このお話は、私の5歳上の兄が
当時小学校1年生だった頃のエピソードです。
私と兄は両親が働いていた東京で生まれ
しばらく親子4人で暮らしていました。
しかし兄が7歳の頃祖父が倒れてしまい
長男だった父親が西の方にある実家に帰る形で
父の地元に暮らすことになりました。
当時私は2歳。母は福島生まれで
友達は0人。そんな中
兄がいじめられていることが発覚しました。
パンダ兄 7歳 小学1年生
健吾くん 7歳 パンダ兄と同級生
健吾くんの兄 9歳 小学3年生
健吾兄弟の母 高校教師
父親(夫)は何も言わない人だそうだ。
伊藤先生 パンダ兄の担任の先生
拓郎先生:健吾兄の担任の先生
佐伯さん:噂好きの40代ご近所さん
成人しているお子さんもいる。
本田さん:パンダ兄と同じクラスに、みゆきちゃん
というお嬢さんがいる。
山本さん:見た目は少しぶっきらぼうそうな印象だが
話すと優しい。5歳・7歳・9歳の男の子の母
小学校の PTA会長をしている。
佐伯さんからの電話に
少し心が乱されたパンダ母。
まだ転校してきたばかりなのに
この狭い地域の中で
今や渦中の親子になっているのか。
パンダ母は兄の着替えを用意しながら
ぼんやり考え事をする。
その頃の私といえば、
祖母と祖父の間で
いつもコロコロ転がっており
母はこの時のことを振り返るたびに
「あの時
おじいちゃんとおばあちゃんが
パンダと毎日遊んでくれていたおかげで
お兄ちゃんのことに専念できた。
それにパンダもおじいちゃんと
おばあちゃんのことが大好きだったから
ママがいないと嫌だとか
寂しがったり追い縋ったり
ちっともしない子だった」
と言っているが、本当にそうで
私は生粋のおじいちゃん
おばあちゃん子だった。
しかしこの時、
パンダ父
「お母さん・・・」
お風呂から上がったパンダ父が
深刻な顔で、パンダ母に近づいた。
パンダ母
「・・どうしたの?」
いつもとは違う様子のパンダ父。
パンダ父
「・・・お兄ちゃんと、
お風呂で話した。
・・・・・・」
グッと堪えたような表情をするパンダ父。
パンダ母
「・・・どうしたの?お兄ちゃんは?」
パンダ父
「今、おじいちゃんの部屋に行った。
着替えはお風呂に入る前に
持っていったから、
もうパジャマに着替えてる。」
パンダ母
「・・・・何か、話したの?」
パンダ父
「・・・・・いや、、
今日のことにはもちろん
触れたわけじゃないんだけど
最近どうだ?って聞いたんだ。
何か自分から、話してくれたら
いいなって思ったから・・・」
パンダ母
「・・・、、それで、、?」
パンダ父
「そしたらお兄ちゃんが少し黙って、
突然、、
(僕って、この世界から
いなくなった方がいいのかな)
って言ったんだ。」
パンダ母は最後まで言葉を聞かずに
おじいちゃんの部屋まで
駆け出していた。
息が、出来なかった。
気づかなかった。
パンダ兄の心は、
本当はもうとっくに、
壊れていたのに。