酸とアルカリ どちらを使うか Ⅵ
建物内の汚れ
殆どの汚れ→アルカリ側
トイレ・浴室・流し台・(錆び)→酸側
私のブログでも最も閲覧数の多いテーマです。話を進めてまいりましょう。
pH で洗剤の強さの問題は覚えました。いよいよ、実際に洗剤を使用する事になりますが、最初に皆さんがしなければならないのは、その汚れが酸で落ちるのか、アルカリで落ちるのかを判断する事です。酸でなければ落ちない汚れをいくらアルカリを強くしても意味がありません。「逆もまた真」です。それではどうやって判断するかと言うと、意外に簡単です。実は私達の身の回りの汚れは圧倒的にアルカリ側で落ちます。元々アルカリとは「灰」のアラビア語です。洗剤の起源を話す時に良くする話題が、石鹸の起源です。古代ローマのサポーの丘で、生け贄(いけにえ)を備える祭壇の下の土が手や衣服の汚れを良く落とす事からスタートしたと言われています。アルカリを油で煮たものが石鹸ですので、生け贄の油と薪の灰(アルカリ)がここで混ざって土に染み込んだわけです。石鹸から洗剤は生まれましたので、洗剤の殆どがアルカリ性である事、汚れの殆どがアルカリ側で落ちるのはこうした事からも容易に想像できます。図のビルのイラストも殆どが青(アルカリ性)になっており、便器の一部が赤(酸)になっています。殆どの汚れがアルカリ側ですので、少ない方(酸側)を覚えてしまいましょう。
「○○以外はアルカリ」
と覚えてしまえば簡単です。
メンテナンスの守備範囲は主に建物の内側ですので、建物の内側に絞りましょう(外側や特殊な所はご質問下さい)。建物の内側で酸が必要なのは
トイレ
浴室
流し台
(錆び)
です。トイレは便器内に着く尿石と水垢がアルカリが大きく関係しているのです。尿石はカルシウム(Ca)です。カルシウムはアルカリですので、通常のアルカリ側の洗剤は効かないのです。一般家庭であれば、尿石の付き方は大したことは無いのですが、業務用のトイレは使われ方が「ハンパない」ので尿石に対する対処をしっかりしておかないと大変な事になってしまいます。酸を使ってやれば尿石はすぐに溶かす事が出来ますので、酸を使う必要があるのです。水垢はカルシウムと二酸化ケイ素が混じったもので、一旦付いてしまうと、酸性洗剤使用でも、落ちたり、落ちなかったりします。確率は50%と言うところでしょう。カルシウムの多い硬水の場合は酸で落ちますが、二酸化ケイ素が多い軟水は二酸化ケイ素がガラスの小さな粒の様なもの(陶器の釉と同質の物)ですので、酸では落ちないのです。陶器の釉(うわぐすり・ガラス質)についた異質のカルシウムと同質の二酸化ケイ素を考えてみましょう。異質なものは取り易いのですが、同質の物は取りにくいのです。従って便器に付いてしまった水垢は1カ月以上酸を使って落ちなければ、例外的に陶器用のクレンザーを使い、削り取る必要があります。通常のクレンザーは絶対にいけません。釉を剥がしてしまうので。プロ的な技術が必要ですが、覚えるのはそれ程難しくはありません。必要な方は弊社営業にお問い合わせください。ともあれ、こうしたケースでは例外的に削り落としますが、一旦落としてしまえば、何時も清掃時に酸を使っていれば、水垢は付きません。
浴室は皆さんが石鹸やシャンプーを使いますが、あれがアルカリ性ですので、アルカリ残留が起こるのです。それがヌメリになりますので、通常のアルカリ性洗剤は効きません。酸性かアルカリであれば(酸の使えない場所やカビ取り剤等との混合の危険を避けるためなど)キレート剤を使った浴室用の洗剤が必要になります。
流し台も同様の理由です。家庭用の洗剤がアルカリ性ですので、流し台自体を洗浄するには逆サイドの酸が必要になる訳です。
最後に錆びですが錆びは
Fe2O3が錆びです。これにHCl(塩酸)を使用すると
H二つでO(酸素)一つを持って来てくれます(H2O)
Cl(塩素)一つでO(酸素)二つ持ってきてくれます(ClO2 二酸化塩素)
そこで
Fe2 に戻る(O3が無くなる)
と言う還元作用を使って錆を落とします。錆びを落とすには酸が必世なのです。
(錆落とし)と書いているのは錆落としをした時には、水で充分に洗い流してやる必要があります。そうでないと却って酸化が酷くなってしまいます。そこで、少しトレーニングをしてから行いましょうと言う意味で( )を付けています。
トイレ 浴室 流し台 (錆び)
と覚えましょう。勿論特殊なものは他にもあるのは事実です。日焼けしたカーペットの色戻しとかコンクリートのエフロレッセンス(この場合は酸洗いだけでは済まないのですが)とか・・。しかし、特殊なものは追々覚えればよいのです。取り敢えず上記の物を覚えてしまえば概ね問題ありません。
「酸とアルカリ」 しっかり覚えましょう。トイレや浴室清掃の効率化大幅アップ間違いなしです。