臨界ミセル濃度
前回pHについて述べました。今日は臨界ミセル濃度について述べていきましょう。
洗剤は水で薄める事により、pH値が変わる事を前回は述べましたが、例を挙げたブラックヒールマーク(pH10程度で落ちます)を落とす場合、pH12の洗剤を100倍希釈、pH11の洗剤を10倍希釈、RTU(原液使用)pH10の洗剤はどれも同じかと言う当然の疑問が起こります。どう考えたらよいのでしょう。
さて、こうした仕事をしていると時々新入社員の洗剤教育に呼び出される事があるのですが、そうした際にフレッシュマン(或はウーマン)から「先生(こんな呼び方をされるとドキドキしてしまいますが)! 洗剤を上手く使うコツはなんですか?」などと言う質問を受けます。こんな時に私がいつも答えるのが「RTU(Ready to Use=原液使用)の洗剤から使い始める事です。」というものです。
私達が使うプロ用の洗剤の多くが濃縮タイプで希釈して使用するのですが、殆どの洗剤には臨界ミセル濃度と言うものがあり、薄いとあまり効き目がないが、或る一点を超すと効果が殆ど変らないのです。
元々売る側としては全ての洗剤をRTUで売りたいのですが、そうするとコストが掛かり過ぎてしまいます。輸送・ストック・・・・等です。洗剤は大部分が水ですので、売る方もプロなら使う方もプロだと言う信頼関係を元に、また水はどこへ行っても同じだと言う理屈から濃縮タイプを販売しています。そして洗剤を売る為には特徴が無ければ売れませんから、希釈のベストポイントの所に様々な特徴付けをしています。ここを間違ってしまうと(希釈が正しくないと)洗剤の効果が十分に上がりません。その為RTUならその洗剤の効果が十分上がるはずですので、ここから始めた方が洗剤と仲良くなれるのです。
例を上げましょう。
弊社の万能洗剤マルチサーフィスクリーナー(pH11)は1:50稀釈が最も正しい希釈濃度になります。この希釈で使用すると、樹脂ワックスの白ボケを起こさないのです。樹脂ワックスは金属架橋をしており、この架橋がアルカリに弱いのです。従って高アルカリで剥離(完全に取り去る事)が出来る為、床用ワックスとして最適なのですが、アルカリ性万能洗剤では表面が少し溶ける為、白ボケを起こします。この洗剤はこの白ボケを起こさないのです。床が汚れた際に、普通のアルカリ性万能洗剤を使用すると、汚れは取れても白ボケしてしまう為、そこをバフを掛けたり、ワックスを再塗布するなどの必要が出来てくるのですが、この洗剤を使用すれば、そうした心配がなくなります。
同じく弊社のもう一つの万能洗剤パスメーカー(pH12.1)は1:40稀釈が最も正しい希釈濃度で、ワックスのディープクリーニングを可能にします。剥離には早いし(剥離はお金が凄く掛ります)、通常の洗浄・ワックス再塗布では綺麗にならない場合(こうしたケースが結構あるのです)に最適です。
どちらも正しい希釈濃度で使用してこそこうした特徴を享受する事が可能なのです。勿論弊社の洗剤もパスメーカーなどは1:10~1:64稀釈などと書いてあります。これは弊社だけが希釈率に融通が利かないと不利になってしまうからと言う理由にほかなりません。洗剤を使用する場合(最近の環境対応ハイブリッド洗剤はチョット違いますが)その洗剤の臨界ミセル濃度を確かめる事は非常に重要なのです。
上記の質問ですが、ケースにもよりますがワックスを傷めないようにしようとした場合はマルチサーフィスクリーナーの1:40が有力という事になるでしょう(但し、今は上記ハイブリッドクリーナーをチョイスするという事も可能になりましたが、ここでは複雑になるので止めておきます)。
明日から福岡、明後日広島で1日講習を連続で行います。上手くいくことと、声が持つ事(時々かれてしまうので)を祈っています。両講習会とも満席ですので気合が入ります。