メンテナンスの誕生
世界に広まっているプロが行う清掃である「メンテナンス」は時系列的に、経験則的に出来てきたのでしょうか?そうではありません。「メンテナンス」は今から40年近く前に突如として米国で生まれた世界観なのです。当時の米国での清掃会社の大手が、業界の競争に勝とうとして、大学院の経営学修士(MBA)を雇い始めたのです。高給で雇われた彼らは早々にこの業界の業務改革に着手します。それまでの見よう見まねや創意工夫で行われていた清掃方法に科学的な手法を持ち込んだのです。論理性・合理性を重視し、自分たちの始めた運動を従来の清掃(Cleaning)と質的に異なるものだとしてメンテナンス(Maintenance)と名付けました。
競争に勝つためにはコストを下げ、品質を上げる事が王道になりますが、コストについてはこの業界の支出の90%近くが人件費やその絡みにある事を喝破し、作業効率化の徹底を図りました。即ち、時間短縮に集中し、用具や資器材の近代化・最適化に努めたのです。
メンテナンスには様々な種類があります。床をとっても、ワックスやカーペット、石材、木床のメンテナンスがありますし、壁、ガラス、トイレ、浴室のメンテナンス等がある訳です。そして各メンテナンスはそれぞれ方法が異なります。しかし、考える方法と順序は皆同じなのです。
1.素材を知る
2.汚れの種類とターゲティング(狙いを絞る)
3.正しいメンテナンス方法を知り、実践する
になります。
メンテナンスで先ずすべきはその素材の特性を掴むことです。ワックスであれば、剥離可能な金属架橋をした水溶性のアクリル樹脂である事がその特性になります。ワックスの被膜形成に必要な事項を知る事で、空気を直接当てる事が完全な被膜形成を阻害する事を知る事が出来るでしょう。またこのタイプの樹脂がアルカリに非常に弱い(その為に強アルカリで剥離出来るのです)事から、洗剤使用時のアルカリ分除去が如何に重要かが理解できます。
以下、カーペットやトイレなども同様で、この「素材を知る」分野が最初のキーになります。
次には除去すべき汚れを絞り込みます。付いた汚れをまるでモグラ叩きの様に扱ってしまうと焦点がボケて効率が悪くなってしまいます。メンテナンスではそれぞれ絞り込むべき汚れがあり、そこを抑える事で効率が大きく上がるツボの様なものがあるのです。カーペットでは土砂ですし、トイレで言えば尿石と水垢です。
「最後が正しいメンテナンス方法を知り、実践する」です。実は世界のメンテナンスは情報が非常にスムーズに流通しており、大変フェア(公平)な世界になっています。これは先人達が「メンテナンスは人がやる仕事」という事で、技術については情報をオープンにし、皆で技術を高める事を目指したからです。従って、その気があれば簡単に技術情報が入ります。素材を知り、汚れを絞り込んだら、正しい情報を仕入れて実践すればよいのです。
この世界観が素晴らしかったので、世界に広まったのです。
そして、残念な事に我が日本には来ていないのです。;