ここの所、病院清掃の講習会が続いています。4月に東京で、7月第一週は大阪で、今週は福岡で行います。そうした中で、床拭きについての問題に気付きました。床の洗剤拭きを実施している病院と、しっかりした床拭きをしていない所があるのです。
一つ目の例は床拭きを前進で行うケースでした。何故前進で行うかと言うと、人にぶつからない為との事です。作業の安全性を重視した考え方です。しかし、これでは汚れの拭き取りは出来ません。床の汚れの拭き取りには洗剤使用が必須です。水ではあまり汚れが取れません(床の水溶性の汚れは8割と言われており、いつも2割残してしまう事になります)。洗剤を使用して床を拭くには後退しながら拭くしかありません。前進では洗剤を塗布した所を歩くことになり、却って汚れてしまうからです(洗剤が靴の裏の汚れを床に巻き込みます)。前進するためには、殆ど濡れていない(半乾きと言います)状態での作業になり、これでは汚れの除去は不可能です。
もう一つは病院サイドからドライ拭きにするように指示されるというケースです。これも安全(転倒や衝突)を重視した所から出てきた考え方の様です。ドライ拭きという事は単に床上の土砂やゴミを除去するだけという事ですので、衛生性の向上とは言えないでしょう。
この問題は病院に限らず、一般の建物でも同じことが起こっており、衛生性と言う面からみると好ましい状況ではありません。床拭きをしなければ、建物内の衛生性は向上しません。これには日本特有の住宅事情があります。
我が日本は下足の文化です。家の中では靴を脱ぐのが常識になっています。その為、床上の衛生性がそれ程問題にならないのです。しかし世界的にみると、建物内での汚れの大きな部分は室内に持ち込まれる靴の裏の土砂なのです。土足で使用する建物の床を綺麗にすることは、建物内の衛生性にとって非常に重要な事である事は容易に想像できると思います。その為(米国等の先進国)でメンテナンス会社(米国ではジャニタリーサービスという言い方をします)に仕事を頼む主な目的は床の洗剤拭きなのです。そこで、欧米では自動床洗浄機が発展しました。モップ拭きよりも、効率も効果も圧倒的員上がるからです。
我が日本は下足の文化ですので、通常の家では家の床の拭き作業は必要ありません(ペットでも飼っていれば別ですが)。床上に土砂が無いからです。その為、建物の内側には洗剤による拭き作業が常識と言う観念が無いのです。土砂の大部分は目で見る事は出来ませんので。
カーペット維持が日本人が上手くないのも、基本的には同じ理由なのです。土足で使用するカーペットにはバキュームを掛けなければ、土砂の堆積で酷い事になるのは、先進国では幼児でも知っています。多分彼らは、掃除をしない酷い部屋を見る機会が少なからずあり、埃っぽくって酷い状態になる事を小さい頃から経験しているのでしょう、彼らにとってカーペットバキュームは室内の快適な環境維持には必須であることを心底理解しているのです。
病院内では室内の衛生管理は必須です。上記のカーペットの維持にはバキュームが必須だという事を想像してみましょう。病院内での床の洗剤拭きが是非とも必要であることは容易に想像できると思います。目に見えないからと言って放っておいてはいけません。メンテナンスには理論と知識が絶対に必要なのです。