息している事が容易に想像出来ますので、病院清掃の先ず最初にすべきことは汚れを取り去り綺麗にする事なのです。水では汚れの80%しか取れませんから、洗剤使用はその事柄からしても衛生清掃には必須なのです。また、次亜塩素酸は洗浄効果はありません。非常に強い消毒剤ですが、誤解してはいけないのは、分解力には優れていますが、洗浄効果はないのです。
そうすると環境を衛生的に保つには先ず、クリーニングをして汚れを取り去り、その上で消毒する事が基本になります。クリーニングせずに、消毒作用だけで対処しようとするのはあまり効率が良くないのです。
そう考えると、洗浄と消毒が同時にできた方が効率が良いのは言うまでもありません。そうした意味で、4番目の4級アンモニウム塩系は逆性石鹸の事ですし、元々洗浄とは相性が良いのです。過酸化水素も洗浄効果を付加しやすいので、この2つは洗浄と環境消毒をワンステップで行えますので、作業性や効率、しかも安全性も高いので使い易いのです。この手の感染防止洗剤(除菌洗剤)はこの目的に特化していますので、こうした清掃目的には大変便利に出来ています。「拭くだけで、洗浄と環境消毒を同時に行う」事が出来、消毒効果のエビデンス(証拠)を持っているものが(米国製は全て)多いのです。こうした物を使いましょう。
使用するに当たって、今では事業者はSDSを読み込むことが義務化されていますので、SDSの読み込みをしましょう。最初は抵抗があるかもしれませんが、なれると非常に簡単です。その中で、GHSのマークが付いている場合、その注意をする必要があります。希釈タイプの場合は多くが!マークやその上のマークが付いているケースがあります。先ずそれを確認しましょう。但し同時に希釈後どうなるかも確認しましょう。殆どの物は希釈後にはGHSマークが付きません。その為、自動希釈器を使用すれば、作業者は使用時には安全に使う事ができますので、自動希釈器は後にも強調しますが便利です。そして、手袋は必ず使いましょう。また、目に入つと、好ましくないので、霧状にスプレーしての使用は避けましょう。使用時の真っ先の注意事項はこの点になります。
- 手袋使用
- 霧状のスプレーにしない
です。
そして使う際には、先ず希釈を正しくする事が非常に重要です。濃すぎても、薄すぎてもいけません。従って、繰り返しになりますが自動希釈器を使用すると良いでしょう。これなら間違う事がありませんので。今は自動希釈器も簡易で安い、水道に繋ぐだけの物がありますので、便利です。
使う際には先ず心掛ける事は「そこに汚れがあるつもりで、それを拭き取るように一方向に拭いて取り去るイメージで拭いていく事」が大切です。塗り広げる様に拭いてはいけません。
拭いた後が濡れていることが大切です。接触時間が必要な為です。病院清掃では厳格に実施する必要がありますが、通常使用の場合は拭いた後、濡れていれば大丈夫とした方が分かり易いと思います。そして、このタイプの洗剤は濡れている時に効果を発揮するのですから(ある意味毒性があるという事ですので)乾くと安全という事です。濡れているうちは触れてはいけません。そうなりそうな場合はリンス拭きが必要になります。
4級アンモニウム塩系と過酸化水素系は米国での人気はほぼ拮抗しているようです。それぞれ特徴が異なります。過酸化水素系は仕上がりがスッキリした感じになります。4級アンモニウム塩系は石鹸ですので、稀にベトツキが出る事があります。この際には水拭きしてやれば基に戻ります。
4級アンモニウム塩系は除菌範囲が広いものが多い事が特徴になっています。そして、概ね希釈率は一定です。同じ自動希釈器を使用して、幅広い除菌スペクトルを持っています。過酸化水素系はそれに比べ、比較的除菌範囲が狭いので、その為希釈率を変える事により対応する必要があります。そうしたことから、好みや現場の特性によって好みが分かれるのです。
どちらを使っても効果がありますので、除菌証明の付いている微生物に対しては、正しく使えば有効です。即ち正しい希釈と正しい接触時間です(正しい拭き方と言ってもいいでしょう)。
繰り返しましょう
- 手袋を必ず使用する
- 希釈後のGHSマークがどうなるか(ないかどうかを確認しておく)
- 正しい希釈が重要
- 自動希釈器が便利
- 霧状にして目に入る事が無いよう注意する(水鉄砲か粗目のスプレー、或いはタオルにスプレーする)
- そこに汚れがあると思って拭いていく
- 拭いた後、濡れていることが大切
- 「乾くと安全」と覚える
以上です。