このお話は、私の5歳上の兄が
当時小学校1年生だった頃のエピソードです。
私と兄は両親が働いていた東京で生まれ
しばらく親子4人で暮らしていました。
しかし兄が7歳の頃祖父が倒れてしまい
長男だった父親が西の方にある実家に帰る形で
父の地元に暮らすことになりました。
当時私は2歳。母は福島生まれで
友達は0人。そんな中
兄がいじめられていることが発覚しました。
パンダ兄 7歳 小学1年生
健吾くん 7歳 パンダ兄と同級生
健吾くんの兄 10歳 小学3年生
健吾兄弟の母 高校教師
伊藤先生 パンダ兄の担任の先生
佐伯さん:噂好きの40代ご近所さん
成人しているお子さんもいる。
本田さん:パンダ兄と同じクラスに、みゆきちゃん
というお嬢さんがいる。
山本さん:見た目は少しぶっきらぼうそうな印象だが
話すと優しい。5歳・7歳・9歳の男の子の母
明日の土曜日の午後
校長を含めて学校で
健吾兄の母とまた会うことになった。
本当に、気が重い。
今日、パンダ兄は学校で
ちゃんと過ごせているだろうか。
学校に様子を見にいきたいが
そんなことしていいのだろうか。
2歳のパンダを背中に背負い
1日気が気じゃない思いで過ごしていた時
また、家の黒電話が鳴る。
パンダ母
「はい、もしもし・・」
電話に出るまでは
相手が誰なのかわからない時代。
山本さん
「あっ、パンダ母さん?明日
学校に集まることになったんですね」
パンダ母
「えっ、なんで知ってるんですか・・」
山本さん
「・・・実は私ね
PTA会長なんですよ。」
パンダ母
「あっ、そうなんですか?
すいません、何も知らずに・・」
山本さん
「いえいえ、そんなこと別に
あえて言うことじゃないんですけど
今回は私ね、ちょっとおせっかいですけど
PTA会長として参加させてくださいって
学校に伝えたんです。
学校側の進行がどうなるのか
すごく心配だったので・・
・・・でも今考えてみたら
そんなこと勝手に言って
パンダ母さんが大丈夫だったかなって
気になったので電話したんです。」
パンダ母は、素直にありがたかった。
パンダ母
「正直、すごく心強いですし
ホッとしてます。
今、一番心配なのは
今日のパンダ兄の様子ですけど
明日のことについては
学校のことまだ何もわからないですし
先生方がみんな
味方でいてくださるとも限らないですし
どんなふうになるのかなって
気が重かったので・・・」
山本さん
「あぁよかった。
じゃあ明日、よろしくお願いしますね」
電話を切って、ふーとため息をつく。
時計を見るともうすぐ下校の時間。
パンダ母は無意識に、
小さな私を背中におぶったまま
外に出ていた。
そして、2分・5分と
パンダ兄の通学路を歩くと
下校途中の子供達が何人かすれ違う。
パンダ兄はどこだと、不安が襲う。
今日、行かせなければ良かっただろうか。
あの子が戦っている時に
自分は家の中で、何をしていただろうか。
背中できゃっきゃと笑う
私の声を聞きながら
込み上げる不安が抑えきれないまま
早足で歩いていると
前から1人
猫じゃらしを揺らしながら
歩いてくるパンダ兄が見えた。
パンダ兄
「あっ、お母さん?
見て!猫じゃらしだよ!」
駆け寄ってきたパンダ兄の身体を
パンダ母はまた思わず、抱きしめていた。
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