pH2バイオボウルは危険か? | お掃除とメンテナンスのプロ 矢部要のブログ

お掃除とメンテナンスのプロ 矢部要のブログ

「仕事でお掃除をする方の作業を楽にする事」が使命(ミッション)だと考えています。

 一般の『お掃除』から世界のプロが実践する『メンテナンス』の紹介をしています。

pH2バイオボウルは危険か?

暫くブログを書けませんでした。先週はほぼ一週間九州で、今週も昨日まで様々な事で時間を取られていましたので。
さて、九州のある場所で責任者の方からトイレ用バイオ洗剤「バイオボウル」のpH値を効かれ、pH1.5~2.5ですので、概ねpH2であると答えたのですが、
「かなり低いですね!強酸ではありませんか?社員に使わせて大丈夫でしょうか?」と聞かれたのです。

pH表
pH値は御存じの通り0~14までの数値で表され、7が中性で7から数が増えていくとアルカリが強くなり、数が減っていくと酸が強くなります。洗剤に対するpH値の考え方は日本とアメリカ(実質的には世界と考えても良い)では異なります。

日本   中性 6~8  強アルカリ 11~14  強酸 0~3
アメリカ 中性 7~8  強アルカリ 11~14  強酸 0~2

なのです。日本では7を中心に左右のバランスを取ると言う考え方ですが、米国では実質を取っています。中性洗剤についてですが、殆どの汚れがアルカリ側で落ちるため、中性洗剤の殆どは7~8になっています。中性からほんの少しアルカリ側には傾いているものの、中性に近いという事で中性洗剤(Neutral Cleaner)と言うのです。弊社のトイレ用洗剤で非常によく売れているNABC(ナバック)はpH値が6.5と逆向きになっています。スパルタンではNon Acid(ノンアシッド)と言っています。「酸ではない」と言う意味です。(平たく言えば「酸と言うほど強くはない!」と言うような意味)
さて、強酸の方ですが、レモンの汁はpH値2程度になります。これを強の字を付ける必要があるだろうかと言う問題になります。強を付けるという事は十分な注意が必要と言う事ですので、pH3に関しては強酸としないと言うのが米国(実際は世界)の考え方になります。
日本の或る環境対応の建物の清掃基準がpH5~pH9に限ると又聞きして、ビックリした事がありました。使用頻度の激しいオフィスビルのトイレをどうやって清掃するのでしょうか?このpH値でトイレ清掃をしようとすれば、
物理的力+化学的力
化学的力の効きが非常に弱いので便器内に手を入れて清掃せざるを得ないのです。
いつも強調している事ですが、便器に手を入れて清掃する事は誠に好ましくない方法です。お客様に対する衛生性も問題を起こす可能性があるでしょう。10人の内1人がウッカリしても好ましくない微生物の拡散が起こります。
また、作業者の安全性からも非常に宜しくありません。何度も書いていますが、血液・体液でうつる病気「Bloodborne Pathogens(ブラッド・ボーン・パソゲンズ)」に対する注意が必要です。便器内に手を入れて擦るという事は手袋が破れていたり、顔が近づく事から感染の危険性があるのです。
そもそも建物に使う洗剤を単純にpH値だけで判断しようと言うのは余りにもナイーブです(私の又聞きが聞き違いであった事を祈るだけです)。
米国ではこうした際にはカリフォルニア基準を参考にします。かつて環境問題でひどい目に合ったカリフォルニア州は環境基準を厳しくしています。そこでその基準を拝借する訳です。
この時はこうした説明をし、危険ではない事、pH 値だけで判断する事は合理的でない事などをお話ししました。相手の方は納得したような、納得できないような顔をしていたのですが、ご理解を頂く事を切に願うだけでした。上手く説明出来なかったので、どう説明すれば良かったのかあれこれ考えている内に、こうした際に最も相応しい説明を思いつきました。しかし、残念ながら後の祭りであるのは事実です。
さて、不思議なもので昨日車両清掃のご相談を受け、都内の或る場所で現場を見せて頂くと同時に様々な議論をしたのですが、この中で同じ発言があったのです。バイオボウルのpHを効かれ、九州と同様にpH値が概ね2である事を発言すると
「強いですね。危険性はどうでしょうか?」
と言う発言。
そこでとっておきの答えでお返ししました。
「洗剤の危険度をpH値のみで判断する事は合理的ではありません。バイオボウルはクエン酸ベースですので、レモンの汁の安全性を議論するのと同じことです。そして草津温泉は(源泉によってですが)pH1.9です。レモンの汁やそれより強い草津温泉を危険と言えますでしょうか?」
相手がニッコリ笑ってくれたのは言うまでもありません。(^∇^)(^∇^)(^∇^)