洗剤の強さ/pH(水素イオン濃度)について Ⅴ | お掃除とメンテナンスのプロ 矢部要のブログ

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さて、今日はpH値についてです。最初に動画をご覧ください。その方が分かり易いと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=RTwSDyO-09Y

 

pH(水素イオン濃度)について

 

 アムテック博士の説明でご理解いただけましたか?

洗剤の強さの問題で、ここを理解すれば、洗剤使用の大部分を終了した事になります。

詳しく述べていきましょう。

 

 洗剤使用をするにあたって、非常に重要なのがpH(ピーエッチ/ペーハー)についての理解です。pHについての簡単な説明から始めましょう。真ん中にグラスがあり、水が入っています。そもそも水をH20と書く事は皆様ご存知です。こう書くと、固まって動かしにくいものと思われがちですが、水はH+(水素イオン)とOH-(水酸イオン)が緩やかに結合したものなのです。コップ内の水に混ざり物が何も書ければ、H+とOH-の数は均しくなり、中性の7になります(純水です)。しかし、純水は化学的に作らなければ、実際にはあり得ません。私達の身の回りの水には多少とも何かが混ざっています。そうすると、その混ざり物によって、H+が増えたり、OH-が増えたりします。そのどちらがどの程度多いかを示したものが、pH(potential of hydrogen ポテンシアル・オブ・ハイドロ―ジャン=水素イオン濃度)になります。一単位を10倍ずつで区切っています。科学の世界ではよくある事ですが、濃度が倍や3倍では実生活上大して変わりが無く、10倍違いにした方が強さの程度を理解する上で便利だからです。地震のマグニチュードが約30倍で区切っているのとよく似ています。

 コップ内が強アルカリの代表である苛性ソーダの原液だとすると(実際には難しいとしても比喩として考えてください)殆ど全てがOHーになり、pHは14になります【Aとしましょう】。逆にコップ内がこれまた強酸の代表と言っていい塩酸だとすると殆どがH+になりpHは0になります。限界があると言うのはこういう事です。

 そして、濃度が10倍ずつで一単位変わる訳ですから、Aのコップの溶液を10分の9捨て、10分の1残します。そして、それに水(中性でpHは7です)を元の位置まで加え、よく混ぜれば、濃度が10分の1になったことになり、pHは13になる訳です【Cとしましょう】。これ【C】を同様に10分に1残し、他を廃棄し、また水で元の量に戻せばpH12になります。ここは文字ですので理解が出来なかったら、アムテック博士の動画をご覧になるとすぐに理解できます。簡単な理屈ですので。

 この理屈を覚える事が重要なのは、私達プロ用の洗剤は大抵の物が薄めて使用するからです。10倍薄める毎にpHが1変わる事を覚えておけば、現在使用している洗剤のpH値を知りながら使用する事が出来ます。殆どの汚れがアルカリ側で落ちますので、アルカリサイドを例に取りましょう。メンテナンスをするにあたって厄介な床汚れの一つに床ワックスの上に付く靴のゴムの汚れ「ブラックヒールマーク」がありますが、この汚れはpH10の洗剤で落とす事が出来ます。通常汚れはpHの強さに対応していますので、ブラックヒールマークはpH10覚えておけば、pH11の洗剤を10倍まで希釈しても落ちる事が予測できます。100倍にしては落ちない(洗剤の力ではという意味です。擦り落とせば別ですが)という事になります。即ち、汚れと洗剤の関係をすぐに予測できるので、非常に有効なのです。

 一番下の表を見てください。アルカリ側で落ちる汚れを例にしていますが、A,B,Cそれぞれの強さをpH値で一旦覚えてしまえば、どの洗剤を何倍まで薄めても除去できるか容易に推測できるのです。

 但し、pH9の洗剤を水で薄めて、10倍にすれば、8になり、100倍薄めれば7になりますが、それ以上薄めても6(少し酸に傾く)にはなりません。中性(pH7)である水をいくら使っても酸にはならないのです。ここはしっかり覚えましょう。

 問題は端数が出た時です。何時も10倍ずつとは限りません。30倍、50倍、或は64倍とった場合はどう考えるのでしょう。こうした場合は本来は乗数ですが、実務では分数で考えてしまします。あくまでお掃除で使う場合ですので、実験室の様な正確性は必要ありません。

 pH11の洗剤を水で薄めて50倍にした場合は分数でかんがえますので、最初の10倍でpH値は1つ下がってpH10になります。5残っていますので、10から0.5を引くと9.5になりますね。そこでpH9.5ですが、正確ではないので、「約9.5」とか「9.5程度」程度と言っておけば良いのです。

 以上でpHについての説明は終わりです。講習会ではここが肝ですが、文字にして書きましたので、少し分かり難いかもしれません。最初に書きましたが、動画の方が数段分かり易いと思います。理解できなかった方は、動画をご覧になるか、弊社へご連絡下さい。弊社営業が簡単に説明致します。

 ともあれここが理解できれば洗剤使用の大部分が理解できたことになります。プロ用の洗剤は殆どpH値を記載しています。それは自分がどの程度の汚れに対応しているか、最初から正体を現しているのです。「自分の守備範囲はこの辺です」と示していますので、使う方はそこを先ず見ておけば、どの汚れに対応できるか簡単に理解できるわけです。後はその汚れがどちらの方向、即ち、酸で落ちるのか、アルカリで落ちるのかを判断すればよい事になるのです。

 

 

pH問題集

 

問題集をやってみましょう

①pH11の洗剤を水で100倍に薄めたら?

②pH11の洗剤を水で50倍に薄めたら?

③pH8の洗剤を水で100倍に薄めたら?

④pH12.1の洗剤を水で40倍に薄めたら?

 

正解は

① は100倍ですので、2単位(10×10)変わるので9になります。

② は分数で考えますね。そこで説明した通り、最初の10で一単位、残りを0.5引くと9.5になります。約9.5か9.5程度が正解です。

③ は7のままです。中性の水でいくら薄めても、酸にはなりません。

④ は最初の10で一単位変わって。11.1になりますね。残り0.4を引きますので10.7

 答えは約10.7か10.7程度  になります。